特に、米国とEUに関しては、FTA/EPAによって関税引き下げの実現が期待できる状況にないため、WTOに基づく引き下げを期待する。また、両国は、日本からの鉱工業品の輸出に占める割合が大きく、また、日本企業が進出する海外生産拠点を通じた輸出量も多い。
カナダ、韓国、豪州に関しては、先進国であるにもかかわらず、非農産品の平均譲許税率(2005年)は、カナダが5.3%、韓国が10.1%、豪州が11.0%と、我が国の2.3%と比較して、高関税が維持されている。なお、米国は3.2%、EUは3.9%。
急速に発展を遂げており、日本からの輸出品への需要の拡大が見込まれる一方、高関税が維持されているとともに、種々の非関税障壁が問題となっている。非農産品の平均譲許税率(2005年)は、ブラジルが30.8%、インドが34.3%。なお、中国はWTO加盟約束に基づき、2005年には譲許税率が9.1%まで低下しているものの、非関税障壁が多く残存する。
日本と地理的に近く経済関係が緊密で、将来的に、成長が期待される。また、特に、わが国企業が長年にわたる事業展開を通じ強固な相互補完関係を構築してきている重要な市場。比較的高関税も維持されている。
FTA/EPAの締結が進展すれば、一定の改善が期待できるが、FTA/EPAでは、原産地規則等に関連する各種証明の取得等の手続きの煩雑化と、これに伴うコスト増が発生するため、WTOによる市場アクセスの改善が望ましい。
メキシコ、南アフリカは、ブラジルと並び、ITA(情報技術協定)に加盟していない。鉱山機械に関して、メルコスール諸国・チリ・ペルー及び南アフリカの需要が著しく伸びている。長期的には、EU・米国・アセアンと同様、重要な相手国になりうる。
自動車・自動車部品、家電、機械、IT製品、鉄鋼、碍子、塗料、樹脂、化学品。特に、自動車、自動車部品、家電に回答が集中した。
国ごとの代表的な品目と関税率は、下記の通り。
EU等において、恣意的または過失により、本来適用すべき関税分類ではなく、別の関税項目に分類され、課税される例がみられる。
液晶ディスプレイモニター
EUでは、IT製品と機能が融合した家電に対し、ITA(情報技術合意)でゼロとされているIT製品ではなく、高関税が維持されている家電(14%)に分類している。パソコンの液晶ディスプレイモニターについては、IT製品を対象とするITA(情報技術協定)において0%とされており、EUもこれに加盟しているが、パソコン用としても多機能液晶ディスプレイモニターについても、テレビのモニターとして14%を課税している。
プリンター
EUでは、デジタル複合機が「複写機」に分類され、6.0%が適用されているが、ITAでは、プリンターは無税とされている。IT製品に適用するというITAの趣旨に鑑みると、デジタル複合機は複写機ではなく、プリンターに分類すべきである。
こうした恣意的な分類のインセンティブを小さくするためにも、フォーミュラの適用を通じた関税の引き下げが必要である。
インドネシアにおいて、デジタルカメラ(ITA対象)に2004年1月より、15%が課税。WTO紛争解決手続きへの付託も検討が必要。
EUの動画機能付デジタルカメラ(現在はITA対象商品として無税)を、カムコーダに分類し、課税を検討。
中国では、大型TV用の液晶パネル(プラズマディスプレイモジュール)に適用するHSコードがこれまで複数存在しており、解釈が担当官等により異なっていた。2005年にプラズマディスプレイモジュールに適用すべき関税分類が定められ、2005年の3%から段階的に引き上げられ、最終的に15%が課税されることとされた。しかしこれまでの分類では、場合によって無税または低関税とされていた。
インド、ブラジルにおいては、関税以外に、追加関税、相殺関税といった各種の課税の上乗せが行われており、実質的な関税引き下げの効果を損なっている。