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「e-Japan重点計画−2004(案)」に関する意見

2004年5月31日
(社)日本経済団体連合会
情報通信委員会
情報化部会

現在、パブリック・コメントが募集されている「e-Japan重点計画-2004(案)」*に対し、下記のとおりコメントする。
e-Japan戦略が掲げる「世界最先端のIT国家」という目標の達成期限が来年に迫っているが、真に世界最先端のIT国家となるためには、利用者がITの利便性を実感でき、実際にITの利活用が進まなければいけない。したがって、今回の重点計画においては、行政の施策目標を達成するための計画のみではなく、これまでに実施された施策によって実現した制度の利用状況を調査し、利用者の視点からみた具体的な成果指標を明記した計画とすべきである。また、成果指標の達成度等に対して評価を実施し、評価結果を社会に開示するとともに、評価結果に応じて施策内容の変更を適切に行う仕組みを導入すべきである。
さらに、日本経団連として推進を強く要望してきた輸出入・港湾手続のワンストップ化やITS等については、複数の省庁に関連する案件であるため、その進捗が遅れている。このようなケースについては、各施策の目標を極力数値化したうえで、省庁の役割分担、スケジュールなども含めた工程管理を明確にし、IT戦略本部の主導により推進していくことが重要と考える。「2006年以降も世界最先端であり続けることを目指す」ためにも、IT戦略本部がリーダーシップを発揮し、継続的に計画を遂行できる体制とすべきである。
なお、日本経団連としては、e-Japan戦略の目標を達成するうえで、電子政府が最重要であり、世界最先端のベストプラクティスモデルを作っていくことが急務であると考える。したがって、以下では電子政府を中心に意見を述べるが、他にも多数の意見があったことを付け加えておく。

* http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pc/comment_j.html

1.利用者の立場に立った諸手続の電子化の推進

「II−〔1-1〕−4 IT規制改革の推進(15、16頁)」

(1) e-文書イニシアティブの実現に関しては、日本経団連として、本年3月1日に意見書「税務書類の電子保存範囲の拡大を改めて要望する」を発表したところである。「e-文書法」の立案方針や法案の策定においては、原則として、民間に保存が義務付けられている全ての書類を電子保存の対象とするとともに、具体的な要件の設定や運用にあたっては、より多くの企業が活用できるような制度とすべきである。 (15頁)

(2) 企業の従業員等の属性認証について統一的な方策を検討すべきである。電子的手段による資格保有等証明の推進にあたっては、医師、弁護士等の資格保有者だけでなく、企業の従業員等の属性認証に関する府省統一的な解決方策が示されれば、企業の公印管理部門の負担軽減に資すると考えられる。そのうえで、地方公共団体との間の申請手続についても、国と同様の措置が講じられるよう、対応すべきである。(16頁)

2.ベストプラクティスモデルとなる輸出入・港湾手続のワンストップ化の実現

「II−〔1−1〕−5 電子政府・電子自治体の推進(16〜21頁)」

日本経団連が予ねてより主張してきた輸出入・港湾手続のワンストップ化については、複数省庁に提出が必要とされているデータの当該省庁への同時送信と当該省庁間における共有化などを進め、これを業務改革のベストプラクティスモデルとするよう取り組むとともに、海外の先行事例等も参考のうえ、利用者が具体的効果を享受できる成果目標を設定し、そのための省庁間の役割分担やスケジュールなどの工程管理を的確に行う必要がある。また、政官民からなるプロジェクトチームなどの設置も検討すべきである。
併せて、FAL条約(国際海運の簡易化に関する条約)の早期批准を業務改革推進の梃子とし、当面は、採用できない項目数を最小限にとどめるべく努力するとともに、最終的には、採用できない項目をなくすべきである。(17頁)

3.ITSの普及拡大

「II−〔2〕 2006年以降に向けての布石 (53〜60頁)」、「III−4 行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の促進(84〜94頁)」および「IV−3 デジタル・デバイドの是正(117〜120頁)」

(1) 走行支援システム及び安全運転支援システムの推進に関して、ITS世界会議2004でショーケースとして展開される当該システムを、2005年度より順次実用化すべきである。
また、ITSの普及方策の強化に関して、本年のITS世界会議で、官民連携して日本のITSのビジョンを発表し、今後のITSの指針を示すべきである。(88〜89頁)

(2) ユビキタスネットワークサービスの実用化に向けた研究開発に関して、ネットワーク技術の開発にあたっては、端末側(車載、携帯)の技術開発と連携して推進すべきである。(59頁)

(3) 道路交通情報提供の充実に関して、ナビでのカバレージの拡大とリアルタイム情報化を実現する方法として、プローブカー情報の活用が有効であるため、業界で共通に使えるプローブカーの情報整備、推進を2005年度中に着手すべきである。併せて、3メディア対応型VICS車載機の普及拡大に直結する施策の導入も検討すべきである。(88頁)

(4) 障害者、高齢者等の安全で円滑な移動を支援するシステムの研究開発・導入及び標準仕様策定について、本年のITS世界会議でショーケースとして展開される当該システムおよび、愛・地球博における実証実験を第三者機関で評価し、可能な限り早期に、統一された標準仕様を策定すべきである。(119頁)

4.電力線の高速通信の実用化の推進

「III−1 世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成(61〜66頁)」

家庭内の電力線の高速通信への活用は、高速通信を可能とするための有力な手段であり、欧米では、既に実証実験や試験サービスが実施され、一部には商用サービスを開始した国もある。電力線の高速通信への活用を推進するため、電力線の高速通信に関する実証実験の結果を踏まえ、漏洩電波による無線通信や放送等への影響について、実用上の問題の有無を判断する基準を策定すべきである。 (62頁)

以上

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