東日本大震災における
経済界の被災者・被災地支援活動に関する報告書

−経済界による共助の取り組み−

2012年3月
日本経済団体連合会
社会貢献推進委員会
1%(ワンパーセント)クラブ

はじめに

東日本大震災から1年が経過した。大地震・大津波に原子力発電所事故が重なり、今回の震災はわが国経済社会に極めて甚大な被害と爪痕を残した。多くの人命が奪われ、住まいはもとより、働く場、コミュニティごと流された地域も多い。わが国のサプライチェーンが寸断され、ひいては世界経済にも影響を及ぼした。さらに、原子力発電所事故に伴う計画停電やその後のエネルギー需給のひっ迫、放射能汚染問題は被災地にとどまらない日本全国に及ぶ問題となった。

今回の震災に直面して、我々はいくつかの重要なことを再認識した。

ひとつは「自然との共生」である。人間は自然から多くの恵みを得て、知恵と技術を活かして豊かな生活を享受してきた。しかしながら、時として、自然の猛威や自然への畏怖の念を軽視してはいなかったか。常に自然との共生を図る努力を怠ってはいなかったか。

ふたつめは、人間の「絆」である。震災後、日本全国から、多くの寄付金や支援物資とともに、様々な励ましが寄せられた。震災直後からボランティアとして現地に入った市民も数多い。支援の輪は国内に止まらず、アメリカのトモダチ作戦をはじめ、世界中から数え切れないほど多くの支援や暖かいメッセージをいただいた。

そして最後に、「共助」の精神である。災害発生時の被災者・被災地支援は、いうまでもなく政府・地方自治体を中心とした「公助」が「自助」を補う重要な役割を果たす。しかしながら、国難とも言える大規模な自然災害になればなるほど、「自助」「公助」だけではなく、政府・地方自治体、企業やNPO/NGOなどの様々な組織や市民が、連帯を強めお互いに助け合う「共助」の精神が、より重要となる。

今後大事なことは、今回の震災の記憶を決して風化させることなく、被災地の復興に向けて、各々の組織・個人が自らできることを継続して取り組むことである。人間は過去の自然災害から様々な教訓を得て、改善を図り、その反省と教訓は様々なかたちで現在に活きている。今回の震災においても、各々の関係者が各々の立場・観点から、今回の震災における対応を振り返り、次にいつ起きるかもしれない大規模自然災害に備えることが必要である。

このような認識を基に、経団連社会貢献推進委員会ならびに1%(ワンパーセント)クラブでは、数多くの企業・団体が行った多岐にわたる被災者・被災地支援活動の概要を、より多くの関係者の間で幅広く共有されることを願って、報告書として記録に残すことにした。

なお、本報告書を作成するにあたり、2011年10月から11月にかけて、経団連の全会員企業・団体、1%クラブの全法人会員を対象に、「東日本大震災における被災者・被災地支援に係るアンケート」を実施した。ご協力いただいた会員各位に改めて感謝申し上げる。

その結果を第2編のデータ集と第3編の事例集の形で示している。第2編のデータ集では、企業・団体が行った寄付、物資・サービスの提供、社員の被災者・被災地支援活動への参加等の支援活動に係る数値を集計し、分析を行った。ここでは、毎年行っている「社会貢献活動実績調査」に準じて、支援先から対価を受け取らずに行う活動について集計した。他方で、企業の支援活動は本業の事業活動の一環としても幅広く展開されている。対価の有無に関わらず、支援効果という観点では、本業を通じた支援も見逃すことのできない重要な側面である。また、最近の企業の社会貢献活動のひとつの特徴として、本業とのシナジーを生む活動が増えている。そこで、第3編の事例集では、社会貢献活動のみならず、社会インフラの早期復旧や生産・サービスの継続、被災地産品の販売を通じた協力等についても広く紹介している。

本報告書を多くの方々に手にとっていただき、経済界による支援活動の概況を理解していただければありがたい。また、今回の支援活動で浮かび上がった課題や企業・団体における様々な取り組み事例を整理することで、企業・団体はもとより、政府、地方自治体、NPO/NGOなどの関係者が今後の災害対応を検討する際の一助となれば幸いである。

2012年3月
日本経済団体連合会
社会貢献推進委員会 共同委員長古賀信行
社会貢献推進委員会 共同委員長/1%クラブ会長佐藤正敏

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