[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

人間力の発揮を通じて時代を切り拓く

2006年度総会決議

2006年5月24日
(社)日本経済団体連合会

世界では人、モノ、カネ、そして情報が国境を越えて活発に行き交うグローバル競争が一段と激化している。国内では、超高齢社会、人口減少社会の到来が現実のものとなった。これらの状況に一刻も早く対応するため、いま、わが国には、さらなる構造改革と新たな成長戦略が求められている。

わが国がグローバル競争に勝ち抜いていくのは容易ではない。しかし、企業が、活力の源泉であるイノベーションを通じて世界の成長力をとらえ、それを取り入れた経営を行っていけば、経済のさらなる発展は十分可能である。そうした観点から、将来にわたり国を支える産業を創出するとともに、対外戦略を確立し、遂行することが急がれる。わが国の強みである製造業の競争力をさらに高め、併せてサービス産業の質的向上を図るために、絶えざる技術革新と経営改革に努めることが肝要である。

小泉政権の下で構造改革は進展し、企業の努力とも相まって民主導による持続的な安定成長の基盤が整いつつある。しかし、改革はいまだ道半ばである。政府には引き続き、企業の競争環境や国民の意識、行動の変化を踏まえ、小さな政府を目指した改革をさらに前進させることが強く望まれる。構造改革が新たな格差を生んでいるとの指摘も聞かれるが、「結果の平等」を是としてきた国民の価値観が変化し、「機会の均等」と「公正な成果の配分」を求めるようになっていることを認識すべきである。

いま企業人に求められるのは、より良い未来を求めて、変化を恐れず果敢にリスクに挑戦する姿勢であり、わが国社会が伝統的に持つ良さや強みを活かしつつ新しい価値を創造することである。そのために時代を切り拓く若い世代の育成が急がれる。人を育て、人を信じ、人間力を最大限に発揮させる社会や企業の組織・文化こそ、経済社会発展の基盤となるものである。

こうした観点から、日本経団連は、本年度、以下を重要課題と位置付け、その実現に向けて総力をあげて取り組む決意である。その際、政治への働きかけをさらに強め、企業の社会貢献としての政治寄付を促進するとともに、政策本位の政治の実現を支援する。

同時に、企業が自己規律の強化と公正な競争を通じて内外から信頼される存在となるよう全力を尽くしてゆきたい。

1.グローバル競争に挑む企業の力を引き出す

  1. (1) わが国産業の国際競争力の向上に資する税制・法制・会計制度の整備、ならびに資本市場のさらなる整備・強化
  2. (2) 公務員制度改革を含む行政システムの抜本的改革、創意工夫の発揮や新たな挑戦を可能とする規制改革・民間開放の推進、市場化テストの活用等を通じた公共サービスの効率化
  3. (3) 科学技術創造立国に向けた諸施策の推進、特にバイオ、ナノテク・材料、ものづくり、ICT、宇宙・海洋等、重要技術を活用した国際競争力の強化
  4. (4) 国際競争力の基盤をなす物流効率化のためのインフラ整備
  5. (5) 特許制度の国際的調和の推進など知的財産の国際的保護、基本特許が生まれる環境整備、コンテンツを含む戦略的知的財産政策の推進
  6. (6) 民間の活力・自主性を活かした温暖化防止策、循環型社会形成の推進
  7. (7) 戦略的な資源外交・技術政策を基盤とするエネルギー安全保障の強化

2.人口減少社会への対応を急ぐ

  1. (1) 国民的運動をはじめとする少子化対策の徹底
  2. (2) 安心して暮らし子育てができる街づくり、安全で快適な住環境の整備
  3. (3) 女性や高齢者、若者が働きやすく、仕事と生活の調和を図り得る雇用・就業形態の整備、労働法制改革の推進
  4. (4) 質・量の両面で管理された外国人の受け入れとそのための体制の整備
  5. (5) ICTの利活用を通じた行政の効率化と企業の生産性の向上

3.発展の担い手となる人材を育てる

  1. (1) 基礎学力の向上、個人の個性・能力を最大限に伸ばす多様性を重視した教育の実現
  2. (2) 競争力の源泉となる高度人材の育成、とりわけ技術開発の次世代を担う人材の育成・活用
  3. (3) 企業における個々人の主体的な能力伸長とキャリア形成への支援

4.財政の健全性を回復し国民の将来不安を払拭する

  1. (1) 社会保障、地方交付税、公共事業をはじめとする歳出の徹底した見直し
  2. (2) 経済活力を重視した税体系の構築
  3. (3) 持続可能な社会保障制度の確立
  4. (4) 社会保障と税を通じた共通番号の導入

5.地域の自立を促し活力を高める

  1. (1) 地方行財政改革の徹底、道州制の導入推進
  2. (2) 個性ある地域・都市づくりと景観・交通アクセスの改善
  3. (3) 国際観光への取り組み強化
  4. (4) 雇用拡大につながる国内投資の促進とそのための環境整備

6.多面的な対外戦略を確立し遂行する

  1. (1) 新ラウンド交渉推進を通じたWTO体制の強化
  2. (2) EPAの推進、特にわが国にとって重要な東アジア諸国との経済連携の強化
  3. (3) 国際競争にも耐えうる農業の確立に向けた農政改革
  4. (4) 民間外交の展開、顔の見える対外経済協力政策の推進
  5. (5) 対日直接投資の促進

7.内外から信頼される公正な経済社会をつくる

  1. (1) 経営トップの強力なリーダーシップによるコンプライアンス体制の確立、維持
  2. (2) 透明性や説明責任を踏まえ、社会的責任(SR)を重視した経営の遂行
  3. (3) 人間尊重と長期的視野に立った経営の追求、信頼関係を基礎とした良好な労使関係の堅持
以上

日本語のトップページへ