[経団連] [意見書]

台湾における産業空洞化実態調査報告書

2002年3月28日
経団連・産業問題委員会

調査の趣旨

 産業問題委員会では2002年4月、国際的な分業体制の変化等を踏まえ、わが国における新たな成長基盤の構築に向けた提言をとりまとめる予定である。

 わが国企業は現在、労働力をはじめとする生産要素のコストや土地、税金などの立地関連コストの安さを背景に、近隣アジア諸国に生産拠点を移転させている。とりわけ中国への投資は、その市場の成長可能性もあり、1999年末までの累計で2兆3千億円にのぼるなど急拡大している。対中投資の拡大は企業の最適生産の帰結として受け止めることが自然であるが、国内における生産、雇用の減少、逆輸入の増加による国内市場の競争激化などを通じて、わが国の経済産業に多様な影響を及ぼす。中国の台頭により国際分業が構造的に大きく変化しつつあり、今後もわが国経済産業への影響は、より広がりと深みのあるものになっていくことが予想される。

 今般、調査を行った台湾においては、90年代を通じて、食品や靴、繊維などのいわゆる伝統産業から家電や情報通信関連産業などの付加価値の高い産業に至るまで、広範な製造業企業がその生産拠点を中国大陸に移転させている。

 台湾経済は2001年、戦後初めてのマイナス成長を記録し、失業率も4%の半ばと、98年に比べると2%ポイント近く上昇した。こうした実体経済の悪化が産業の空洞化によるものなのか、産業の高度化に向けて政府や企業がどのように対応を行っているかなどについて、現地の官民関係者にインタビューを行い、その実態と課題を整理した。

 本報告書は台湾での現地調査にもとづくものであり、関係者の考えや台湾の政策を引用している部分がある。「台湾」のステータスに対する見解が中国の考えと異なるところがあることをご了承いただきたい。

メンバー

久野 仁史日本興業銀行産業調査部副部長(調査団団長)
増井 暁夫旭硝子産業政策企画室主幹技師
大和 弘明日本政策投資銀行産業・技術部調査役
鶴木 大輔日本興業銀行産業調査部
井上 洋経団連産業本部産業基盤グループ長兼国土グループ副長
佐々木 省吾経団連産業本部員

調査報告書目次>

第1章 台湾経済・産業の現況

  1. マクロ経済の状況

  2. 産業構造の変化

    1. 製造業、非製造業の台湾における位置付け
    2. 産業高度化の状況
    3. 台湾企業の特徴
    4. IT不況の実態と今後の見通し

  3. 両岸貿易、投資の状況

    1. 対大陸輸出入の構造と最近の動向
    2. 対大陸投資の現状とその背景

第2章 生産性向上に向けた行政の対応

  1. 経済発展諮詢委員会を中心とした検討状況と具体的な施策・計画

    1. 経緯
    2. 提言内容
    3. 国内産業の競争力強化策
    4. 提言の実施状況
    5. 本会議に対する評価

  2. 産業活性化に向けた施策

    1. 研究開発拠点の整備
    2. 研究開発促進施策、ハイテク産業振興施策

  3. 大学教育・研究の充実、産学官連携の推進

  4. 雇用政策上の課題と対応

    1. 雇用情勢
    2. 経済発展諮詢委員会「就業組」での検討内容
    3. 外国人労働者の受け入れに関する考え方

第3章 生産性向上に向けた民間企業の対応

  1. 台湾・中国における分業の状況(今回調査対象企業)

  2. 国際分業に関する台湾企業の考え方

  3. 企業の研究開発部門の動向(研究開発体制)

  4. 雇用関連の対応策

    1. 国内生産の減少に対応した取り組み
    2. 外国人労働者の活用

第4章 産業空洞化に対する政府・企業の取り組みとわが国への示唆

  1. 台湾における産業空洞化の背景

  2. 台湾企業の経営戦略

  3. 政府の産業競争力の強化に向けた施策

    1. 経済発展諮詢委員会
    2. 産業競争力強化に対する政策
    3. 雇用政策


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