[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「衛星放送の将来像に関する研究会」報告書案に関する意見

2006年8月28日
(社)日本経済団体連合会
情報通信委員会
通信・放送政策部会

1.総論

〜「はじめに(P.7〜10)及び第III章 衛星放送の将来像(P.53〜)」について

ブロードバンド・サービスの急速な普及、デジタル化等の技術革新を背景に、IP化や通信・放送の融合が進み、コンテンツ提供手段が多様化しメデイア間の競争が激しくなるなど、衛星放送をめぐる環境が大きく変化している。このような時点での衛星放送をめぐる状況を踏まえ、その将来像について総合的な検討を行ったことは時機を得ている。また、衛星を「放送におけるフロントランナー」と位置づけ、技術進歩の利用者への還元、柔軟なビジネス展開を可能とする制度変更を検討の主要な柱として据えている点も高く評価できる。
一方、衛星放送の具体的な将来像については、その広帯域性、一斉同報性等の比較優位は依然として残るとしているものの、当面の既存事業の抱える課題への対応が中心で、他のメディアに対してその優位を活かし、衛星放送が存在感を発揮できるような具体的な将来像の提示は十分になされていない。衛星放送については、今後、通信・放送の全体のビジョンの中で、技術革新の状況や衛星放送コンテンツの普及に向けた他のメディアとの連携・融合も視野に入れつつ、ユーザー(視聴者)や潜在的なサービス提供者に分かるよう形で、明確な将来像が提示されることを期待したい。

2.各論

(1) 「第III章(3)新たなBSデジタル放送用周波数の利用の在り方 (1)利用の是非、(2)利用方法、(4)採用する放送方式(P.76〜)」について

BSデジタル放送用に新たに利用可能となる周波数については、早期にユーザー(視聴者)の多様で新たなニーズに応えられる利用のあり方を優先すべきである。その点で当該周波数を留保することは適当でないとする報告書案の考え方は妥当である。
また、放送サービスの高度化や多様化に先鞭をつけてきた衛星放送の役割を考えると、報告書案で、「H.264/AVC映像符号化方式及びDVB-S.2伝送符号化方式等の新たな放送方式を加えて複数の方式を採用することが適当」(P.82)との考え方が示された点は重要である。
加えて、「採用する放送方式については、放送事業者が視聴者ニーズに柔軟かつ迅速に対応できるようにするために、技術中立性の観点から、基本的には、放送を行おうとする者がそれぞれ採用する放送方式について選択することが可能である形が望ましいと考えられる」(P.82)としている点も妥当である。このように新規参入事業者の経営判断に任せる新たな方向性と枠組みが示されたことを高く評価する。
今後、本報告を具体的な施策に移す段階で、上記の方針が確実に具体化され、新技術を通じた通信・放送連携サービスなど、新たな市場創造へとつながることを期待したい。

(2) 「第III章(3)新たなBSデジタル放送用周波数の利用の在り方 (6)マスメディア集中排除原則(P.86〜)」について

クロスメディア環境において、衛星の全国一斉同報等の特色をより活かし、衛星放送が地上放送とは異なった魅力あるコンテンツや新たなサービスを、ユーザーのニーズに応じて迅速に市場に投入するためには、ある程度の規模の経済性を確保するとともに、新たなBSデジタル放送等では従来の放送事業者以外からの新規参入を促進し、多様な経営形態や他のメディアとの融合・競争を含めて自由にサービス競争が進展する環境を整備することが重要である。
そのためには各種規制手続きの一層の簡素化と同時に、衛星放送のマスメディア集中排除原則の大幅緩和が必要であるが、報告書案において、(1)「(BSデジタル放送が)有料でサービスを提供する場合については、CS放送とのバランスを踏まえ、マスメディア集中排除原則を緩和することも考えられるところ、(中略)引き続き検討することが必要である。」、(2)「H.264/AVC映像符号化方式及びDVB-S.2伝送符号化方式等新たな放送方式によるBSデジタル放送については、(中略)マスメディア集中排除原則については、既存のBSデジタル放送よりも大幅に緩やかなものにすることが適当」、(3)東経110度CSデジタル放送を含むCSデジタル放送のマスメディア集中排除原則の大幅な緩和を行うことが適当としている点(P.100〜101)は、その方向性は妥当であり、早期に施策に反映する必要がある。
なお、マスメディア集中排除原則の緩和の結果、独占的な市場支配力による非競争的な行為が生じないよう、適切な競争環境(事業者数、競争ルール)を維持するための枠組みも必要である。

以上

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