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日本経団連 CSRインフォメーション(第4号)

発行:(社)日本経済団体連合会 社会本部
2005年7月8日

◆ISO SRに関するワーキンググループにおける検討状況について

1.規格策定グループにおける論点

3つの規格策定グループ(ITG4〜6)の論点と日本産業界からのコメントをご紹介します。

(1)ITG4(ステークホルダー・エンゲージメント/コミュニケーション)

ITG4で最も問題視されているのは、議論プロセスの透明性です。日本のエキスパートは産業界を含め全員がメンバー登録していましたが、ITG4事務局の手違いにより、議論に参加できたのはITG4の「論点整理案」が出された6月13日の2日後でした。しかし、ITG4に参加していた他国のエキスパートから「論点整理案が誰によって、どのような議論を経てとりまとめられたのかわからない」と、プロセスを疑問視する声があがっていました。そこで、日本産業界エキスパートから、ITG4におけるコミュニケーション欠如の問題を指摘し、透明な議論を求めるコメントをしたところ、各国エキスパートから強い支持を得ました。
さらに、論点整理案における定義は、(1)コミュニケーションを組織からの一方的な情報提供としてとらえ、(2)エンゲージメントを「聞いてもらえるステークホルダーの権利と組織行動に関する組織の説明義務」とし、問題の多いものでした。日本産業界エキスパートからは、(1)ステークホルダーとのコミュニケーションは双方向性のもの、(2)エンゲージメントはステークホルダーが相互に、自発的に協力関係を目指すものであることを述べました。また、(3)「エンゲージメントは、双方が許容できる成果を達成するための、ステークホルダーのグループによる自発的な協力・協働の行動」という定義(「持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)」が提案)を支持するコメントを出しました。

(2)ITG5(SRの定義、範囲、原則、対象)

ITG5では、「論点整理」の起案グループが設けられ、多様な意見を民主的にとりまとめた資料が出されましたが、さまざまな課題や定義の列挙に留まっており、短期間で内容を収斂させることは困難のように見受けられます。日本の産業界エキスパートからは、SRの定義をさらに精査して進化させることの必要性を述べるとともに、SRの原則や対象について、より実用的かつ多面的な整理をすべきであるとコメントしました。

(3)ITG6(組織への適用)

ITG6では、WGで作成するガイダンス文書は、マネジメントシステム規格(MSS)か否かという議論が再燃しました。MSSを主張する規格協会関係者や消費者団体に対して、より実用的なガイダンス文書を求める産業界やGRI(Global Reporting Initiative)などとの間でのやりとりが続きました。日本産業界エキスパートからは、SAG(高等諮問委員会)が2年かけて行った議論を尊重し、SAG勧告、TMB決議、NWIP(新規作業項目)に基づいて「第三者認証を目的としないガイダンス文書」作成に向かって前進することを訴えました。
しかし、ITG6事務局の論点整理第1次案は、MSSでないことは合意したとしながらも、異なる組織に共通する実用的なガイダンスとするならば、MSSに戻ってこざるをえないとするものでした。これに対して、日本産業界を含め複数のエキスパートから「ガイダンス文書構成案」が提案されました。これらをたたき台にしながら、規格策定グループ(ITG4〜6)の幹事が「ガイダンス文書構成案」をとりまとめ、7月末までにWGに提案することになっています。

2.日本産業界からのガイダンス文書構成案の提案

規格策定グループにおける議論を踏まえ、日本産業界エキスパートと社会的責任経営部会WGのISO対応チームでは、第1回WG総会で説明した日本提案をたたき台に、実践的で実現可能なガイダンスとなるようコンセプトをブラッシュアップし、ITG5と6に提案しました。
「プラットフォーム + 引き出し」モデルと名づけたガイダンス文書案は、パートI 「普遍的かつ包括的なガイダンス」、パートII 「ケーススタディと実践」 の2つのパートから構成されています。パートI は、あらゆる組織がSRを実践していく上での普遍的な原則を示すプラットフォームとしての役割を果たします。パートII は、組織の種類毎に、その社会的役割を定義し、SR活動を実践していく上でのガイダンスや実践例を入れた引き出しとすることを提案しました。

日本産業界からのガイダンス文書構成案の提案(英文)は、日本経団連のホームページでご覧いただけます。

以上

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