[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

国際会計基準に関する共同声明(仮訳)

2004年4月20日
欧州産業連盟(UNICE)
(社)日本経済団体連合会
英文正文

「国際会計基準に関する共同声明」について

昨今、資本市場を通じた資金移動のグローバル化や経済取引の多様化・高度化に伴い、企業が作成する財務諸表の比較可能性を確保しつつ、国際的に通用する単一の会計基準を整備することが急務となっている。とりわけ、国際会計基準審議会(IASB)の存在感が増しており、その影響が各方面に波及している。
そのため、主に財務諸表作成者である企業の集まりとして、経済界としても、IASBの活動に積極的に貢献していく必要があると認識している。そこで、今般、欧州産業連盟(UNICE)と日本経団連は、会計基準の国際的協調の必要性を支持し、実務上の観点を含め、共同で下記を提言する。

1.会計基準に関する基本的概念

IASBで現在進められている会計基準の検討は、現行基準の基本的概念の大幅な変更につながりかねないが、こうした変更は、財務諸表作成者、利用者、監査人、市場監視当局からの明確なニーズに裏打ちされたものではない。
特に、「業績報告(包括利益報告)」、「金融商品の全面時価会計」、「退職給付会計の見直し」等において、IASBに全面時価主義を採用する意図が見られることを懸念している。
利用者や作成者のニーズや、根本的な概念の変更に伴う経済的影響を精査することなく、全面時価主義的な考え方を採ることには、理論面及び実践面での問題も孕んでおり、経済界は、断固として反対する。
基準設定にあたって、IASBは市場参加者の声に耳を傾けるべきである。

2.国際会計基準審議会(IASB)のガバナンスの改善
(国際会計基準委員会財団(IASC Foundation)の見直し)

現時点において、作成者のみならず、監査人、財務諸表利用者、政治家を含めた世界中が、IASBに対する不満を表明している。
IASBが真の国際組織として認知されるためには、そのガバナンスを改善し、会計基準作成にあたっての検討プロセスを見直す必要がある。具体的には、IASBが作成した基準が各市場で受け容れられるために、市場関係者の意見を適切に汲み上げる体制の構築が不可欠である。
IASBの運営母体である国際会計基準委員会財団(IASCF)においては、2004年2月11日を締切として、運営規則である定款の見直しに関するパブリック・コメントを募集していた。我々は、その改善にあたって有用な貢献を行い、IASBが国際機関たるに相応しい組織となるよう、定款の見直しに対してもコメントを提出した。IASCFにおいては、これらに沿った形で定款変更が行われることを強く望む。

3.会計基準の相互承認の必要性

資本市場のグローバル化を踏まえると、財務諸表の比較可能性を確保するために、会計基準を収斂させることには全面的に賛成する。
一方、国・地域毎に異なる市場構造や会計基準を取り巻く法規制等を前提とすれば、2005年までの短期間にこれを達成することは困難である。
国際的な単一の会計基準を共有するという目的を達成するために、欧州と日本は、公共の利益に資する国際的な会計基準の策定に努力すべきであるが、現状を踏まえ、収斂を達成する前の中間的段階として、相互承認の実現に向けて協力する。

以上

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