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意見書
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日韓産業協力の新たな発展に向けて
参考資料
業種毎の対韓ビジネスの現状と今後の協力可能性
電機・電子・通信
現 状
電機機械全体では51.6億ドルの対韓黒字(輸出99.4億ドル、輸入47.8億ドル)。
韓国企業とは商品により重層的な競争と協力の関係。
例えば半導体や液晶等の電子部品では激しく競争するものと補完的関係にあるものとが共存。
白物家電は日韓両国とも国産製品が中心だが、部品・モジュールは海外製品の調達が増加。
AV機器などについては、1999年の輸入多角化制度の廃止を契機に韓国メーカーが生産していないAV情報通信の高級品、先端技術商品の対韓輸出が開始。輸入、販売を目的とした現地法人を設立する企業もあり、これら商品の輸出が可能になると予測。
今後の協力可能性
両国の技術レベルは世界のトップクラス。韓国は、先端技術開発力で日本に肩を並べ、基本技術では大差ないことから、韓国企業は重要なパートナーで、今後、多様な協力が可能。
電機、電子部品、情報通信については、資本参加、JV設立、特定技術の開発のほか、製造では、一部工程の製造委託、相互商品供給、海外生産拠点間の連携など提携が可能。なお、韓国が白物家電などの分野で本格的に日本市場に進出する際には、サービスの提携が可能。
計測機器については、韓国側は小企業しかないため、産業内分業の可能性は限定的。生産拠点としての韓国の優位性は、高付加価値品に限定。
インターネットを活用した貿易金融EDIやe-マーケットプレースなどIT分野での協力拡大も期待。
なお、各分野の汎用品の生産では、韓国が従来持っていた比較優位性が中国の台頭により脅かされるものと予測。
精密機器
現 状
精密機械全体では14.2億ドルの対韓黒字(輸出19.7億ドル、輸入5.5億ドル)。
生産ライン向け制御装置(リレー、タイマー、スイッチ、コントローラ等)、社会システム機器(銀行ATM、乗車券売機等)、民生機器への組み込み機器(プリント基盤用小型リレー、キーボードスイッチ、フォトマイクロセンサー等)、健康機器(血圧計等)のほか半導体製造装置等の製品とキーパーツや映像関連商品(カメラ、顕微鏡、測定器等)の製品と部品を韓国に輸出、販売。韓国からは、複写機、時計等を輸入。
生産ライン向け制御装置については、韓国企業との間で厳しいコスト競争にあるが、日本側には品質面での優位性あり。
民生機器への組み込み機器については、韓国企業との間で激しいコスト競争。韓国に輸出される日本製品の多くが韓国内で生産される電気・電子機器に組み込まれ韓国から輸出。
自動車搭載用機器(リレー、キーレスエントリ、パワーウィンドウユニット等)は、日本の100%子会社が生産する事例あり。同社の現地調達率は50%程度。残りの50%は高付加価値品で日本から輸入。
今後の協力可能性
生産ライン向けコントローラなどは韓国市場では、高付加価値品の分野で日本側として注力。
民生機器への組み込み機器は、韓国企業とのコスト競争への対応から関税の問題よりは生産コストの引き下げが喫緊の課題。中国で生産し韓国に輸出する方法も検討。
韓国企業との協力方策としては、制御装置については、第三国での生産、販売協力が可能。中国市場での戦略的提携のほか、中央アジア市場に先行している韓国企業と提携し、日本企業が市場開拓を行うなどの可能性。
生活関連の商品に搭載する精密機器やそれに関連するサービスの質では、日本企業が進んでいることから、電子商取引などIT分野を活用した事業に強い韓国企業との間で双方の強みを生かした協力が有望。
鉄鋼
現 状
鉄鋼全体では12.3億ドルの対韓黒字(輸出25億ドル、輸入12.7億ドル)。
日本からは、高付加価値製品を中心に輸出。両国企業が相互に素材供給を推進中。鋼材については、韓国にとって日本は最大の輸出先であり輸入先。
日本企業が韓国企業との間で、技術面での協力や原材料供給等を含む包括的な提携関係を結ぶほか、資本提携を行うなど両国企業間で戦略的提携が推進中。
日本企業は、POSCOとは競争しつつ、リローラーとは素材供給を通じた分業体制。日本企業が韓国の最終ユーザーに直接供給するケースは電磁鋼板や自動車用鋼板などの高付加価値品が大宗。
今後の協力可能性
原料の共同調達、製品の相互融通、輸出品の水平分業等が有望。
また、これまでの協力関係をベースに、戦略的提携契約を締結した両国企業が、提携推進委員会を設置し、基礎的技術開発、第三国での合弁、IT分野、購買などを対象に協力可能性を模索している事例あり。
業界ベースでも情報交換のための枠組みが形成。
非鉄
現 状
銅、ニッケル、アルミ、鉛、亜鉛など非鉄金属全体では、513億円の対韓黒字(輸出828億円、輸入315億円)。
非鉄金属の対韓輸出額全体の56%を占める銅と銅合金関連事業の日韓協力事例としては、日韓合弁での韓国での銅精錬事業あり。
今後の協力可能性
銅精錬事業における更なる提携(買鉱、資材調達、操業技術等)、素材分野でのJV、OEMおよび技術提携等の協力関係が有望。
窯業
現 状
非金属鉱物製品は2.3億ドルの対韓黒字(対韓輸出4.6億ドル、対韓輸入2.3億ドル)。
ガラスならびにガラス製品の対韓輸出が2.7億ドル。
象徴的な協力事例として、韓国に日韓合弁会社を設立し自動車用安全ガラスの製造、販売を行っているほか、ブラウン管用のガラスバルブを製造・販売。合弁会社に対する技術支援を行っているが、技術者派遣時の入国手続きが煩雑であるほか、国内での資金調達手段に難点がある等の問題に直面。日本国内での生産用には韓国から原材料を輸入。
セメントについては、韓国での内需激減に伴う韓国の供給力が過剰で、圧倒的な対韓輸入超過。
今後の協力可能性
日韓双方とも、他のアジア諸国の厳しい追い上げを受けていることから、日韓間で水平分業、最先端技術開発における提携が有望。
日本のセメント会社の国際戦略を考える時、日韓双方の有力企業同士の提携は国際的なプレゼンスの向上に貢献。韓国のセメント会社の生産能力は高いことから提携のメリット大。
韓国のセメント主要工場が日本海側に集中していることから、北朝鮮のインフラ整備が進めば、北朝鮮日本海側の需要には韓国企業が対応し、朝鮮半島西側は中国にある日系企業が対応するほか、釜山など韓国南部は九州にあるセメント工場が対応するといった分業体制も可能。
プラント・造船
現 状
これまで、製鉄プラント、製紙プラント、環境プラントなど、種々のプラントを輸出してきたが、近年その件数は減少傾向。
このほか、種々の機械・機器(例えば、発電設備、運搬機械、環境装置、油圧機器など)について、技術供与を実施。
造船は、日韓両国が建造する船種が類似しており、高付加価値船をはじめとして多くの分野で厳しい競合関係。
今後の協力可能性
第三国のプラントプロジェクトで、双方がそれぞれ得意とする分野を持ち寄る形での協力が可能。
造船については、現在、日本の造船業界は再編中。当面、産業協力の可能性低し。
総合化学
現 状
石化製品、無機化学品、塗料、農薬をはじめとして全体では、26億ドルの対韓黒字。(輸出35.4億ドル、輸入9.4億ドル)。
日本からは基礎化学品、精密化学品を輸出、韓国からは汎用樹脂などを輸入。
日韓協力事例として、日韓合弁会社を設立し、電子工業用薬品、機能性フィルムなど電子部品用特殊品等を製造・販売するケースあり。
今後の協力可能性
韓国の電子、半導体分野の成長に伴う設備拡大の可能性。精密化学品関連の事業の拡大も可能。
韓国企業との間では、樹脂加工分野での製品、金型に関する分業、化学製品の有害性データの取得や環境対策に関する協力、医療品の研究・臨床開発基地としての提携、欧米企業への対応を念頭にした中国市場での協力、相互委託生産、技術提携による国際競争力強化などの協力が可能。
繊維
現 状
繊維品の対韓輸出は、織物(1.8億ドル)と糸(1.2億ドル)を中心に5.4億ドル、輸入は衣類(9.5億ドル)を中心に13.6億ドルで、全体として8.1億ドルの対韓赤字。
ASEANや中国の生産力・技術力の向上に伴い、定番商品では日韓ともに競争力を喪失。両国とも高付加価値戦略をとっており、欧米市場や中国市場などで競合。
「日韓繊産連年次合同会議」を定期的に開催し、情報交換の枠組みを構築。
今後の協力可能性
日韓FTA締結も視野に入れ、双方の高度な技術を活かして、他地域への輸出拡大を共通の課題として検討。
韓国は、アパレルバレー(大邱)の高度化・高付加価値化を推進しており、日韓の技術協力(ファッション素材、デザイン協力等)も可能。
情報交換・共有化を今まで以上に深め、対中戦略についても更なる共同歩調が取れる体制の構築を期待。
運輸
現 状
韓国での運輸業の会社設立については、特段の制限はないが、外国人投資促進法等による諸規制や労使関係への不安などから直接進出せず。
今後の協力可能性
韓国の港湾の中には世界に通用するものも。韓国の労賃が安いことからFTAが締結され通関手続きが共通化、簡素化されれば物流コスト低減のための運輸分野での日韓相互乗り入れも可能。
流通
現 状
日本の小売業による海外出店は減少傾向にあり、韓国から撤退する事例も多い。他方で、総合商社が小売業に進出する事例も。
今後の協力可能性
韓国流通業界では、大手チェーンストア、コンビニエンスストアのほか大型ディスカウントストアといった業態も急増していることから、日本との技術提携も可能。
航空
現 状
日韓航空協定の枠組みが有効に機能し、航空市場の規模はアジアで最大にまで成長。更なる需要拡大を期待。
かねてより、成田空港の発着枠制限など首都圏の空港容量の不足は、二国間航空輸送のボトルネックとなっていたが、2002年4月の成田暫定滑走路の完成ならびに韓国仁川空港の開港により、航空各社は韓国路線の大幅な増強を決定。
今後の協力可能性
両国間の短距離旅客の利便性を更に向上させるため、現在国内線に運用が限定されている羽田空港と金甫空港の間に航空便が運航されれば、韓国側との関係増進が期待。
総合商社
現 状
1993年に現地法人設立が認可されるなど、ビジネス環境は大幅に改善。
今後の協力可能性
IT分野(コンテンツ、ビジネスモデル共同研究)等の先端分野やサービス分野における水平的な協力関係構築の可能性。物流コスト削減のための提携の可能性も。
自動車および自動車部品
現 状
輸送機械全体では、5億ドルの対韓黒字(輸出6.6億ドル、輸入1.6億ドル)。
うち自動車分野については、韓国の輸入先多角化制度のため完成車の対韓輸出は緒についたばかりで、4千万ドル程度。
他方、エンジン、電装品等の自動車部品は対韓輸出5.6億ドル、対韓輸入1.1億ドルとなっているほか技術提携も進展。
今後の協力可能性
輸入先多角化制度の廃止を契機に新たに現地法人を設立した企業もあり、徐々に完成車の対韓輸出も増える可能性あり。
今後、韓国部品産業が日本メーカーの品質基準を習熟すれば、韓国からの部品調達が拡大する可能性あり。
金融
現 状
銀行については、外資系として単一国としては融資残高首位。但し近年減少傾向。
証券については、外国人投資に占める日本のシェアはわずか1%。海外戦略の見直しにより撤退も相次いでおり、かつて10社だったものが今や3社。
保険については、損保、生保併せて韓国では外資を含め40社が営業。外資系損保4社、生保4社(日系は、損保2社、生保1社が駐在員事務所の形態で進出)。
今後の協力可能性
既に銀行業務に関する規制緩和は大幅に進んだが、金融市場におけるインフラの整備がより一層進展することにより、邦銀の市場参入が積極化し、韓国金融市場の拡大に寄与するとともに、各産業における資金調達の多様化が期待。
現在の市場環境の下では、協力の可能性低し。
韓国保険市場は、段階的な自由化と外資に対する市場開放が進んでおり、中長期的に発展が期待できる。日本の生保が韓国の投資信託会社と提携した事例もあり、日韓双方のベンチャー企業への出資などのビジネスチャンスの発掘が進む可能性あり。
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