[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]
日米安全保障産業フォーラム(IFSEC)共同宣言について
添付資料

日米安全保障産業フォーラム(IFSEC)共同宣言
日米防衛産業界の関心事項

(仮訳)
2002年12月
日米安全保障産業フォーラム

はじめに

日米安全保障産業フォーラム(IFSEC)は、日米の防衛産業間の対話を促進するとともに、防衛産業が直面する課題について、両国政府に対して提言を行なうために、1996年に設置された。両国の防衛産業による対話は、IFSEC共同宣言の合意事項としてとりまとめられ、その中で、「日米防衛産業界の関心事項」として、防衛装備・技術開発プロジェクトの効果的な推進に向けた提案を行なった。本共同宣言は、1998年1月の日米装備・技術定期協議(S&TF)の場で、防衛庁、米国国防総省に対して紹介された。

IFSECの対話において、冷戦の終了に伴い、防衛産業に大きな変化がもたらされたことが指摘された。技術の進歩、防衛調達の減少、コストの増加等に直面するなかで、防衛生産・技術基盤を維持する必要があることから、防衛装備の取得における互恵的な協力の重要性が高まっている。IFSECのメンバー間でも、日米の防衛産業協力のあり方が、単なる供給者(米国)と顧客(日本)の関係から、将来の防衛システムの開発におけるパートナーシップを構築する関係へと発展していることが認識されている。この防衛協力の発展は、連携協力が市場での取引や調達という枠を超えて、将来の防衛装備のニーズの共有にまで及ぶに違いないことを意味している。

IFSEC共同宣言の策定後も、日米防衛協力が直面する状況は、変化を続けている。最近のIFSECにおける議論で指摘された進展として、下記のようなものがある。

以上の要素は、将来の日米防衛協力において、計画がより長期化し、システム開発における連携がより強化され、防衛産業間の相互関係もより強化されるということを示している。政府間の対話はすでにこのような状況を反映した形で進められているが、産業界も、このような状況を反映させて、日米の産業間の対話とともに、双方の政府との対話を進めていくべきである。

現IFSEC共同宣言の結論と提言

1998年のIFSEC共同宣言では、防衛産業間の協力がより緊密になれば、日米双方の防衛生産・技術基盤にとって有益であり、日米間の相互運用を支えるとともに、結果として日米同盟の強化に繋がると結論づけた。共同宣言では日米防衛協力が直面する以下のような様々な課題についても触れられている。

組織の構造や文化の問題は根本的な解決を図るというより、むしろ前提条件と認識された。一方で、国家安全保障政策や産業政策は状況の変化に適応させていくべき問題であると考えられる。いずれにせよ、姿勢の問題は対話や実績を積み重ねることにより、改善できるだろう。

以上のような考え方に基づき、IFSEC共同宣言では日米防衛産業協力の推進に向けて、いくつかの提言を行なった。

  1. 装備、技術協力における対話の拡大
  2. 技術移転に対するより前向きな取組み
  3. 日本の輸出管理政策のより柔軟な運用
  4. 知的財産権の保護のためのガイドラインの明確化
  5. バイ・アメリカン条項が与える影響に対する理解

IFSEC共同宣言策定後の進展をみれば、共同宣言の結論の基本的な考え方が妥当であったことが理解できる。共同宣言における提言のうちいくつかの項目は現在も妥当な内容である一方、現状に即して見直しを行なう必要がある。現在の日米間の安全保障関係、防衛調達に関する政策、及び防衛産業の動向に関して広範に行なった議論をもとに、IFSECとしては日米間の防衛産業・技術協力をより効果的に推進するために、以下のような考察、提言を行なう。

◆IFSECから日米政府に対する提言

1.対話の拡大

IFSECが初めて開催された当時、防衛産業協力は、日本に対する米国の装備品の販売やライセンス供与が中心であった。防衛関連技術に関する研究開発活動は軍事作戦上のリクワイアメントに関して、ほとんど配慮を払うこともなく、例外的に扱われてきた。それ以来、日米の相互依存関係が地域的安全保障の利害関係に及ぼす影響力が強まり、共同防衛運用の重要性が高まってきたため、今度は日米防衛プログラムの中心に軍事作戦上のリクワイアメントの概念を据える必要性が高まってきた。この考え方の変化は以下のような現在の政府の取り組みにもみられる。

世界的な傾向としては、主要な防衛プログラムが多国籍コンソーシアムにより実施されている一方で、防衛産業は次第に技術基盤のグローバル化、商業化が促進されている。このように、それぞれ進展した政策、作戦、産業界が結びついた結果、政府間だけでなく、関心を持つ産業間で、将来の防衛の関心事項に関する話合いをタイムリーに行なう必要性が高まっている。

産業界の対話は、政府が法、政策、規制によって許容した範囲内でしか実施することができない。不幸なことに、政府の実態は、以前の状況を未だに引きずって、産業界の対話を制限しており、日米防衛協力を推進するには不十分なレベルにある。米国企業は入念なライセンス手続を経なければ、日本側の取引先と共同プログラム候補の基本的な概念について話合いを行なうこともできない。日本企業は日本政府が許可したプログラム以外の部分について、米国企業と研究を行なうことが認められていない。このような政府の政策、手続によって、日米産業界は協力できる可能性があるものを検討することさえ妨げられている。

IFSECは産業界として政府の方針を尊重しなければならないことは認識しているが、同時に産業界がイニシアティブをとって、日米協力の見込みがあるものを産業間だけではなく、政府にも情報提供しなければならないと認識している。産業間の対話と同様、政府と産業界による話合いがオープン、かつ双方向に行なわなければならない。より開かれた対話を推進するため、最近のDTSI(Defense Trade Security Initiative)の一環で、ワシントンにおいて開催された会合で検討がなされたように、特定の事項や製品分野に関する産業間の話合いを促進するために、政府間の了解覚書を締結することも一案である。

2.情報のリリース、輸出ライセンス

米国における使い勝手の悪い輸出ライセンス手続や情報のリリースに関する制限は、防衛産業協力を進める上で、依然として大きな問題である。DTSIのような最近の政策面での取り組みを通じて、国際プログラムにおいて、(政府、産業界、調達サイドの)‘統合生産チーム’の形を活用するケースが増えている。IFSECは、この動きが日米プログラムにも、より多く採用され、情報開示や輸出ライセンスの手続きの見直しが進められることを期待する。

IFSECは米国政府が実際の輸出手続を柔軟にすることを期待する。政府と産業間の必要な対話を推進する一方で、必要な政府のサポートを確保できるように、FMS(政府対外武器輸出)とDCS(民間商業輸出)を最も効果的に組合せて活用すべきである。その判断は、両国の政府と関係企業間で協議の上、行なわれるべきである。

一方、IFSECでは、日本政府が輸出の際に軍用品と民生品の区分けに関して、より現実に即した運用を行なうようになったことを評価している。これにより、IFSEC共同宣言で触れられた武器技術と民生技術の区分けに関する問題は解決されつつある。一方、日本の武器輸出三原則によって、かなり厳格な輸出管理の運用が行なわれており、依然として、防衛装備・技術協力の推進が大きく妨げられている。IFSECでは武器輸出三原則の緩和は難しいと考える。むしろ、以下のように武器輸出三原則のより柔軟な運用がなされるべきである。

3.知的財産権の保護

IFSEC共同宣言は、日本の防衛プログラムで用いられた、(米国からの)派生技術と(自国内で開発された)非派生技術の解釈を巡る国防省と防衛庁との意見の食い違いについて取り上げた。そのような問題は最近目立たなくなってきているが、現在の装備の改修や共同開発の機会の増加に伴って、日米プログラムにおいて、大きな問題として顕在化する可能性がある。IFSEC共同宣言では、派生技術と非派生技術の包括的な定義を含めた合意を行なうことにより、日米政府が知的所有権を巡って産業界関係者と対話を行なうよう、要望を行なった。IFSECは、この問題は引き続き提言すべきものと考えている。

◆IFSEC共同宣言改訂の提言概要

  1. 日米政府は将来の装備、技術協力に関して、より開かれた防衛産業間対話が進められるようにすべきである。そのような対話は政府の合意の下、既に進められているプログラムに限定されるべきではない。そのような対話を促進するため、(BMD、MPA、ASW等)包括的な分野の了解覚書(MOU)についても、検討すべきである。

  2. 米国政府は情報開示や輸出ライセンスに関して、より迅速で効率的な手続を行なうべく、さらなる努力を行なうべきである。日本政府は日米の防衛開発、生産の協力に資するよう、現在の武器輸出管理政策について、輸出制限の例外を広げる形で、より柔軟な運用を行なうべきである。

  3. 日米政府は防衛プログラムにおける知的財産権の保護に関する合意を図り、民間の派生技術の所有権を確保するための明確な基準を設けるべきである。
以 上

<参考:IFSEC共同宣言の趣旨に沿ったBMDの日米協力のあり方>

現 状
現在のBMDに関する日米協力の枠組みは、共同研究の段階では十分な内容だが、全体システムの開発、生産での連携を行なう上では十分ではない。

イージスBMDシステムに関する共同開発
イージスBMDの関係システムの共同生産
以 上

日米安全保障産業フォーラム(IFSEC) 委員企業

米 国
The Boeing Company
GenCorp Aerojet
General Electric Company
Lockheed Martin Corporation
Northrop-Grumman Corporation
Raytheon Systems Company
Science Applications International Corporation
United Defense LP

Secretariat: International Committee, National Defense Industries Association

日 本
三菱重工業(株)
石川島播磨重工業(株)
川崎重工業(株)
(株)島津製作所
(株)東芝
(株)アイ・エイチ・アイ・エアロスペース
(株)小松製作所
ダイキン工業(株)
日本電気(株)
日立製作所(株)
富士通(株)
三菱電機(株)

事務局:(社)日本経済団体連合会 防衛生産委員会
以 上

日本語のトップページへ