政策を総動員して成長軌道に回帰する

− 2009年度総会決議 −

2009年5月28日
(社)日本経済団体連合会

今、世界は未曾有の危機に直面している。国際的な金融システム不安はいまだ収束する様相を見せず、世界中のあらゆる地域で実体経済に深刻な影響を及ぼしている。各国ともに過去に類例をみない大規模な経済対策を矢継ぎ早に打ち出し、国際的な連携を通じた金融の機能強化・安定化策も採られているが、いまだに立ち直りへ明確な道筋はみえない。

日本もまた、世界不況という荒波の直撃を受けている。雇用への不安に加えて、急速な少子化・高齢化、深刻な財政赤字、そして社会保障制度に対する不信とが相俟って、国民は将来への展望を失いかけている。

かかる難局に怯むことなく、こういう時こそ前例に囚われず、将来を見据えた大胆な経済政策を速やかに実行するとともに、不退転の決意で経済社会の構造改革を推進しなければならない。待ち受ける道は険しいが、日本の潜在力を引き出し、希望の国を造り上げるべきである。

経済界は持続可能で活力ある経済社会を目指し、総力を結集して以下の諸課題に取り組む。この国の再生に向け、各界各層の協力を得つつ、われわれは改革の先頭に立つ覚悟である。

1.当面の困難を克服する

  1. (1) 日本版ニューディールを推進して成長力強化に資する国家的プロジェクトを迅速に実施し、需要を喚起する
  2. (2) 経済の底割れを回避するための危機管理として経済社会のセーフティネットを充実強化する
  3. (3) 政労使の一致協力した取り組みにより雇用の安定と創出を図る
  4. (4) 国際金融市場の機能強化・安定化と東京市場の活性化を図る
  5. (5) 規制改革・民間開放を徹底する
  6. (6) 政策を軸にした政党支援を通じて、政治改革の実現を働きかける

2.成長の糧となる堅固な基盤を整備する

  1. (1) 実効ある少子化対策に取り組むとともに、世界に先駆けて少子化・高齢化・人口減少社会にも対応した成長モデルの確立を目指す
  2. (2) 持続可能な社会保障制度を確立し、消費税を含む税制抜本改革と財政健全化を一体的に進める
  3. (3) 法人税制や経済法制の見直し、国際標準化政策などを戦略的に推進するともに、規制緩和等を通じて対日直接投資の促進を図る
  4. (4) 人材育成や教育の充実、有能な外国人材の活用、産学官連携を通じてイノベーションを加速化し、産業競争力強化を図るとともに、新規事業や起業を促進する
  5. (5) 総合的な交通インフラなどの社会資本を効率的かつ戦略的に整備するとともに、積極的な観光振興を通じて地域経済の活性化につなげる
  6. (6) 知的財産政策を推進して、国際競争力を強化する
  7. (7) 戦略的な資源外交でエネルギーの安全保障を図る
  8. (8) 農業の活性化・競争力強化等に取り組み、食料の安定供給確保を図る
  9. (9) ICT、宇宙・海洋、医療などの先端的分野の科学技術開発と利活用を推進する
  10. (10) ODA等を通じた機動的な国際協力の推進や経済連携協定の拡大・深化を図るとともに、WTOドーハラウンド交渉の早期妥結によって断固として保護主義を回避する

3.希望の国を目指して前進する

  1. (1) 自立した地域経済の確立を図って東京一極集中を是正するとともに、道州制の推進を図る
  2. (2) 電子行政・電子社会を実現し、共通コードの導入等の効率的な行財政システムを構築する
  3. (3) 低炭素社会の実現に向けて、革新的な環境・エネルギー技術の開発・普及を促進するとともに、公平で実効ある地球温暖化防止の枠組みを構築する
  4. (4) 東アジア経済統合の推進と域内の有効需要創造に資する戦略的な国際協力を展開する
  5. (5) 全員参加型・多文化共生型社会の構築、快適な住環境づくり、働き方の多様性や仕事と生活の調和を推進する
  6. (6) 企業倫理の確立、社会的責任の遂行に全力を傾注する
以上

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