[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

英国金融サービス機構(FSA)の上場規則改定(案)に対するコメント・レター

2004年1月30日
(社)日本経済団体連合会

日本経団連では、2004年1月30日、英国の証券市場監督機関である金融サービス機構の上場規則改定(案)に対するコメント・レターを送付した。同改定(案)は、英国で外国企業が上場する場合には、国際会計基準か米国会計基準に準拠した財務報告を義務付ける方向の提案を行っている。これに対し、日本経団連のコメント・レターでは、外国企業に対し自国の基準に準拠した財務報告を認めるよう求めている。なお、本コメント・レターは、英国で上場等の資金調達活動を行っている企業25社の顕名の支持を受けている。
以下はその要旨である。

  1. 海外企業については、下記の理由により、原則として、当該企業の母国の会計基準に準拠した財務報告を認めることが望ましい。

    1. 財務報告にあたり準拠すべき会計基準をIASか米国会計基準に限れば、母国の会計基準による財務諸表の作成に加え、IASまたは米国会計基準に準拠した財務諸表の作成の負担を上場海外企業に強いることとなる。当該負担は、最終的には、株主・投資家が負担することとなり、株主・投資家の不利益となる。

    2. このような追加的な負担は、企業にとっての資金調達コストを増加させるのみならず、国際的に最適な資本配分を歪める結果となり、世界経済全体にとってマイナスである。

    3. さらに、英国の投資家にとっても、世界中の有力企業への投資の機会が阻害されることになりかねず、また、「外国企業の上場が世界でもっとも多い」というロンドン証券取引所の名声が損なわれかねない。

    4. CP203自身が指摘するように、これまでイギリスの証券取引所は、海外企業に対し、母国基準に準拠する財務報告を認めてきたが、特段の弊害は生じていない。

    5. CP203は、海外企業に対して、IASや米国会計基準に準拠する財務報告を求める理由として、整合性のある会計基準を用いることが投資家の利益になるとしているが、IASと米国会計基準の間の整合性がそもそも取れていない。また、IAS、米国会計基準自身が、個別の会計基準の中で会計基準の選択を認めている。

  2. とりわけ、わが国企業については、以下の理由により、日本基準での財務報告を認めるべきである。

    1. 1997年以降、わが国では、「フリー・フェア・グローバル」の下に金融資本市場の改革が推進される中、資本市場のインフラである企業会計・監査制度についても、国際的整合性を図るため、新基準が順次策定、導入されている。残された課題であった企業結合会計は2006年度からの強制適用が予定されており、減損会計は2003年度からの任意適用及び2005年度からの強制適用が決まっている。また、監査人の質の向上についても、公認会計士の独立性の確保や競争の強化のため、2003年に公認会計士法が改正されている。したがって、IAS/ISAs(国際監査基準)、米国基準と比べ、日本基準の質が劣ることはなく、同等である。
      CP203は、特段の理由を付すことなく、米国基準に準拠した財務報告を認めているが、何らかのクライテリアに基づく実質的な検討を経て米国基準に準拠した財務報告を認めていると考えられる。各国の基準について差別的取り扱いがなされないよう、適格性のクライテリアを示すべきである。

    2. わが国からは、イギリス、北米に次いで多くの企業がロンドン証券取引所に上場しており、また、新規の発行企業もかなりの数にのぼる。このように、わが国企業は、イギリスの資本市場、投資家の利益に貢献してきている。

  3. さらに、EUは、すでに、Prospectus Directiveを制定し、外国の会計基準がIASと「同等」である場合に、当該会計基準で作成された財務諸表を掲載した目論見書を認めるとしているが、その細目が決定する前に、イギリスがこのような制度改正を図る意図が不明であり、容認できない。

(ご参考)
コメント・レター原文 (英語/PDF)
UK FSA's Proposal ( http://www.fsa.gov.uk/pubs/cp/203/index.html )

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