[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「下請代金支払遅延等防止法改正に係る公正取引委員会規則及び運用基準の改正(原案)」に対するコメント

2003年10月27日
(社)日本経済団体連合会
経済法規委員会競争法部会

グローバル化の進展の中で、現在では、企業規模にかかわらず、独自の技術力や企画力等によって高い競争力を獲得する事業者が出現しており、中小事業者と大規模事業者との取引関係も様々な様相を見せている。このような状況において、「資本金額」という外形的な基準のみによって一律に大規模事業者が取引関係において優越するとの前提で、下請事業者を過度な保護下に据えることは、むしろ不公平な法適用を招き、日本全体の国際競争力を殺ぐこととなることが懸念される。
今回の改正下請法の運用に際しても、親事業者、下請事業者双方の煩雑な手続(発注書面の交付時期や給付内容など厳格な書面交付義務等)負担を極力軽減し、事業活動の効率化に資するよう、実態に即した運用を行うことが不可欠であり、「下請代金支払遅延等防止法改正に係る公正取引委員会規則及び運用基準の改正(原案)」に対して、以下の通り、コメントをする。

公正取引委員会ホームページ
http://www2.jftc.go.jp/pressrelease/03.september/03092601.pdf

I 第3条規則の改正

「予定期日」については、特定事項がある場合には、その内容が定められない理由および予定期日等を当初書面への記載を義務づけることとしているが、その内容については、当事者間で明確に認識している場合が殆どであり、3条書面に記載する必要性に欠ける。よって、本規定については削除もしくは任意的記載事項に止めるべきである。
仮に本規定を残す場合には、今般新たに適用対象となった情報成果物委託および役務提供委託に対してのみ適用すること、委託内容が決定される時期と記載した予定期日が乖離した場合であっても、合理的な事由がある場合には規定に抵触しない旨を明記すること、が求められる。

II 運用基準の改正

1.法の対象となる取引

(1) 情報成果物作成委託
  1. 「情報成果物作成委託」の対象が未だ不明確であることから、その考え方を含め、より分かりやすく定義・事例紹介(例えば、販促に利用するチラシ等は含まない等)をすべきである。

  2. 「業として行う場合」(原案では「事業者が、自らの事業のために用いる情報成果物の作成を反復継続的に社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行っている場合」と記載)の定義・判断基準が不明確である。親事業者・下請事業者双方の予測可能性や法的安定性を確保するためには、「業として行う場合」と「自家使用」の判断基準を明確に示す必要があり、例えば「営利目的以外又は実費以外の対価を得ずに行う場合」は下請法の対象とならない旨を明記すべきである。

(2) 役務提供委託

修理委託及び情報成果物作成委託のうち、下請法の対象とならない場合あっても、これが役務提供委託に該当するとの解釈をされる惧れがある。よって、役務提供委託には修理委託及び情報成果物委託は含まれない旨を明記すべきである。

2.親事業者の書面交付の義務−3条書面の記載事項−

「下請代金の額」について、その具体的な額が不明である場合には算定方法を記すこととしているが、現行法上において、製造委託および修理委託に関しては、仮単価による発受注は支障なく実施されており、下請事業者にどのような不利益が生じているかなど、改正理由に乏しい。よって、少なくとも製造委託、修理委託については、現行通りの規定とすべきである。仮に新たな取引分野について「算定方法」の記載を求めるとしても、複雑な算定方式を記載することは手続を煩雑化するため、価格決定方式が分かる記載をもって足りることとすべきである。
また、「下請事業者の給付の内容」として、情報成果物に係る知的財産権の帰属の範囲を明確に記載することとしているが、広範にわたる知的所有権の扱いを取引の都度交付する書面に記入することは困難である。「知的財産権の扱い」については、帰属の範囲が記載され、当事者間で合意された文書(契約書等)との関連性を記載する事で足りるとすべきである。

3.親事業者の禁止行為

(1) 受領拒否−「給付の受領」の定義−

金型の形状には、部品成形メーカー・金型メーカーの特別のノウハウが含まれており、この場合、金型そのものを検査することには意義がなく、金型の良否は、試打ちされたサンプルの形状等を検査することにより判定されている。
そのため、「給付の受領」については、親事業者、下請事業者間で合意していれば、親事業者が下請事業者の給付の目的物もしくは内容を確認できる資料を受領した場合についても認めるべきである。

(2) 支払遅延

「受領日」については、情報成果物作成委託に限って、「親事業者と下請事業者の間で、当該情報成果物が一定の水準を満たしていることを確認した時点で給付を受領したこととすることを合意している場合には、受領当該情報成果物を支配下に置いたとしても直ちに受領したものとは取り扱わず、支配下に置いた日を支払期日の起算日とはしない」旨を規定しているが、製造委託や修理委託においても、委託内容の確認のために時間を要することから、製造委託および修理委託についても、同規定を設けるべきである。
また、「支払起算日」についても、役務提供委託に限って、1ヶ月を超えて継続して提供される役務について月単位での締切対象期間の末日を支払起算日とすることを認めているが、1ヶ月を超えて提供される他の取引形態(製造委託および修理委託)についても、同規定を設けるべきである。

4.その他

以上の指摘事項に基き、公正取引委員会規則および運用基準の改正が行われることが望まれるとともに、さらに事業者の予測可能性、法的安定性を鑑み、各業界毎の実態を踏まえた、詳細な細則等の策定が求められる。
また、事業者においては、今般の下請法改正に伴うシステムの改修に多大な費用を要することや、施行(2004年4月1日)までに時間的制約があることから、充分な対応をとることが困難である場合も生じる。このような実態を踏まえ、改正運用基準については、その段階的な適用を含めた柔軟な運用を行う必要がある。

以上

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