文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会
「平成20年度・中間まとめ」に対する意見

2008年11月10日
(社)日本経済団体連合会
知的財産委員会 企画部会

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会「平成20年度・中間まとめ」に関し、法改正に向けて何らかの方向性が示されている、(1)私的使用目的の複製の見直し、(2)リバース・エンジニアリングに係る法的課題、(3)研究開発における情報利用の円滑化―の3点について、知的財産委員会企画部会として、以下の通り意見を提出する。

第2節 私的使用目的の複製の見直しについて

昨年公表された私的録音録画小委員会「中間整理」において、違法複製物、違法サイトからの私的録音録画について、著作権法第30条の適用除外とする方向性が示された点は評価するところであるが、業務用アプリケーションソフトウェアや一部のゲームソフトをはじめとするプログラムの著作物についても、ネットワーク上における違法コンテンツの流通により正規市場の成長が阻害され、甚大な経済的被害により、ビジネスの発展に問題が生じている状況にある。
今回の「中間まとめ」では、著作権法第30条にかかるプログラムの著作物の取り扱いについて、引き続き検討することとされているが、今後の検討にあたっては、プログラムの著作物をめぐるビジネス環境の実態を踏まえ、違法複製物であるかどうか利用者が認識できる仕組みの整備や、社会的啓発・教育などの利用者保護の取り組みを官民が連携して進め、その上でプログラムの著作物を私的複製の許容範囲から除外することについて検討し、権利者の権利が適切に保護されるよう早急に検討を進めるべきである。

第3節 リバース・エンジニアリングに係る法的課題について

今日の情報通信社会では、脆弱性の発見や相互運用性の確保など情報通信機器等の正当な利用の目的に照らし、一定の範囲内でのリバース・エンジニアリングは認められるべきであり、今回の「中間まとめ」において、(1)相互運用性の確保、(2)障害の発見等の目的で行うリバース・エンジニアリングについて、一定の要件の下で権利制限を行うことが適当とされたことを評価する。ただし、具体的な法制化にあたっては、解析されるプログラムの権利者の不利益にも十分に配慮し、(1)(2)のそれぞれの目的に応じた要件が個別に定められることを期待する。
今後、上記以外の目的で行うリバース・エンジニアリングにかかる権利制限について検討することとされているが、検討にあたっては、先行技術開発のインセンティブの確保など、産業政策上の観点をはじめ、さまざまな要素を考慮した上で、社会、産業の発展と権利者の保護のバランスを図ることが重要であり、権利制限は権利者の利益を不当に害しない合理的な範囲内において講じられるべきである。

第4節 研究開発における情報利用の円滑化について

情報解析分野の研究開発の過程で行われる著作権法上の複製について、一定の条件の下、権利制限を行う方向性が示されたことを評価する。
今日の研究開発は、オープンイノベーションの広がりとともに、産学連携による研究開発や、さまざまな研究主体が集まって行われる研究開発など、その形態も多様化してきており、その意味において、今回「非営利要件を求めない」とされたことは妥当と考える。
今後、その他の研究開発分野に関する権利制限について、引き続き検討することとされているが、検討にあたっては、研究開発の実態を踏まえ、大学や企業等さまざまな主体による円滑な研究開発を促す観点から、権利者の権利を不当に害しない合理的な範囲内において権利制限がなされるよう検討すべきである。

以上

日本語のトップページへ