[経団連] [意見書]

第一回産学官連携サミット共同宣言


 今日、人類は世界に頻発する秩序の乱れと地球環境の劣化に直面している。各国が連帯してその解決の方法を模索し、活動を始めるべき時期が到来した。一方、我が国においては、経済の再生を目指し、国際的な競争力を高め、産業の空洞化に打ち勝っていく必要に迫られている。これらの状況に対応するために、科学技術とそれに基礎をおく新しい産業が中心的役割を果たすべく期待されている。

 高度経済成長の過程で、大きな潜在力を蓄積することとなった我が国の責務は、地球的課題を解決するために、個人の自由な発想と創造力を育み、大胆にチャレンジできる柔軟な社会を築きつつ、その潜在力を十全に活用することである。それは、21世紀の我が国の立国理念である「科学技術創造立国」への道を更に推し進め、基礎研究の充実と研究成果の活用を通じてわが国の産業競争力を強化することにより可能となる。

 潜在力は大学等の研究能力と産業の生産能力の内にある。いま、その潜在力を現実のものとして発揮させるために、長い間その重要性が言及されながら、制度の硬直性と当事者の積極性の不足によって十分には進まなかった我が国における産学官連携を飛躍的に進展させることが急務である。

 本日のサミット参加者は、このような共通の認識に立ち、今後のイニシアティブを以下のように設定し、全力で取り組むものとする。

1.産のイニシアティブ

研究開発の自前主義から脱却し、大学等の知的ポテンシャルの積極的活用による新技術・サービス創出を促進する。
企業トップが大学等との連携を経営戦略上明確に位置付け、研究開発面の連携、人材交流の促進を図る。

2.学のイニシアティブ

大学等の教育研究の進展のためにも企業との連携を強化することは極めて重要であるとの基本姿勢を確立し、組織としての対応を強化する。
国立大学の非公務員型法人に移行することを目指すなど、改革を進めることにより、産学官連携に関して国公私を通じた大学の自主的、自律的かつ柔軟な運営を展開する。

3.官のイニシアティブ

産学双方の使命を尊重し活発な相互連携を促進するため制度改革を積極的に進めるとともに、大学発ベンチャーの育成や地域の科学技術振興など各種施策を強力に推進する。

4.産学官連携サミットの定期的開催

産学官の相互理解と信頼関係の樹立を図るため、引き続き「産学官連携サミット」を開催する。


右宣言する。
平成13年11月19日

科学技術政策担当大臣 尾身 幸次
経済団体連合会会長今井  敬
日本学術会議会長吉川 弘之

(注:原文は横書き)

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