日本経団連「緊急雇用対策プログラム」 |
付属資料2 |
サービス関連分野における雇用拡大 |
経済成長が鈍化し、少子高齢化が進行する中で、今後、わが国産業において雇用の維持・増大が期待される領域は、対個人・事業所等への様々なサービス関連分野である。
ここでは、「住宅」 「情報・通信」 「環境」 「福祉・医療等健康」 「人材派遣/アウトソーシング・サービス」の5つの分野について、雇用拡大の課題を取りまとめた。
できるものから早急に実施するよう、雇用機会の拡大に政労使が協力して全力を傾注することが必要である。
99年から導入された住宅ローン減税 ※1 は,デフレ経済下で住宅需要喚起に寄与してきた。しかし,地価が減少を続ける中,個人消費や企業の設備投資を喚起し,雇用を創出するためにも,さらなる住宅・土地政策が必要となっている。
第一に,土地にかかる規制を緩和・撤廃することで,国際的に開かれた魅力ある都市づくりが可能となり,そこに新たな雇用が発生すると期待される。構造改革の一つとなっている特区においても,国内だけでなく外資系企業の需要にも柔軟に対応できるインフラの整備が重要となる。
また,住宅関連分野は、建材などへの生産誘発効果 ※2 が大きく、また並行消費による家電機器、家具、自動車など耐久消費財関連産業への波及効果も大きい。高齢社会に対応した新たな居住に対するニーズも顕在化しており,リフォームや中古住宅などが多様な市場に発展することで,他産業を含めた経済効果があると考えられる。
さらに,少子化社会において,職住接近による働きやすく,子どもを育てやすい生活環境をつくり出すことが重要となる。これは,現在の労働者が就労しやすくなるだけでなく,多くの人が子どもを持とうとすることで大きな需要が創出され,新たな雇用につながると考えられる。
わが国では、とりわけ市街地における土地の高度利用が有効になされてきたとは言い難い。土地の高度利用とは,街の機能的集約化を意味し,土地を含めた資源の有効活用を意味する。高度利用化の到達点である「都市再生」を進めるためには,抜本的な「用途地域の見直し」を行なうことにより,事務所や住宅等の容積率の最適化及び緩和措置を取り,新築はもちろん既存建物の建替需要を促すことが重要である。それにより,機能が集約化された所に人の流れを効率的に導くことが可能となり,市街地の高度利用化が実現される。
2001年に改正された住宅ローン減税 ※1 に加え,所得税納付において,住宅ローンの支払利子を所得から控除する恒常的な制度の創設が必要である。さらに,親族から住宅取得資金等の贈与を受けた際の特例 ※3 において,現在550万円までとなっている贈与税の非課税枠の拡大が必要である。この特例は現在,年間所得1200万円以下の人が対象であるが,この対象の拡大も求められる。
定期借地権を利用することによって、従来より安価に戸建住宅等の購入が可能となる。今後さらに定期借地権制度の普及促進を図るため、用地の供給側と、利用する側の両面を税制等によって支援するべきである。また、中古住宅の取引市場を活発化することが重要であり、これに伴って、今後拡大が予想されるリフォーム市場の一層拡大も可能となる。
今後、急速に進展する少子高齢社会に対応することは、住宅関連サービス分野にとっても喫緊の課題である。バリアフリー等のリフォームに限らず、少子・高齢社会のニーズに見合う諸サービスによって新規市場を拡大することも可能である。
従来の新規供給住宅、リフォーム市場、中古住宅市場に加え、人口構造の変化、経済的富裕層の増加等個別のニーズに対応した新規市場にも、早急な対処が必要である。
住宅関連分野における機械化・工業化の進展により,生産性は飛躍的に向上した。そんな中,依然高度な人的技能が必要とされる作業工程も多く存在し,それらは後継者の不足等により,技術や技能の蓄積と伝承が途絶えてしまうことが危惧されている。それを防ぐためには,技能に対する適切な評価を行ない,それに高付加価値を与えることにより有資格者のインセンティブを高め,魅力的な仕事とすべく制度面でのより一層の充実が必要である。
<参考資料>
- ※1 住宅ローン減税
- 正式には、住宅借入金等特別控除。99年の税制改正で導入された。99年から2001年6月までに居住する住宅を新築(増改築含む)又は取得するための借入金等の年末残高(限度5000万円)について、
を所得税額から控除できるとした。
1年〜6年まで 1% 7年〜11年まで 0.75% 12年〜15年まで 0.5%
2001年の税制改正で、2001年7月〜2003年12月までに居住する住宅を新築(増改築含む)又は取得するための借入金等の年末残高(限度5000万円)について、「10年間 1% 税額控除する」と改正された。
- ※2 生産誘発効果
- 生産誘発効果とは、ある事業の1単位の投資が誘発するすべての産業における生産額の合計額。総務省「平成7年産業連関表」等の資料によると、建設部門は1.953である。他には、製造2.149、商業1.460、金融・保険1.497、運輸1.835など。
- ※3 住宅取得資金贈与の特例
- 子が親から(または孫が祖父母から)住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定要件を満たしていれば、1500万円(99年税制改正以前は1200万円)までは贈与税を軽減しようというもの。なお、贈与税の基礎控除が2001年税制改正で引き上げられたため(60万円→110万円)、5分5乗により(将来5年分の基礎控除を先取りして使う)非課税額は550万円となった。一方、贈与税軽減枠は1500万円のままである。
- ※4 不動産取得に係る税金
- 不動産を購入、建設等により取得した場合には、印紙税のほか、不動産取得税、登録免許税などがかかる。
- ○ 不動産取得税
- 原則、不動産価格の4%課税。現在、時限の軽減措置で3%課税となっている。住宅(建物)を取得した場合の課税標準の特例と住宅用地の場合の税額軽減の特例あり。2003年度税制改正に伴い,軽減方向で検討されている。
- ○ 登録免許税
- 住宅用家屋の所有権の保存登記であれば、課税標準に対して、0.6%課税。現在、要件を満たすものは、0.15%へ軽減されている。2003年度税制改正に伴い,軽減の方向で検討されている。
- ※5 不動産譲渡所得税
- 不動産を譲渡した場合には、その譲渡益に対して、所得税・住民税が課される。所有年数により税率が異なり、5年超を長期譲渡といい、5年以下を短期譲渡という。原則は、譲渡益(譲渡収入から譲渡費用・取得費用を差し引く)に短期であれば52%課税、長期であれば特別控除(100万円)を差引後に26%課税。優良住宅地造成のための税率軽減や居住用財産の特例など様々な特例があるが、負担感は依然大きい。
- ※6 定期借地権底地権者の税制優遇
- 定期借地権底地権は、借地権者に帰属する経済的利益およびその存続期間をもとにして評価した価額によって評価することになる。ゆえに、自有地評価より評価額は軽減されているが、普通借地権の底地評価よりは評価されており、相対的に、相続税対策としてのうまみが少ない。
- ※7 定期借地権付き住宅への融資
- 現在、定期借地権は賃借権方式が主流となっているが、住宅金融公庫融資は建物に対してのみ対象となり、保証金に対しての融資制度はない。一方、民間金融機関は保証金に対して返還請求権に質権を設定し融資しているところもあるが、弁済不能となった際に、保証金は住宅金融公庫融資に優先弁済する仕組みになっているため、民間金融機関の対応は消極的である。また、使用期間の残年数に応じて担保価値が急激に減少するという問題もある
政府は2000年11月発表の「IT基本戦略」を受けて、2001年1月、5年以内に世界最先端のIT国家の実現を目指す「e-Japan戦略」を策定した。その後、同年3月に「e-Japan重点計画」、6月に「e-Japan2002プログラム」、11月に「e-Japan重点計画、e-Japan2002プログラムの加速・前倒し」といった政府の行うべき施策を定めた各種計画を次々と策定してきた。そして、2002年6月、新たに、諸外国と比較した現在のわが国の位置付けやこれまでの成果の的確な評価を踏まえ、目標達成をさらに確実なものとすべく「e-Japan重点計画−2002」(※)を策定した。
※ 「e-Japan重点計画−2002」では、特に重点的に施策を講ずべき5分野を挙げている。
- 世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成
- 教育及び学習の振興並びに人材の育成
- 電子商取引等の促進
- 行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進
- 高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保
いうまでもなく、情報・通信分野の基盤整備と活性化は日本経済・産業と国民生活の将来に甚大な影響を及ぼす。経済産業省、電子商取引推進協議会及び株式会社NTTデータ経営研究所の共同調査によれば、厳しい経済情勢にもかかわらず、2001年のBtoC市場規模は1兆4,840億円(推計値)に達し、2000年の8,240億円に比べ約80%増加している。また、2006年には16兆2,970億円にまで増加するものと見込まれ、電子商取引率も5%を突破する見通しである(「平成13年度電子商取引に関する市場規模・実態調査(2002年2月発表)」)。
情報・通信分野は、今後、大きな発展を遂げる可能性を秘めており、雇用創出能力が大きく期待される。さらに、非労働力市場に滞留していた高年齢者や主婦層、身障者等も、ITの特性である非属地性、低廉性を活用することによって、就労に参加することが可能となる。
今後の情報・通信分野の発展を展望した場合、具体的には、「IT関連の新ビジネス」「ITを利用したアウトソーシング」の2分野において、雇用創出が特に期待できる。
インフラが整備された後には、ITを活用した多くの新ビジネスが登場し、ベンチャー企業を中心に、雇用の拡大が期待される。現時点では、電子商取引(BtoB,BtoC,BtoG)、情報セキュリティ・ビジネス、インターネット広告、オンラインゲーム、などの領域で雇用機会の拡大が見込まれる。
また、雇用の量的拡大だけでなく、ITを活用したアウトソーシングによって、雇用機会の地方への移転、多様な労働力需要の増大が展望できる。
ITの特性として、業務の場所を選ばない「非属地性」とコストの「低廉性」が挙げられるが、この非属地性と低廉性を活用すると、地方へのネットを活用したアウトソーシングが可能となる。
オフィス賃料が安価で、しかも、東京圏と比較して賃金水準が相対的に低廉な地域で労働者を雇用すれば、コスト面での競争力を向上させることができる。また、家庭内インフラが整備されれば、在宅勤務・SOHOが可能となり、高年齢者や主婦層、身障者等の労働力化が可能となる。
さらに、地方での高度技術者の育成を併せ進めることにより、海外からの業務をネットで受注することも可能になる。
こうしたアウトソーシングが進めば、(1)業務を受注し,SOHO・在宅労働者に業務を委託する仲介業務、(2)パソコン等のIT機器リース業務などのサービスも拡大していくものと考えられる。
情報・通信分野における雇用拡大を実現していくため、具体的には、(1)国民全体の情報リテラシー向上、(2)地方での起業、オフィス開設の推進、(3)高度IT技術者の確保、が必要である。
学校教育におけるIT教育の充実、民間教育機関でのIT関連講座等への支援などの教育の充実とともに,民間事業者による取り扱いの容易なIT機器・ソフトウェアの開発に対する助成・融資も必要である。
情報リテラシー向上にあたっては、今後、情報の双方向性が高まることに鑑み、情報発信のための、コンテンツ作成技術も重視する必要がある。
地方での起業を拡大していくためには、起業の志を持つ人材の確保と技術・知識の蓄積が不可欠である。この観点からは、大学で行われている基礎研究と起業家を結びつける仕組みとして、地方での「産学共同」の推進が有効である。これにより、人材の育成と技術・知識の蓄積を有機的に行うことも可能になる。
場合によっては、特定地域(大学)を指定して、集中的に行政の支援・助成を行い、これを他地域のモデルとすることも考えられる。
また、情報・通信分野の企業が地方でオフィスを開設する際に、高速インターネット回線・情報通信機器などの導入に対して、助成を行うなどの施策も有効と考えられる。これは、在宅勤務、SOHOの促進のためにも有効な施策となりうる。
情報セキュリティ技術などの国際的に通用する多くの高度IT技術者を育成・確保するためには、大学・専修学校等におけるカリキュラムの充実等と併せ、学生に対する奨学金の拡充などにより、情報・通信分野での就学を促進する必要もある。
環境関連産業の市場規模は、環境省が平成12年に行った推計によれば、平成9年現在で24兆7千億円とされている。この規模はさらに拡大し、その結果、平成22年には40兆1千億円に達するとされおり、年平均伸び率3.7%の成長産業になると見込まれている。
平成14年6月に閣議決定された経済財政諮問会議の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」では、循環型経済社会の構築などを通じて、民間の技術開発・製品開発の活発化、新たなビジネスモデルの形成、新規需要や雇用の創出がはかられるとしている。
実際に各企業も、すでに環境分野のビジネス化に積極的に取り組みつつある。この背景には、新たな環境要請への対応など、環境面での制約がコストとなって製品の価格に反映すること、ISO規格の導入に見られるように、環境問題への対応が新たな付加価値を生むこと等の事情がある。一方で、効率的な仕組みにより、廃棄物処理コストを抑制していくことも課題となっている。
また、わが国の環境分野の技術開発は世界トップレベルであると評価されており、日本が世界に先駆けて環境調和型社会を形成できれば、環境関連産業を国際競争力のある産業として育成することが十分に可能である。
環境省の平成12年の推計によれば、環境関連産業の雇用規模は平成9年の69万5千人から平成22年には86万7千人に増加するとされている。
実際、環境関連産業の主要産業である廃棄物処理業では、現在、中高年退職者の中途採用が増えており、中高年者の有効な受け入れ先となっている。さらに、廃棄物処理の機械化が進展すれば、今後、高齢化が進む中でも、高齢者に有望な雇用機会を提供すると期待される。
またすでに、OA機器メーカーのリサイクル工場では、クリーンで安全な職場環境で、女性が再生品の解体工程で安心して働ける職場づくりを実践している例も多い。
一方で、現実には、廃棄物処理業での若年者の定着率が低い。仕事の魅力、仕事への誇りを促す環境作りが課題である。
とくに、廃棄物処理業は地域密着型の産業であるため、その活性化を通じ、各地域において、雇用機会の創出が期待される産業である。
環境分野に関しては、国・自治体および産業界が一致協力して、下記の施策に優先的に取り組み、雇用拡大に注力すべきである。
循環型社会を構築するには、リサイクルの促進は不可欠であり、産業として育成することで雇用の場が見込まれる分野である。産業活動の自由度を広げる観点からリサイクル処理にかかる規制の見直しが必要である。
[具体的方策]
エコプロダクツは新たな消費を生み出す分野として期待される。エコプロダクツの市場拡大を促進する観点から、これらの需要を喚起する取り組みが必要である。
[具体的方策]
企業による環境問題に対する自らの創意工夫を活かした自主的な取り組みを促すため、これらの取り組みが適正に評価される社会を構築する必要がある。また、新たな産業を創出するため、環境分野をはじめとした企業による技術開発を促す必要がある。
[具体的方策]
(1) 病院経営への民間営利法人の参入規制の改革
医療法で定める「医業非営利の原則」を緩和・撤廃する。それにより、予防医療などの周辺分野も取り込んだ総合的ヘルスケア産業への成長が見込まれる。併せて、在宅医療サービスへの民間営利法人の参入も期待できる。
(2) 病院経営におけるアウトソーシングの拡大
給食などをアウトソースすることにより、病院業務に派生する産業における雇用拡大が見込まれる。
(1) 民間営利法人の施設介護サービスへの参入規制の改革
施設介護サービスへの民間営利法人の参入を認めることによって、老人ホームと特別養護老人ホームの複合経営などが可能となり、施設従事者の雇用拡大が見込まれる。
平成13年4月1日現在、保育所利用児童数182.8万人の1.1%にあたる2万1千人が待機児童であり、保育サービス市場は需要超過。しかし、定員充足率(利用児童数÷定員数)は公営87.9%,民営は102.7%(定員弾力化により100%を超えている)となっている(厚生労働省調べ)。また、大都市の方が待機率(待機児童数÷利用児童数)は高くなる傾向にある。さらに、25〜39歳の無業者(有配偶者、女性)で、就業を希望しながら家事・子育てのために断念している人は約140万人に達する(総務庁「平成9年就業構造基本統計調査」)。
(1) 民間営利法人の保育サービスへの参入促進
民間営利法人による保育所経営の認可要件について一層の緩和を進め、多様な保育ニーズへの柔軟な対応が可能となるようにすべきである。
(2) 保育所の公設民営の促進
公営保育所の民間委託を促進する。
(3) 短時間勤務保育士の就労促進
保育所に配置すべき保育士定数における,短時間勤務の配置可能割合を引き上げることによって、保育士のさらなる雇用創出が見込まれる。
1998年12月の特定非営利法人活動法施行によって,NPOの法人格取得が認められ,本来の活動資金に充当するための収益事業を行なえるようになったが、未だ不十分な部分も多い。
2002年8月30日現在のNPO法人認証数(内閣府発表)は8038法人となっている。なお,1995年におけるNPO就業者はフルタイム換算で216万人,非農業総就業者数の3.5%を占めるという推計もある。また、NPOの約3分の2が「保健・医療・福祉」の分野で活動している実態にあり(経済企画庁「平成12年版国民生活白書」)、行政・民間のサービスだけでは対応できないきめ細かな活動を行なうNPOの役割は大きく、就労の受け皿として期待される。
(1) NPOの法人格取得に関する認証基準の緩和
NPOの法人格取得取得の拡充,認証の審査基準の緩和等を図り、NPO活動の推進を図る。
(2) NPOに対する税制支援措置の拡充
税制特例措置の対象となるNPO法人(認定NPO法人)の認定要件を撤廃・緩和することにより、法人および個人からNPOへの寄付が増加し、NPOの活動に資する潤沢な資金提供が見込まれる。
上述の各分野における規制改革と併せ、雇用拡大を後押しする次のような措置を実施する。
(1) 各種情報網の整備
医療・福祉の各分野における質的、量的なサービス需給ミスマッチの解消のために、サービス提供者と利用者を結びつけるための情報整備を行なう。また、同分野での質的、量的、地域的な労働需給のミスマッチを解消するため、求人・求職情報網の整備を進める。特に、NPOに対しては、NPO自らの情報発信に対して公的助成を行なう。
(2) 資格取得の支援
医療・介護・保育に関する資格取得機会を拡大し、同分野での労働供給を量・質の両面で充実させる(介護福祉士等)。
一般に、人材派遣ビジネスやアウトソーシングなどのいわゆるビジネスサービスの分野は、多種多様なサービス事業が行われている。
こうした領域においては、専門知識・技術・技能を生かした就労が可能であり、経営の効率化や高コスト是正に取り組む企業においては、こうしたサービスを活用するニーズが強い。また、こうした分野での就労を希望する人々が今後とも増加すると予測される。
ビジネス環境の変化や就業者の意識変化に伴い、わが国では雇用の流動化が進んでいる。このような状況のもとで人材派遣ビジネスを拡大するためには、現行の労働者派遣に関わる諸規制を下記の通り早急に緩和・撤廃し、受け入れ企業と派遣労働者の双方が活用しやすい制度とすべきである。
現在、緊急雇用対策法による時限措置として、一部の派遣労働者について派遣期間制限が1年から3年に延長されているが(45歳以上の中高年)、時限措置ではなく、抜本的な規制緩和を実施すべきである。
→ | 制度があまりに複雑で、法の遵守が難しく、企業による活用を妨げている。 |
→ | 派遣労働を望んで働いている労働者が数多くいるにも関わらず、派遣として継続して働く道が閉ざされている。 |
→ | 派遣労働者と受け入れ企業がお互いに派遣という形態を望んでいても、継続することができない制度は、職業選択の自由を歪めるとともに、企業の雇用管理の柔軟性を阻害している。 |
→ | 育児・介護休業について、法定以上の期間を認めている企業があるなかで、派遣期間の制限を設けることは、労働者・企業ともに不都合が生じる。 |
→ | 雇用機会の創出や労働力確保の選択肢が拡大する。 |
→ | ILOの181号条約では、労働者派遣について「禁止する場合には明確にその理由を示さなければならない」こととなっているが、国際的にもこれらの分野において労働者派遣を禁止する明確な理由は見当たらない。 |
→ | 事前の打合せなどを行なうことで、派遣を受け入れる企業と派遣労働者が、業務内容やお互いの雰囲気等を確認したうえで就労できることにより、ミスマッチを解消できる。 |
→ | 派遣を受け入れる企業は直接指揮命令し、派遣就業に伴う使用者責任および派遣労働者の業務の成果に責任を持つことになるから、派遣労働者の適性について直接把握すべきである。 |
→ | 紹介予定派遣は、紹介予定である事が派遣契約当初に明確化されていることから、現在の規制は制度上矛盾している。 |
→ | 公共職業安定所も充実をしているため、低所得者が排除される心配はない。 |
→ | 職業紹介により求職者がまったく利益を受けていないとはいえず、低所得者を除き、サービスを受けた者(求職者)がサービスの対価を払うことは、市場経済下では当然である。 |
→ | これにより、求人企業の職業紹介サービスにかかる費用を低下させることができ、採用意欲の向上につながる。 |
アウトソーシング・ビジネスの拡大には様々な課題があるが、現実には、中小・ベンチャー企業の参入が見込まれる中で、資金調達を行ないやすい環境の整備が望まれる。
ここでは、アウトソーシング・ビジネスの拡大のために、国・地方自治体等公的機関における諸サービスの民間への積極的なアウトソーシングを要望する。