さる5月15日〜19日、ポルトガルのリスボンで、ISO(国際標準化機構)のSR(社会的責任)に関するワーキンググループ(WG)第3回総会が開催され、55カ国、26国際機関から約320名(オブザーバー含む)が参加しました。
今回の総会は、規格の設計仕様書(DS)に沿って作成された第1次作業文書(WD1)に対して事前に寄せられた2200に及ぶコメントの論点を整理・議論し、第2次作業文書(WD2)の作成に向けた道筋を明らかにすることを目指しました。第1回総会から15ヵ月を経て、WGのエキスパート間に、DSに盛り込まれた趣旨が次第に行きわたり、DSに沿った内容の実質的検討が開始されました。
この討議の中で、3月8日に提案した日本産業界エキスパートの規格案が大きな役割を果たしました。(日本産業界エキスパート規格案については、『CSRインフォメーション第8号』をご参照ください。)DSに沿って全体像を示したフルテキストの規格案は日本産業界案だけであり、規格の完成像を予測するものとしてエキスパートに高く評価され、漸次浸透していきました。
その結果、規格の適用範囲には、日本産業界が求めてきた「あらゆる組織に適用される」「マネジメントシステム規格ではない」「適合性評価や認証目的に用いられることには適さない」などの前提条件が明文化されました。SRの暫定的定義も、以下のとおり日本産業界が提案したような簡潔なものとなりました。
SRイシューについては、次の7つの大項目に暫定合意し、今後の作業を進めることとなりました。
(1)環境、(2)人権、(3)労働慣行、(4)組織のガバナンス、(5)公正な商習慣、(6)コミュニティ参画/社会開発、(7)消費者課題
今回のWG総会では、多くの課題が次回に持ち越されたものの、規格案の内容がDSに沿って具体化されつつあり、規格案の姿が徐々に明確になってきたと考えられます。
8月末までの3ヵ月間、3つの規格策定グループ(TG4、5、6)が今回の総会で積み残した課題について8月末までに原案をまとめ、編集委員会に提出することになっています。その後、編集委員会でWD2をとりまとめて各国のエキスパートにコメントを求め、第4回総会(2007年1月下旬または2月初旬 於 オーストラリア)に向けて準備を進めていきます。
なお、ISO26000の規格発行予定は、当初の予定より約3ヵ月遅れ、2009年第1四半期となる予定です。
規格の内容をめぐる今後の課題としては、以下のようなものがあります。
日本産業界エキスパートの深田静夫氏が第7章の構造を提案する暫定作業グループのリーダー、関正雄氏が第6章のSRイシューの起案グループのメンバーとして議論をリードしていくことを通じて対応していくこととなります。
日本経団連では、社会的責任経営部会のISO対応チームを中心に、シンプルで実用的なガイダンス作りに尽力していきたいと考えております。引き続き、皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。
総会の模様につきましては、6月1日に開催した企業行動委員会・社会貢献推進委員会合同会合において、専門家やオブザーバーからご報告いたしました。当日配付された資料をご希望の方はご連絡下さい。日本経団連会員の皆様にはお送り申しあげます。