[経団連] [意見書]

国民生活審議会消費者政策部会中間報告へのコメント

− 「消費者に信頼される事業者となるために-自主行動基準の指針-中間報告」
(平成14年4月22日 内閣府国民生活審議会消費者政策部会)へのコメント −

2002年5月27日
(社)経済団体連合会
 経済法規委員会
  消費者法部会

I.基本的考え方

  1. 事業者は、本来、市場での生き残りをかけて顧客満足度を高めるよう不断の努力を行うものであり、消費者対応に問題のある事業者は市場で淘汰され退場を余儀なくされる。
    自主行動基準の策定および運用体制の整備は、事業者が消費者の信頼を獲得する手段の1つとして位置付けることができるが、本来、事業者が競争上のメリット、社会的責任を考慮しつつ、自主的に対応すべきものである。行政の関与は事実上の規制となり、事業者としての自主判断能力・意欲を削ぎ、かえって企業活動の健全化を妨げることになることに留意すべきである。

  2. また、消費者の関心は、商品、サービスの内容、価格等にあり、それを生産・提供するプロセス等を決定する自主行動基準への関心は二義的なものと考えられる。従って、「自主行動基準の策定と適切な運用を通じて、消費者の信頼を維持し向上させることができる」とは言い切れない。

II.各論

1.自主行動基準の評価について

健全な市場の発展のため、適正な評価が行われることを担保するための方策(例えば十分な取材に基づく納得性の高い評価プロセス)や、最終的に情報を受けて行動する消費者の評価姿勢と能力を向上させるための方策についても、さらに踏み込んで検討すべきである。

2.自主行動基準の項目の例示について(「II.消費者に向けた自主行動基準」関連)

指針において例示する自主行動基準の項目については、実効性を確保し、また、企業の自主的な取組みを尊重する観点から、消費者が企業に取組みを期待し、かつ、実際に評価することが可能なものに絞るべきである。 例えば、「従業員等に自主行動基準を順守させ、倫理・遵法意識を醸成するための教育・研修の方法、頻度(13頁「<2>教育・研修」)」、「環境負荷の少ない製品や、リサイクル可能な製品に関する情報(17頁「<5>環境配慮に関する情報」)、「電子商取引における受注処理の際の誤操作の防止措置(18頁「<6>業界・取引類型の特性に応じた情報」)」等の項目は、事業者が忠実な表示に心がけようとすれば、非常に詳細なものとなったり、あるいは、頻繁に改訂を要することとなったりするため、かえって消費者に混乱を招く。

3.独占禁止法との関係の明確化について

以下の点について独占禁止法上の考え方を明確にして欲しい。

  1. 取引関係にある事業者の自主行動基準策定やその規定についての遵守体制の整備状況も考慮して取引関係を構築することが、不当な取引拒絶等に当るのかどうか(12頁<3>「取引事業者の考慮」関連)。
  2. 事業者団体が、事業者団体で定めた自主行動基準に違反した事業者に対し、事業者団体からの除名・社名公表を行うこと等が、不当に公正な競争を損なうことに当るのかどうか(13,14頁「<6>違反への対処方法」、27頁「<4>自主行動基準の実効性を担保する枠組み a」裁判外の紛争解決手段(ADR)等における活用」)。
  3. この指針に沿った、事業者又は事業者団体における自主行動基準の策定や運用体制の整備は、ベンチャーや海外事業者への参入障壁となることが考えられるが、法律上の競争制限行為に当るのかどうか。

4.公益通報者保護制度について

事業者が悪質な法令違反行為を行っている際の内部告発の意義を否定するものではないが、内部告発は個々人の正義感と責任の下で行うものであり、制度的に奨励を行う性格のものではない。また、内部告発者の身分保障については、現在でも内部告発を理由に労働条件の不利益変更等を行うことが法律的・社会的に許されているとは考えられず、新たな制度を設ける必要性に乏しい。

以 上

「消費者に信頼される事業者となるために-自主行動基準の指針-中間報告」
http://www.consumer.go.jp/info/shingikai/report/hokoku.pdf

なお、本コメント(Web版)では原本における丸付き数字を < > で表記している。

日本語のホームページへ