[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「日・インドネシア経済連携協定(EPA)の早期締結に期待する」提言

2006年6月20日
(社)日本経済団体連合会

日・インドネシア経済連携協定(EPA)については、2005年7月以来、本年4月まで計4回の政府間交渉が行われてきた。また、先般、経済財政諮問会議で示された「EPA交渉に関する工程表」においては、インドネシアについて、「本年夏頃までに交渉の主要点について実質的な妥結を目指す」とされた。
しかしながら、この目標を達成する上からは、インドネシアにおいて、投資法の早期成立ならびに労働関係法規の整備が望まれる。一方、日本側は、人の移動等の分野において、インドネシア側のリクエストに十分に応えるオファーを明示することが重要である。
こうした現状に鑑み、アジアにおいて戦略的にも重要な日・インドネシア経済関係をさらに強固なものとし、真に互恵的なEPAを早期に締結する観点から、両国政府に対し、以下、重点5項目の実現方を要望したい。

(1)物品貿易

物品貿易の自由化は、インドネシア産品の対日輸出増につながることが期待されるほか、インドネシアの現地企業ならびに同国に進出しているわが国企業にとっても、関税負担の軽減に加え、原材料・部品の調達先や製品の販路の選択肢が広がるという点で、大きなメリットがある。また、インドネシアの生産・輸出拠点としての魅力向上、国際競争力強化にもつながる。このため、鉄鋼製品、自動車、電子・電機機器、化学等を含む物品の面で、WTO(GATT第24条)に整合的な高いレベルでの関税撤廃を実現し、二国間貿易の自由化が進展することを期待する。

(2)サービス貿易

製造業関連サービスについて、インドネシアの現行規制が将来悪化せず安定性が確保されることは、新規企業が投資を行う上で不可欠な要件である。一方で、インドネシアでは、小規模小売やインフラ等が内国民待遇等の例外分野とされ、外資100%が認められていない。また、外資100%が認められている分野においても、操業開始後15年以内に株式の一部をインドネシアの個人または法人に譲渡することを義務付けられるケースもある。こうした外資の投資形態や出資比率の制限を緩和・撤廃すべく、一刻も早い投資法の成立・施行およびネガティブリスト等関連規程・規則の見直しにより、喫緊の問題が改善されることを期待する。併せて、リースやコンビニ・フランチャイズ等の分野において、追加的な規制緩和が望まれる。
一方、わが国経済界としても、製造業関連サービス等の投資促進に資する協力を積極的に行い、インドネシアの経済発展や産業高度化に貢献することが求められる。

(3)人の移動

わが国では少子高齢化の進展や2007年問題の顕在化を受け、若年者や女性、高齢者等を積極的に活用する施策がとられつつある。しかしながら、こうした施策にもかかわらず、一部の製造業、サービス業等の現場において、熟練技術・技能労働者等、質の高い人的資源の不足が懸念されている。このため、現在は専門的・技術的とみなされていない分野についても、質の高い技術・技能を有する外国人材の受入れ範囲を見直すことが喫緊の課題となっている。
こうした中、日・インドネシアEPA交渉においては、インドネシア側より、看護・介護や旅行・ホテル業に係る人材の受入れ、さらには、わが国が実施する外国人研修・技能実習修了後の就労等について要望が出されている。
よって、わが国としては、優秀な研修・技能実習修了生や質の高い技術・技能を有する人材の就労を許可する制度を整備するととともに、研修・技能実習受入れ対象職種の拡大や現行の研修・技能実習制度の期間の見直し、さらには、ODA活用による送り出し国での日本語教育など人材育成面の経済協力について、積極的に対応すべきである。

(4)資源・エネルギー

日本にとって、インドネシアは最重要のエネルギー供給国の一つである。インドネシアから日本へのLNG輸出契約の多くが2010年に期限を迎える中、インドネシア政府は先般、天然ガスの国内への優先的供給を検討する方針を示唆した。仮に2010年以降の契約が更改されない場合、最大の輸入国であるわが国エネルギー安全保障等に影響を及ぼすことが懸念される。EPAを通じて、政策変更に対する事前通知等を促すことは、政策や法制度等の透明性、信頼性向上につながるというメリットがある。
一方、日本としても、インドネシア国内エネルギー利用に関するビジョン策定等に協力することを通じて、石炭等エネルギーの効率的利用を推進する環境づくりを支援することが重要であろう。併せて、インドネシア国内のエネルギー供給増加・有効活用に加え、代替エネルギー開発や省エネに関する協力、事業化支援を積極的に行い、インドネシアの持続的な経済発展や環境問題の改善に貢献することが求められる。

(5)法令運用ならびに行政諸手続き

投資先としてのインドネシアの魅力を向上させ、日本からインドネシアへの投資をさらに拡大するためには、法令運用の公平性・厳格性・予見可能性を高めることを通じて、外資が安心して投資・ビジネス活動を展開できるよう行政手続きを改善することが求められる。併せて、税務分野においては納税・申告回数の削減、通関分野においては港湾荷役・銀行・税関業務や他法令確認等、輸出入関連手続きに要する時間を短縮するなど、行政諸手続きを合理化・効率化することが望ましい。
また、これらの点については、既に両国官民で構成される「官民合同投資フォーラム」を通じた日本側の幅広い支援が行われている。日・インドネシアEPAにおいても、同フォーラムを活用しつつ、ビジネス環境整備の枠組みを盛り込むことが重要である。

以上

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