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日本経団連 環境自主行動計画〔廃棄物対策編〕
−2003年度(第6回)フォローアップ調査結果−

『産業廃棄物最終処分量削減目標の達成状況について』

2004年3月15日
(社)日本経済団体連合会

1.これまでの取組み

(1) わが国産業界は、かねてより、リサイクルの推進ならびに廃棄物の排出抑制に取組んできた。日本経団連では、1990年から、主要14業界(後に15業界に拡大)の協力を得て、「主要業界における廃棄物対策への取組み状況」を毎年調査、公表し、産業界の自主的取組みの一層の推進を図ってきた。
さらに1997年には、そうした取組みを強化・充実すべく、経団連環境自主行動計画の策定にあたって、温暖化対策に加えて、廃棄物対策に関する自主行動計画も併せて作成することとした。自主行動計画の廃棄物対策編には、当初35業種が参加し、業界毎に、リサイクル率・最終処分量などの数値目標、ならびにその達成のための対策を明らかにすることにした。また、毎年定期的に、業界毎の取組みの推進状況をフォローアップすることによって、継続的かつより一層積極的に廃棄物対策に取組んでいくことにした。このような方針の下に、1998年、自主行動計画の第1回フォローアップを行ない、廃棄物対策の進捗状況を業種毎に取りまとめ、公表した。

(2) 1999年に入り、最終処分場のひっ迫問題等を契機とする国民の廃棄物問題への意識が高まるなかで、産業界としても、循環型社会の推進に向けて、取組みを一層強化することとした。
そこで、第2回フォローアップ(1999年4月に各業種へ要請)の実施にあたっては、産業界の自主的取組みの成果を社会にわかりやすく提示するために、業種毎に産業廃棄物最終処分量の削減目標を設定するよう要請するとともに、産業界全体の削減目標を設定することを決定した。これに基づき、1999年12月の第2回フォローアップ調査結果の公表以降、業種毎の取組み状況に加えて、産業界全体の目標ならびに実績についても公表することになった。


【産業界全体の目標】(1999年12月設定)
産業界として、2010年度における産業廃棄物最終処分量の目標量を1,500万トン(1990年度比25%)に設定する。また2005年度の中間目標を2,100万トン(1990年度比35%)とする。なお、これら目標は、その達成状況や社会経済情勢の変化等を踏まえて、必要な見直しを行う。

< 参 考 >
政府が2003年3月に策定した『循環型社会形成推進基本計画』では、「循環型社会の形成の取組みの進展度を測る指標」として、『日本経団連環境自主行動計画〔廃棄物対策編〕』の上記目標を採用し、2010年度(平成22年度)を目標年次とする産業廃棄物の減量化目標「産業廃棄物の最終処分量を1990年度(平成2年度)比で約75%減とする」を掲げている。

2.2002年度実績調査結果(32業種の産業廃棄物最終処分量等)

(1) 今回のフォローアップ調査には、昨年度同様、41業種が参加した(注1)。(具体的には後述の『個別業種版』<PDF> を参照) そのうち、産業廃棄物最終処分量削減目標の達成状況フォローアップに参加したのは32業種(注2)である。32業種からの産業廃棄物最終処分量は、基準年である1990年度でみると、わが国全体の産業廃棄物最終処分量の70%近くをカバーしている(注3)

(2) 2002年度の産業廃棄物最終処分量実績は1,190万トンとなり、2001年度実績の約28%減〔約470万トン減〕と、大幅に減少した(表およびグラフを参照)。この結果、1990年度(基準年)実績の6,098万トンに比して約19.5%の水準にまで減少(約80.5%減)した。

(3) このように、産業廃棄物最終処分量削減に向けた産業界の自主的な取組みは、2002年度において順調に進展し、1999年度に設定した「産業界全体の産業廃棄物最終処分量」の2005年度における削減目標〔1990年度比25%〕を、2000年度、2001年度に引き続き、3年度連続で前倒し達成したばかりでなく、初めて、2010年度目標〔1990年度比25%〕を達成したことが明らかになった

(4) この要因は、各業界において自主的な取組みを行った成果であり、後述『個別業種版』の「最終処分量の削減ならびに抑制に寄与した要因」において、業種毎に具体的に記している。廃棄物対策の実施にあたっては、業種・業態毎に排出される廃棄物の種類が異なることもあり、処理方法・技術も多様化している。
ちなみに、今回の調査結果によると、産業廃棄物最終処分量削減目標の達成状況フォローアップに参加した32業種のうち、算出方法の変更等により微増した3団体を除き、29業種が、昨年度に比べて最終処分量の削減あるいは同水準の維持を図った。

(5) 『個別業種版』では、事業系一般廃棄物対策や使用済み製品対策についても、該当する業種毎に具体的に記している。事業系一般廃棄物対策や使用済み製品対策等については、統一的な目標は定めていないが、循環型社会の推進に向けた産業界の自主的取組みとして、重要な役割を果たしている。

(6) また、循環型社会形成推進基本法や改正廃棄物処理法、資源有効利用促進法等の各種廃棄物・リサイクル関連法の施行に伴い、こうした新たな制度的枠組みを遵守するための取組みについても、『個別業種版』において公表している。併せて、資源循環をさらに促進させる観点から求められる「政府・地方公共団体への要望」についても調査項目とし、その結果を業種毎に記述している。

3.今後の方針

(1) 循環型社会形成推進基本法、改正廃棄物処理法、資源有効利用促進法(改正リサイクル法)の施行等にみられるように、循環型社会の推進はますます重要な課題となっている。循環型社会は、「(1)エネルギーを含む資源の投入量の可能な限りの抑制、(2)資源の再利用促進による環境負荷の低減、(3)適正処理の推進が全体として図られるよう、不断の努力が重ねられる社会」と考える。その意味で、廃棄物対策の基本は、3R(リデュース、リユース、リサイクル)、とりわけリサイクルを積極的に進め、できるだけ廃棄物を最終処分場に回さないようにすることである。
産業界は、かねてより、自主的な取組みを中心に据えて、最終処分量の削減のみならず、排出量の抑制、リサイクル・リユースの促進、使用済み製品対策についても、積極的に取り組んでいる。今後とも、従来以上に自主的な取組みの充実・強化を図り、創意工夫を活かした自主行動計画の着実な実行によって、引き続き、産業界全体としての統一目標の達成に努力していく。
循環型社会の推進にあたっては、こうした自主的な取組みが最大限尊重されることが重要である。
今回のフォローアップ調査結果により、初めて、2010年度目標を前倒し達成したことが明らかになったが、この要因として一部業界における景気低迷の影響も考えられることもあり、当面は、2010年度の目標値〔1990年度比25%〕を継続的に達成すべく、産業界は一層の努力を重ねていく

(2) また、循環型社会を推進するうえで、技術開発の推進・普及は不可欠の課題である。総合科学技術会議においても、環境技術を重点分野とし、廃棄物処理・リサイクルに係る先進的な技術開発を進めることとされており、中長期的観点から強力に推進していく必要がある。

(3) さらに、各産業における3Rの取組みが進めていくうえで、廃棄物処理法をはじめとする制度環境の整備も必要である。日本経団連は、2002年7月に「循環型社会の着実な進展に向けて」と題する意見書をとりまとめ、「不法投棄については罰則や規制を厳格化し、リサイクルは規制を緩和して推進すべき」旨、強く主張した。今後、そのような基本的な考え方にたって、抜本的な制度改革が行われることを期待したい。日本経団連としても、規制改革要望等を通じて、政府に強く働きかけていく。


【産業界全体(32業種)からの産業廃棄物最終処分量】
1990年度
実績※
1996年度
実績※
1998年度
実績
1999年度
実績
2000年度
実績
2001年度
実績
2002年度
実績
2005年度
目標(参考)
2010年度
目標
6098万トン5188万トン
(▲910万トン)
3549万トン
(▲1639万トン)
2435万トン
(▲1114万トン)
1992万トン
(▲443万トン)
1661万トン
(▲331万トン)
1190万トン
(▲471万トン)
2100万トン
以下
1500万トン
以下
100%85.1% 58.2%39.9% 32.7%27.2% 19.5% 35%25%
※各年度の実績について、一部の業界では一部推計値を使用している場合もある。

【産業界全体(32業種)からの産業廃棄物最終処分量】

※注1:2003年度(第6回)フォローアップ調査参加業種:41業種
電力、ガス、石油、石炭、鉄鋼、非鉄金属製造、アルミ、伸銅、電線、ゴム、板硝子、セメント、化学、製薬、製紙、電機・電子、産業機械、ベアリング、自動車、自動車部品、自動車車体、産業車両、鉄道車輌、造船、製粉、精糖、牛乳・乳製品、清涼飲料、ビール、建設、航空、通信、住宅、不動産、工作機械、貿易、百貨店、鉄道、海運、銀行、損害保険。

※注2:産業界全体の産業廃棄物最終処分量算出の対象業種:32業種
電力、ガス、石油、石炭、鉄鋼、非鉄金属製造、アルミ、伸銅、電線、ゴム、板硝子、セメント、化学、製薬、製紙、電機・電子、産業機械、ベアリング、自動車、自動車部品、自動車車体、産業車両、鉄道車輌、造船、製粉、精糖、牛乳・乳製品、清涼飲料、ビール、建設、航空、通信。このうち、自動車車体、産業車両、航空、通信については、昨年度から集計。住宅は、建設と重複するため、建設の内数扱いとし、加算していない。

※注3:32業種の1990年度実績値6,098万トンは、同年度のわが国全体の産業廃棄物最終処分量8,900万トン(環境省調べ)の68.5%。なお、日本経団連の数値には、産業廃棄物のうち、上下水道業からの産業廃棄物(主として汚泥)や農業部門からの産業廃棄物(動物のふん尿等)は含まれていない。

以上

環境自主行動計画〔廃棄物対策編〕2003年度フォローアップ調査結果<概要版>
(PDF形式)

環境自主行動計画〔廃棄物対策編〕2003年度フォローアップ調査結果<個別業種版>
(PDF形式、96ページ、631kB)

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