産業問題委員会では、わが国企業の競争力強化の観点から、新たな雇用のあり方を検討するため、標記アンケートを2001年12月から2002年1月にかけて実施した。アンケートの対象は、経団連法人会員約1,100社で、2月1日時点で307社(対象従業員数約180万人,平均従業員数5,871人)から回答があった(回収率27.9%)。
14%の企業が既に実施済と回答。また、52%の企業で2000〜2002年度において削減中もしくは削減を計画している。人員削減を実施済、実施中、計画中、検討中の企業の内、削減規模を10%以上と回答する企業が40%を占めていることから、今後も雇用調整、人員整理が進むことが窺われる。一方、人員削減について検討もしないと回答した企業が約3割あった。
66%の企業において人件費対応策をとっている。具体的な対応策としては、賞与、賃金の削減や成果に応じた報酬制度の導入を行うとした回答が多く、総じて各企業が給与体系を大きく変化させていることが窺われる。
派遣労働者の活用状況
約9割の企業で派遣労働者を活用している。派遣労働者は、事務機器操作、ファイリングや受付などの部門で活用されている。また、派遣労働者活用の理由として、約8割の企業が、人員調整が比較的容易であることを挙げている。
有期雇用契約制度の活用状況
73%の企業で同制度を活用している。契約社員は、企業内において営業、総務、事務機器操作、研究開発などの部門で能力を発揮している。
裁量労働制の導入状況
裁量労働制を導入していると回答した企業は全体の20%であった。導入している企業の内80%は専門業務型裁量労働制である。
ワークシェアリングに関して
雇用保険制度について
2001年度の雇用保険料率改定により、非自発的失業者に対する失業給付が手厚くされたことに対し、評価できると回答した企業が過半数を超えたが、さらなる料率の引き上げには過半数の企業で反対の意向がみられた。
今後急がれる雇用保険制度改革としては、約半数の企業が求職者を対象とする職業訓練の拡充を求めていることが判明した。
その他緊急を要する雇用関連の規制改革
労働者派遣法における派遣対象業務規制と期間制限の見直しが必要と回答する企業が最も多く、次いで有期雇用契約に係る規制改革、裁量労働制に係る規制緩和、さらには解雇法制の整備の順となった。
アンケートの結果、企業がバブル期に膨らんだ人員や生産性の向上を超えて上昇した賃金を調整すべく、急ピッチで人員削減や人件費に係わる対策を講じており、全体の3分の2の企業が、人員削減計画と人件費対応策両方に着手していることが明らかになった。
それ以上に加速しているのは、雇用形態の多様化である。派遣労働者の活用や有期雇用契約による採用などに加え、法制度上使いにくいとされている裁量労働制を採り入れている企業も少なからず見られた。
したがって今後の施策としては、まずこれら制度を使いやすくするための規制改革が求められる。これらは、労働者側にとっても多様な働き方を許容するものであり、労使双方の意志により、柔軟な労働条件の設定・変更が可能となるようにしていくことが重要となろう。
ワークシェアリングについては、業務分担の難しさや労働生産性の低下等を理由として、大半の企業が導入に否定的であり、導入済みあるいは導入予定の企業でも約半分がいわゆる雇用維持型であり、新たな雇用創出には結びつかない取り組みとなっている。
因みに人員削減計画・人件費対応策とワークシェアリングの関係では、半分以上の企業で、人員削減計画、人件費対応策に着手しつつもワークシェアリングを導入しておらず、導入予定もないとの回答を得た。
また、人員削減計画、人件費対応策に着手しつつワークシェアリングを導入済みまたは導入予定としている企業の平均従業員数が4,400人余となっており、アンケート回答企業の平均従業員数5,871人より少ない結果となった。
なお本年度より料率引き上げと給付の見直しが行われた雇用保険制度について企業は、さらなる保険料率の引き上げを行い給付を拡充することよりも、現行料率を維持しつつ求職者の再就職につながる職業訓練を拡充することを求めている。
雇用の現状と制度改革に関する緊急アンケート集計結果−全産業合計−
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