[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

総務省 電波有効利用政策研究会
「電波利用料制度見直しのための論点整理」に関する意見

2004年1月23日
(社)日本経済団体連合会
情報通信委員会
通信・放送政策部会

電波利用ニーズが高まる中、電波の有効利用の促進という観点から、今般、総務省電波有効利用政策研究会が「電波利用料制度見直しのための論点整理」(以下「論点整理」。http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/031225_5.htmlを参照)を公表し、広く意見を募集したことは、時宜を得ている。

電波利用料制度のあり方については、日本経団連においても、2002年12月、情報通信委員会 通信・放送政策部会報告「電波の有効利用に向けて」において、その時点での一応の考え方を整理したところであり、同報告を踏まえつつ、今回の論点整理に沿って、以下、意見を申し述べる。

なお、電波の利用状況は、技術の進展に伴い、大きく変化することも想定されることから、電波利用料制度のあり方についても、そのような変化を踏まえ、改めて見直しが必要になることも考えられる。


1.電波利用料制度見直しの視点について

現在、電波利用料制度が抱える主な課題としては、(1) 利用料の使途が拡大される一方、利用料総額の8割以上を携帯電話端末に依存するなど、受益と負担の関係が曖昧になっていること、(2) 無線局数を基に料額を算定するため、電波の有効利用を促進するような料金体系になっていないこと、が挙げられる。この点、論点整理が「利用者間の負担の公平性」と「有効利用のインセンティブ」を見直しの視点として掲げていることは適切である。同時に、論点整理は、「電波利用社会の一層の発展を図るような制度設計」を行なうという観点から、「徴収額についての適切な配慮」の必要性を指摘しているが、この点も下記3で後述する電波利用料の算定方法との関係で重要な視点である。

他方、電波利用社会の発展に寄与するという理由で未利用周波数帯の開拓のための研究開発などへ電波利用料の使途を拡大するという考え方については、まず官民の役割分担が論じられるべきであり、その結果、国が担うべきもの、あるいは民間の取り組みを国が支援すべき場合があるとしても、その財源として電波利用料が適切か否かが検討されるべきである。研究開発の重要性は否定すべくもないが、「まず使途拡大ありき」の議論につながることのないよう、十分留意すべきであり、電波利用社会の発展に資するからといって、安易に使途を拡大すべきではない。

2.電波利用料の基本的性格について

論点整理で示されている電波利用料の徴収の目的に着目した対極的な2つのモデルのうち、電波利用共益費用の財源確保のための手数料という現行制度の性格を維持したモデル1を基本にしつつ、「利用者間の負担の公平性」の確保と「有効利用のインセンティブ」の付与という観点から、電波の経済的価値を反映した電波使用の対価としての性格を有するモデル2の要素を部分的に取り入れるのが妥当である。

なお、モデル1を基本とした場合、電波利用共益事務から得られる受益等の程度に応じて料額を配分することとなるため、有効利用のインセンティブは限定的なものに止まるとの指摘がある。この点については、無線局数を基に料額を算定するために、有効利用のインセンティブが働くどころか、むしろその意欲を失わせかねない現状を速やかに改善することが先決であると考える。モデル2が狙いとする電波の非効率利用の排除と新規参入の促進は、電波利用料制度の見直しによるだけでなく、電波の利用状況の評価・公表制度や再配分のための給付金制度との補完によって達成を目指すのが現実的である。

3.電波利用料の算定方法について

使途や使用する帯域によっては、使用帯域幅や空中線電力など電波の量的要素や需要の程度を勘案することが適当である。その場合、(1) 公務(国や地方公共団体が国民の生命・財産の保護等の業務のために運用するものであって、真に公共性の高いもの)や公共的業務(企業が公共性の高い業務を円滑、安全かつ安定的に遂行するためのもの)等の用途に使用する無線システム、(2) 広い帯域幅が運用上不可欠といった技術的特性を有する無線システムなどについては、利用料を減額するなどの配慮が必要である。

4.国、地方公共団体の扱いについて

国、地方公共団体が開設する無線局については、電波利用料の徴収免除等の特例措置が設けられているが、他の無線局免許人と同様に電波利用料を徴収すべきである。国庫間で資金が循環するに過ぎず、徴収の実益に乏しく、事務の複雑化を招くだけとの指摘があるが、行政運営コストを可視化することによって、行政の効率化を促すことが重要である。

5.免許不要局の扱いについて

第3章に整理されているとおり、現在、電波利用料の徴収対象外となっている免許不要局は、基本的に低出力のものに限定されているため、電波秩序に混乱をもたらす恐れが小さく、また、周波数帯の品質が保証されず、周波数帯に対する排他的権利も有していない。さらに、論点整理が指摘するように、モデル1を基本とする場合、免許不要局が受ける利益は間接的なものに過ぎない。ユビキタスネットワーク社会の実現に向けて、小電力無線システムに寄せられる期待は大きいだけに、従来どおり非徴収とすべきである。

一方、非徴収とした結果、将来、免許不要局が飛躍的に発展し、電波の利用状況が大きく変化することも考えられる。徴収の是非については、そのような変化を見極めて、その時点で改めて慎重に検討するのが適当である。

以上

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