[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「e-Japan戦略II(案)」に対する意見

2003年6月12日
(社)日本経済団体連合会
  情報通信委員会
   情報化部会

  1. e-Japan戦略IIの原案 * は、先導的な取り組み7分野に見られるように、斬新な切り口から戦略の重点をITの利活用へとシフトさせた内容となっており、評価できる。それら7分野の改革に必要な具体的な施策を重点計画に盛り込み目標の着実な達成を期すとともに、それを梃子に他の分野においてもITを活用して改革を促していくべきである。
    その際、民間に対して展望の共有と行動を呼びかけることの重要性は原案の指摘するとおりである。ただし、政府の役割としてITの利用環境を整備することが先決であり、民間の自由な経済活動を制約することは厳に慎まなければならない。

    * http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pc/ejapan2.pdf を参照。

  2. 戦略ならびに重点計画が画餅に帰すことがないよう、原案にある評価機関(専門調査会)を速やかに組織すべきである。その上で、同機関において、既存の行政評価・監視機能をも活用しつつ、重点計画の推進状況の調査のタイミングに合わせて、民の視点から定期的に事後評価を行う必要がある。また、個々の施策に関する政府の取り組み状況のみならず、それらが産業競争力の強化や国民生活の質的向上にどの程度寄与したのかという成果の評価に努めるべきである。
    評価に際しては、民間の自由な経済活動を制約することがないよう留意すべきである。具体的には、II章の「先導的取り組み」の「評価にあたっての考え方」のうち、「食」の流通業者に関する記述(10頁)、「中小企業金融」の金融機関に関する記述(15頁)、「知」のコンテンツ作成者に関する記述(17頁)は、評価の仕方如何では、民間の活動を制約する恐れがある。特に、金融機関の「中小企業事業者への貸出残高」については、基本的に、経済情勢等を反映した企業の資金需要により決まると考えられることなどから、ITの利活用の推進状況を評価する基準として適切ではなく、削除されたい。また、「より柔軟な与信」という表現は審査基準の緩和を意味するととられかねないことから、修正されたい。
    なお、III章の「新しいIT社会基盤の整備」においては、II章のような「評価にあたっての考え方」が示されていないが、III章に盛り込まれた事項についても、事後評価の対象とすべきである。

  3. 日本経団連が3月に取りまとめた「新IT戦略に関する提言」 * などで主張してきた事項は、かなりの程度盛り込まれているが、取りあげられなかったものを中心に別紙に整理したので、戦略の最終案あるいは重点計画に反映されたい。
    なお、効率的で質の高い電子政府の実現は、IT戦略の根幹を成すものであり、近く策定される予定の「電子政府構築計画(仮称)」の内容についても、戦略の最終案あるいは重点計画に盛り込むべきである。その際、今年度中にほぼ全ての行政手続がオンライン化される中で業務改革を急ぐ必要があると考えられることから、各種施策の実施時期をできる限り前倒しされたい。

    * http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/021.html を参照。

以上

【別紙】
【医療福祉】

対面を前提とした医療・介護のあり方を見直し、ITを活用することによって、利用者のQuality of Life を改善するとともに、資源を有効活用すべきである。具体的には、以下のような施策が考えられる。

なお、原案に関連して、以下の点についても配意されたい。


【ITS】

ITを活用することによって、交通の安全確保と人流・物流の円滑化、効率化との両立を目指すべきである。具体的には、以下のような施策が考えられる。


【行政サービス】

「電子政府構築計画(仮称)の策定に向けて」(2003年3月31日各府省情報化統括責任者連絡会議決定)にも盛り込まれていない事項として以下のような施策を講ずべきである。


【次世代情報通信基盤の整備】

原案では、「高速・超高速インターネットが全国どこでも利用できるよう、必要な規制改革や競争政策を推進する」とされているが、事後評価を実効あるものとするためにも、具体的な政策措置を盛り込むべきである。

【安心・安全な利用環境の整備】

ネットワークを通じて必要な時に真正な情報に確実にアクセスできるようにするとともに、情報セキュリティ意識を社会に根づかせるため、以下のような施策を講ずべきである。


【ITを軸とした新たな国際関係の展開】

WTO新ラウンドにおいて、オンラインで行われるデジタルコンテンツの取引に対する関税不賦課の恒久化、ITA(Information Technology Agreement)への参加国および対象品目の拡大、IT・電子商取引関連分野の全面的な自由化、を主張していく必要がある。

【その他】

ユビキタスネットワークの形成推進に関する原案の記述は、基本的に無線インターネット普及のための環境整備等に止まっているが、いつでも、どこでも、何でもネットワークに接続できるIT利用環境としてユビキタスネットワークを位置づけ、インフラの整備のみならず、利用基盤の確立や利活用の推進のための施策を総合的に講じる必要がある。

以上

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