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魅力と活力あふれる豊かな日本を目指して

―2002年度総会決議―

2002年5月28日
(社)日本経済団体連合会

日本経済団体連合会は、経済、産業、社会労働分野等、企業活動に関わる多様な問題に取り組む総合経済団体として本日発足した。経済団体連合会と日本経営者団体連盟が過去に培った経験とネットワークの統合により、政策提言能力と実行力を一層高め、労働問題を含め経済界が直面する諸課題の、迅速かつ着実な解決を目指す。

われわれは、全ての個人や企業が意欲と能力を持って、厳しい倫理観のもとで自由に創造性を発揮できる、魅力と活力あふれる豊かな日本の創造に、全力をあげて取り組む。とりわけ、人間尊重の精神のもと、自己責任原則が貫徹される、自由・公正・透明な市場経済体制の確立に向け、経済界の意見を取りまとめ着実な実現を図る。そのため、地方の経営者協会と一体となった活動を展開するとともに、政治、行政、労働組合、市民を含む幅広い関係者との対話を進める。

わが国経済が当面する最大の課題は、長期にわたる停滞と将来に対する閉塞感の打破であり、官民が下記の改革を進め、真に民主導の経済社会システムを構築することが急務となっている。わが国に対する国際的な信頼を回復するためにも、改革の先送りは許されない。

1.経営改革を進める

企業は、国際競争力を強化すべく、「選択と集中」の経営を推進し、事業の再編、高収益部門への経営資源の効率的・重点的投入等を徹底する必要がある。また、金融機関の不良債権、企業の過剰債務の早期処理により、金融仲介機能の回復と産業の再生を図らなければならない。
労働分野では、安定した労使関係の継続、生産性や成果に応じた賃金決定、国際的視野を持った次世代のリーダーを含む企業内での人材育成や従業員の職業能力の向上、雇用形態の多様化への対応などが求められている。
同時に、企業は、社会の信頼を得られるよう、経営トップ自らが率先し、情報開示の充実、規律強化に向けた社内体制の整備など企業行動憲章を徹底し、社内の倫理観の涵養に努めることが極めて重要である。
政府は、グローバル化が急速に進行しているなかで、企業の国際競争力の一層の強化、柔軟かつ機動的な意思決定や組織再編のため、高コスト構造の是正、商法、税制の国際整合化、金融システムの安定化と資本市場の更なる整備を図る必要がある。また、円滑な労働移動の確保に向けた、規制改革、職業能力開発の推進、雇用のセーフティー・ネットの充実も急務である。

2.新たな事業、雇用機会を創造する

企業は、新たな需要の発掘と雇用の拡大のため、リスク・テイクを恐れず、果敢に新事業・新産業の開拓や、他国の企業が追随できない新技術、高付加価値商品の開発を進めなければならない。そのためには、産学官の連携強化や、規制改革の成果の積極的な活用が重要である。
政府は、科学技術創造立国を目指し産業技術政策や知的財産政策を戦略的に推進するとともに、大学改革を含む教育改革を進め、時代の変化に対応できる人材育成システムを構築する必要がある。併せて、革新的な技術開発を促進する税制改革、IT革命推進のための環境整備、社会資本の戦略的・効率的な整備、質の高い住環境の実現に向けた土地・住宅政策の推進、都市再生等、経済活性化に向けた取り組みが不可欠である。

3.国・地方を通じた簡素で効率的な政府を実現する

税や社会保険料の将来負担の増加に対する国民の不安を払拭していくためにも、政府は、歳出構造、社会保障、税を一体とした財政構造改革を進める必要がある。とりわけ、年金や医療等の制度改革を進め、早急に持続可能な社会保障制度を構築することが重要である。また、官から民への流れの中で、特殊法人等の抜本的な改革が急務である。
更に、政府の役割を事前規制型から事後チェック型に移行すべく、一層の規制改革を推進すると同時に、司法制度を改革し紛争の解決メカニズムや救済措置を整備する必要がある。
併せて、国・地方の役割分担、税財源配分の見直し、市町村合併の推進等を通じ、受益と負担の関係の明確化を基本とした自立型地方分権社会を確立し、各地域の特性に応じた発展を実現することが、政府に強く求められる。
企業は、地域の産業振興など、活力あふれる豊かな地域づくりに貢献していかなければならない。

4.地球環境問題の解決に取り組む

地球環境問題は、人類の将来に関わる重要な課題であり、経済との両立を図りながら、その解決に真剣に取り組む必要がある。そこで、企業は、環境技術の革新、環境自主行動計画の着実な実施に努めなければならない。当会は、環境自主行動計画の透明性、信頼性の更なる向上を目指す。
政府は、京都議定書と米国案を一体化した唯一の国際的な枠組みの構築に向けリーダーシップを発揮するとともに、革新的な技術開発への支援、エネルギー政策における原子力利用の位置付けの明確化と積極的推進を図っていくことが重要である。

5.対外経済政策を戦略的に推進する

貿易、投資の一層の自由化に向け、政府は、WTO新ラウンド交渉への取り組みを強化すると同時に、世界的な潮流である二国間、地域間の自由貿易協定を推進すべきである。当会は、こうした交渉に十分意見が反映されるよう、政府との連携を更に深めていく。
また、当会は、米国、中国をはじめとする諸外国との対話を促進すべく、民間経済外交を展開していくと同時に、OECD等の国際機関との政策対話や使用者団体の代表としてILOの活動への積極的参画を進める。
更に、アジアにおける自由で統合された市場の形成に向け、政府は、韓国やASEAN諸国、更には中国等との間で、経済連携協定を推進していく必要がある。併せて、官民が協力し、人材育成、部品加工等の裾野産業の整備、環境問題の解決を支援することが重要である。

6.政治と経済界の新たな関係を確立する

経済環境の急激な変化にあわせて、経済・社会の法的、制度的な枠組みを機動的かつ大胆に刷新していくためには、政治のリーダーシップが不可欠であり、従来にも増して政治と経済界との間の意思疎通の強化が求められる。 当会は、経済活動の実態に即した政策の提示、企業人の政治への参画意識の高揚などを通じ、政策本位の政治の確立に協力する。

以 上

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