[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

東京証券取引所
「買収防衛策の導入に係る上場制度の整備等について(要綱試案)」へのコメント

2005年12月2日
(社)日本経済団体連合会
M&Aに関する懇談会

企業がそれぞれの置かれた事業環境に応じて導入する買収防衛策は、株主意見の反映の機会を奪ったり、一般株主・投資者に不測の損害を与えるなど、経済産業省・法務省の「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」(買収防衛指針)で定める条件を満たさないことが外形的に明白である場合を除き、原則として認められるべきである。基本的には、企業が買収防衛策の内容を適切に開示した上で、投資者の自主的な判断など市場における評価に委ねるべきであると考える。少なくとも、上記買収防衛指針の基準をみたす新株予約権や種類株式を用いた防衛策の導入については柔軟に対応すべきである。

このような観点から、11月22日に公表された「買収防衛策の導入に係る上場制度の整備等について(要綱試案)」について下記の通り、意見を述べる。

東京証券取引所
「買収防衛策の導入に係る上場制度の整備等について(要綱試案)」
http://www.tse.or.jp/news/200511/051122_a.pdf

P2 「上場会社に対する買収の実現を困難にする方策が上場会社の子会社によってとられる場合についても、上場会社による買収防衛策の導入があったものとみなします」

上場会社の子会社が導入する買収防衛策は、上場会社の態様(純粋持株会社か事業持株会社か)や、上場会社における当該子会社の重要性によって、上場会社に対する買収への当該方策の影響は大きく異なっている。また、上場会社が子会社を通じて行う合弁事業等においては、その正当な利害調整のため、チェンジ・オブ・コントロール条項等が付されることが通常である。子会社について広く買収防衛策という形で規制をかけることは、これら通常の事業活動に支障をきたすことが懸念される。
このように「買収の実現を困難にする」方策かどうかについては、上場会社の態様や子会社の重要性などを踏まえたきめ細かな事実認定に基づき判断する必要があるため、東証が判断すべき対象はできるだけ限定すべきである。

P4 <1>適時開示ルール「定款の変更に係る開示」

定款の変更をすべて適時開示の対象とすることには慎重であるべきである。現行の適時開示制度においても、重要な定款変更は、重要な決定事項として適時開示の対象とされており、新たな項目を加える必要性はない。
買収防衛策に限らず、全ての定款の変更を開示させ、しかも防衛策としての可能性があるものについて防衛目的の有無を開示させることになると、企業の対応として結果的に防衛効果があるものについては防衛目的が有るとせざるを得ず、投資者が「全ての定款変更は買収防衛策である」と誤解する弊害が生じるおそれがある。「買収防衛目的の有無」の開示は行うべきでない。
また、定款の変更の内容および目的は、株主に対して招集通知の形で最初に提案すべき事項と考えており、また、招集通知や営業報告書の最終校正を行っている時期に適時開示を追加で行うとなれば、上場会社における事務負担が増加することが懸念される。

P6 <3>実効性の確保「(1)留意事項違反の公表」

上場株式の議決権を「相当な程度」毀損するような種類株式、「期差任期制」、「独立性の高い取締役」など不明確な文言が多い。例えば、上場会社と東証とで独立性を巡って見解が相違した場合に、留意事項違反として公表されるおそれがある。
また、違反事例として例示されている事項は、上記買収防衛指針で正当と認められるものすら排除する過剰規制である。例えば、現行法上、2年の取締役の任期の中で全ての取締役の任期が一致していることは稀であり、取締役の解任要件も特別決議である現行商法の下で、ライツプランの導入が認められたにもかかわらず、それすら「留意事項違反」とすることは、事実上、ライツプランの導入を不可能とするものである。また、取締役の解任要件の加重は、発行会社の株主総会の特別決議を経ていることからしても、あえて留意事項違反として取り扱う必要性を感じない。
これらの事例は、削除すべきである。

P7 <3>実効性の確保「(2)上場廃止基準等」

「拒否権付株式(商法222条9項)」の範囲が広すぎる。種類株式を発行する際には、当該種類株主の適正な権利保護のため、種類株主総会決議を要する場合を規定することが通常である。「拒否権付株式(商法222条9項)」として一律に上場廃止対象とするのは過剰規制である。
デッドハンド型でない(多数の株主意思で消却される途が確保されたもの)拒否権付株式であれば、設計によっては株主の権利内容やその行使を過度に制約する防衛策とはいえないものもある。一律に拒否権付株式の導入を制限すべきでない。現状においても、親会社が過半数の議決権を保持したまま子会社が上場しているケースでは、実質的には、拒否権付株式類似の状況が存在しているものといえるが、上場会社の子会社であることを前提に特に問題もなく流通している。拒否権付株式の導入についても、一定の制約はありうるが、拒否権付株式を発行する会社であることを十分開示した上、上場が認められるべきである。
また、拒否権付株式を発行している新規上場会社については、目論見書等による上場時の情報開示の徹底を図ることにより、投資者の保護を図ることとし、最終的には、十分な情報に基づいてなされた投資者の判断に委ねるべきである。

以上
(注:原文の丸付き数字は < > に置換)

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