わが国金融市場の国際的地位を高める上で、証券市場の活性化は焦眉の急である。また、企業への資金供給機能を果たしていくために、証券市場は、潜在的投資家を惹きつけるに足るインフラを早急に備えなければならない。ディスクロージャーへの不信がコンフィデンスクライシスを引き起こしている現在、市場監視体制を拡充し、投資家の信頼回復に努めることは、証券市場活性化の前提である。とりわけ、証券市場行政の強化と明確化を図る上で、監視機能の一元化は不可欠である。
そこで、まず証券取引等監視委員会の機能を米国証券取引委員会(SEC)レベルに強化し、「日本版証券取引委員会」として独立させることを求める。同時に、株式会社化が進むわが国証券取引所等の自主規制機関の規律強化と自主規制機能の充実も課題である。
また、投資家の証券市場への誘導・回帰を促すには、先進諸国並みの証券決済システムへの改善と効率化を図ることも重要である。必要な法整備とシステム構築を早急に進めなければならない。併せて、証券税制の整備や投資家の証券投資への関心を高めるための関係者の努力が求められる。
以上の認識から、証券市場の活性化のために、下記の事項の実現を求める。
市場監視体制を強化し、その独立性を高めるため、証券市場行政と業者行政を分離し、市場制度に関する企画、会計基準の承認、モニタリング機能等を、証券取引等監視委員会を改組、独立した「日本版証券取引委員会」の下に集中する。
人員の大幅な増強とともに、専門的な知識・経験を有するプロパー職員の育成、専門性のある民間人の登用に取り組む。証券取引委員会の委員長には民間人を登用する。
証券市場における自己責任原則の前提は、投資家に対する証券についての正しい知識の普及徹底である。証券取引委員会の企画担当部門においては、資産担保証券 (ABS)等の新たな金融商品が増加すると見られる中、投資家育成の観点からの広報に努めることが必要である。
また、公認会計士に加え、監査役(商法改正により導入予定の委員会等設置会社の場合は監査委員会の構成取締役)、格付機関、アナリストについても的確な理解と倫理観に基づく行動をとるよう、求めていく。
各地の証券取引所や日本証券業協会、投資信託協会、証券投資顧問業協会は、日本の資本市場を支える経済インフラであるルールを作るとの視点から、新商品についての取扱いの決定、規制の策定を行う。その際、市場運営や自主規制のあり方については、公正性、透明性を確保するよう努め、産業界他外部の意見を積極的に取り入れることが期待される。
公社債等の無券面化(不発行)のための法制を、改革工程表に則して今年の通常国会で実現する。株券の無券面化も引き続き、速やかに実施する。併せて、対応するインフラの整備、関連法制度の充実を早急に実現する。誤記載等の場合のセーフティー・ネットづくりも推進すべきである。
証券税制については、緊急経済対策として改正され、特に有価証券譲渡益課税については、申告分離課税への2003年1月からの一本化を前提に様々な優遇措置が講じられた。
企業金融の重心を直接金融に移す上で、
円滑な市場運営と投資家の誘導・回帰を促すため、何よりも業界の信頼回復努力が必要である。また、証券業界の商品開発(例えば、ミドルリスク商品の開発)、発注ミス防止策の徹底や証券外務員の資質向上が求められる。
さらに、発行企業のIR活動もタイムリーなフェア・ディスクロージャー体制を構築し、新聞・テレビといった手段に加え、インターネットなど多様なメディアの活用を通じてアナリストのみならず投資家に直接働きかけるような取組みを強化することが必要である。
自己株式の処分(売却)が解禁されたが、取得段階での規制のあり方を含め、自己株式に関わるセーフ・ハーバー・ルールを確立し、インサイダー規制や相場操縦規制についての取扱いを早急に明確化すべきである。
98年12月に閣議決定されたパブリック・コメント手続では、行政機関が、規制に係る政令等を策定する過程において、広く一般国民・事業者の意見・情報を考慮して意思決定を行うこととされている。金融庁でも意見提出手続を実施しているが、提出された意見に対する回答がなかったり、対応の理由が不明確だったりするものが散見される。提出された意見を極力詳細に紹介し、それに対しできる限り真摯に対応すべきである。