震災復興に向けた緊急提言

〜一日も早い被災地復興と新たな日本の創造に向けて〜

2011年3月31日
(社)日本経済団体連合会

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わが国はいままさに国難に直面している。全国民が一致団結し、災害からの早期復興と新しい日本の創造に取り組んでいかなければならない。

最も重要なことは、スピード感を持って被災者支援、被災地復興、原子力問題の早期収束、そして、日本経済の立て直しに国を挙げて取り組むことである。

そのためには、政治の強いリーダーシップが不可欠である。

経団連では、去る3月16日、被災者の生活ならびに被災地の産業・経済の一刻も早い「復旧」に焦点をあてた「未曾有の震災からの早期復旧に向けた緊急アピール」を関係方面に建議した。

今後は、被災地を中心とする「復興」への取り組みが重要となる。これを進める上で、政府においては、強力な指揮命令権を持つ司令塔を確立し、被災地の人々の声を十分に反映した形での、早期復興と新しい日本の創造に向けた「基本法」ならびに「基本計画」の策定等を急ぐべきである。

あわせて、経済界としても、サプライチェーンの早期復興と産業基盤の維持をはじめ、日本経済の再生に全力で取り組む所存である。

1.早期復興に向けた強力な体制整備

  1. (1)政府における強力な指揮命令権をもった司令塔の確立
  2. (2)「基本法」(東北地方太平洋沖地震災害復興に関する基本法)の早期制定
  3. (3)国の施策の現地における一元的実施及び国と地方公共団体との連携強化
    • 「震災復興庁(仮称)」の設置、道州制の導入も視野に入れた自治体間協議(県間および基礎自治体レベル)の促進、など

2.新しい地域と街づくり

  1. (1)各種基本計画(広域復興基本計画、広域インフラ整備計画等)の策定・実施
  2. (2)都市復興の円滑化
    • 復興都市計画の速やかな決定と実施、私権制限によるがれきの除去・建築制限、災害廃棄物の円滑な処理、住宅再建の迅速化、地場産業の復興、各種施策の推進に必要な税・財政・金融上等の支援措置、復興特区やPFI手法の大胆な活用、など
  3. (3)都市の安全・安心の確保
    • 防災・減災に関する技術の利用促進、など

3.産業復興

  1. (1)広域産業復興計画(含 農林水畜産業)の立案と実施
  2. (2)放射能風評被害防止への迅速な対応(含 適切かつ迅速な情報公開、外国政府・国際機関への働きかけ)
  3. (3)事業活動の維持・復旧
    • 建築物再建の迅速化、被災事業者に対する支援(農林水畜産業者、建設業、中小企業等)、復旧・復興のための諸規制・許認可手続きの緩和、など
  4. (4)被災者・被災企業支援等のための税制措置
    • 個人・法人の申告・納付期限に係る柔軟な対応(指定範囲拡大、期限延長)・被災代替資産の取得に係る特例・新規投資促進等、個人の平成22年分の所得に対する雑損控除の適用、法人の震災損失の繰戻還付、など
  5. (5)金融面での対応
    • 日本銀行による強力な金融緩和の継続、被災地を中心とする中小企業に対する資金繰り対策、政府系金融機関による緊急融資枠の拡大、など
  6. (6)会社法制等における対応(含 23年3月以降の決算会社)
    • 有価証券報告書等の提出、決算発表の時期や監査上の取扱い、株主総会の開催時期・開催手続・議事運営等に関する柔軟な対応の認容、など

4.被災地を中心とする雇用の維持・確保

  1. (1)地元雇用を創出する新たな復興事業の早期実施
  2. (2)企業の雇用維持努力に対する支援
    • 被災事業主を対象とした雇用調整助成金等の拡充、など
  3. (3)失業者の生活安定の確保と早期の再就職支援
    • 被災者への雇用保険給付等の拡充と求職活動期間中の住居の確保、被災地における労働相談窓口の利便性の向上(ワンストップサービス)、など
  4. (4)雇用機会の提供
    • 被災者を雇入れる(含 新卒者)企業に対する支援、復興のための公共事業実施時に被災者の優先的雇用を促す取組み、など
  5. (5)円滑な労働保険給付等の対応
    • 申請手続きの簡素化・給付の迅速化、被災地域の事業主に対する労働保険料の減免措置、など

5.復興財源確保と財政健全化の両立

  1. (1)復興対策に必要な予算措置等の早期策定(含 補正予算)
  2. (2)中長期的な財政健全化方針の堅持と復興のためのコスト負担に係る国民的合意形成
  3. (3)復興財源のあり方の検討
    • 予備費の活用、2011年度予算の組み替えによる財源の捻出、それでもなお不足する財源については臨時の国債発行や時限的な増税を検討、など

※なお、関東・東北地域を中心とする当面の電力需給対策等として、別紙の取り組みが求められる。

以上

別紙

電力・エネルギー対策

1.当面の電力供給対策等

  1. (1)電力供給力の拡充
    1. 既存発電設備の最大限の活用
      • 停止中の発電所等の復旧・定期検査からの立ち上げの円滑化、火力発電所の稼働率向上や自家発電設備の柔軟な活用等に必要な環境・保安規制の一時的緩和、水力発電に係る取水制限の一時的緩和、など
    2. 新規設備の導入促進
      • 新規発電機材の導入・自家発電設備の新設の促進、新規電源(火力・水力、自家発電等)の設置に伴う許認可の緩和、環境アセスメントの簡素化と環境規制の一時的緩和、など
    3. 燃料調達の円滑化
      • LPGや石油製品備蓄義務の弾力化、発電用燃料への課税減免、など
  2. (2)節電・需要平準化対策
    1. 産業・業務対策
      • 省エネ設備の普及促進支援、フレックスタイム制をはじめ労働時間管理制度の弾力的運用、自家発電を持たない病院や在宅医療者への自家発電機材・バッテリーの導入支援、など
    2. 家庭対策
      • 節電や省エネ機器の普及に対するインセンティブの付与、テレビによる電力需給状況のリアルタイム通知、など
    3. 公的部門における節電
  3. (3)その他
    1. 不急の送電線移設工事の繰り延べ
    2. 再生可能エネルギーの全量買取制度、地球温暖化対策税の導入先送り、など

2.抜本的対策の検討

  1. 原子力発電事故の徹底した原因究明と再発防止
  2. エネルギー・気候変動政策の国民的な議論の実施
  3. サマータイム制度やより大胆なタイムシフトの導入検討
  4. 今後のライフスタイルのあり方に関する国民的議論喚起

3.「電力対策自主行動計画(仮称)」の策定・実行

以上

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