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国際投資ルールの構築と国内投資環境の整備を求める

【別添資料1】WTOモデル投資協定


以下の協定は、わが国経済界が、WTO投資協定に盛り込まれることを求める規定を列挙したものであり、網羅的なものではない。なお、当モデル協定は、GATS等を参考にして作成した。

〔前文〕

世界経済、特に発展途上国の成長及び更なる発展にとって投資の促進がきわめて重要であることを認め、途上国、特に後発開発途上国の経済的事情を十分に考慮し、透明性及び漸進的な自由化を確保しつつ投資の拡大を目的として、次の通り協定する。

〔定義〕

投資とは、投資家(自然人及び法人その他の団体)により直接または間接的に所有または支配されている資産であって、直接投資、契約に基づく権利及び知的財産権を含む。ただし、投機目的の短期金融取引、貸付の資本移動は除外する。
直接投資とは、外国投資家が永続的利益を目的として行なう投資であって、株式資本、再投資収益及び会社間の借入取引に関連するその他の資本によって構成され外国投資家による株式等の所有の割合が10%以上の場合というIMFの定義に基づく。

〔範囲〕

原則として、GATSの対象となるサービス産業分野を除く、あらゆる分野の投資を対象とする。加盟国は、GATT21条(安全保障のための例外)の規定を準用した例外分野を定めることができる。
発展途上国は、自国の開発政策上の要請があり、十分に合理的な理由がある場合に限り、WTOに通報した分野を例外とし得る。
なお、GATSを含む既存のWTO協定に規定される加盟国の権利・義務に影響を与えるものではない。

〔透明性〕

  1. 加盟国は、法令、規制、行政手続き及び司法判決等を含む投資に関連する又は影響を与える全ての国内措置に関して、速やかに公表し、公に利用可能とする。
  2. 加盟国は、投資に関連する行政許認可手続きに関して、不必要な障害とならないことを確保するため、客観的なかつ透明性を有する基準に基づき、国内法令に沿った申請には合理的な期間内に決定を通知する等、透明性の確保に努める。
  3. 加盟国は、投資に関連する国内措置に関して、投資家の要請に応じて、苦情を申し立てることを可能とする、立法及び行政機関から独立して、無差別、透明、時宜を得たかつ効果的な審査を行なう訴訟手続きを国内に設定する。
  4. 加盟国は、投資に関連する法令、規制及び行政手続き等の国内措置の導入又は変更を、速やかに、少なくとも毎年、WTOに通報する。
  5. 加盟国は、可能な限り、投資に関連する国内措置に関して、他の加盟国または投資家から具体的な情報提供の要請があった場合に情報を提供する照会所を設置する。
  6. 加盟国は、可能な限り、投資に関連する法令及び規制等の国内措置を制定する前に出版物に公告し、他の加盟国の投資家が書面による意見を提出した場合、こうした要請に応じて討議し、意見及び討議の結果を考慮する。

〔投資保護〕

加盟国は、他の加盟国の投資家が行なう投資に対し、公正かつ衡平な待遇と十分かつ継続的な保護及び保障を与える。

〔収用・補償〕

加盟国は、以下の条件を全て満たさない限り、投資を収用しない。

  1. 公共の利益を目的とする。
  2. 無差別原則に基づく。
  3. 正当な法の手続と国際法の原則に従う。
  4. 収用直前の投資の公正市場価格に等しい補償を、遅滞なく国際的に交換可能な貨幣で完全に支払う。
ただし、発展途上国については、自国の開発政策上の要請があり、十分に合理的な理由がある場合には例外とし得る。

〔送金の自由〕

加盟国は、投資家が、投資利潤を含む全ての送金を自由に遅滞なく国際的に交換可能な貨幣で行なえるよう保証する。また、加盟国は、投資家が、いかなる通貨への換金も自由に行なえるように保証する。

〔最恵国待遇〕

加盟国は、投資の許認可及び投資後の事業活動(投資財産の設立、取得、拡張、運営、経営、維持、使用、享有、清算、売却その他の処分)に関して、他の加盟国の投資に対し、他の第三国よりも不利でない待遇を与える。
ただし、加盟国特に発展途上国が、最恵国待遇の免除を求めてWTOに通報した場合、原則として十年を超えない限りにおいてこれを認める。
最恵国待遇は、国内裁判を受ける権利、税制に関しても適用される。

〔内国民待遇〕

加盟国は、投資の許認可及び投資後の事業活動に関して、自国が約束した分野のみ、他の加盟国の投資に対し、自国よりも不利でない待遇を与える。ただし、投資後の事業活動に関しては、できる限り、無条件に内国民待遇を付与する。
加盟国は、一層高い水準の自由化を達成するため、漸進的に自由化制限の削減・撤廃に努める。この目的のため、漸次、自由化交渉を行なう。
内国民待遇は、国内裁判を受ける権利、税制に関しても適用される。

〔市場アクセス〕

加盟国は、投資の参入に係る市場アクセスに関し、他の加盟国の投資に対し、自国が約束した場合に限り、特定の制限及び条件に基づく待遇より不利でない待遇を与える。加盟国は、中央及び地方政府ともに、自国が約束した分野において、投資家の数の制限、投資総額の制限、拠点形態の制限、外資出資制限等の措置を維持又は取ってはならない。

〔例外〕

加盟国は、GATT20条(一般的例外)の規定を準用した一般的例外措置を取ることができる。

〔開発条項〕

発展途上国は、自国の開発政策上の要請があり、十分に合理的な理由がある場合に限り、WTOに通報した一定の措置を例外とし得る。加盟国は、こうした例外措置を漸進的に削減・撤廃するよう努める。
また発展途上国は、協定に適合しない措置であって、現に取られているものをWTOに通報した場合、こうした措置を経過期間後までに撤廃することを認められる。経過期間は、後発開発途上国が発展途上国より長く設定する。

〔紛争処理手続き〕

加盟国は、他の加盟国が協定に基づく義務または特定の約束を履行していないと認める場合には、WTO加盟国間による紛争解決について定める紛争解決了解を適用することができる。

〔二国間投資協定との関係〕

加盟国は、既に締結している二国間・地域の投資協定を、漸進的に、最恵国待遇により全加盟国に均霑する。
ただし、既存の協定及び将来締結するこうした協定が、(1)GATT24条及びGATS5条の要件を満たすこと、(2)実質的に全ての投資分野を対象とすること、(3)他の加盟国に対していかなる通商上の障壁をも引き上げるものではないことという要件を満たした場合に限り、例外と認める。


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