途上国の経済開発におけるODAと民間部門の連携強化


市場経済化、民営化に代表される民間主導の経済開発という世界的な潮流の中で、官主導の経済協力の推進に限界があることを認識し、企業ベースの投資・貿易面を通じた協力やNGOの草の根レベルの協力を経済協力に取り込んでいくことが不可欠となっている。

ODAと民間部門の活動が途上国の経済発展において車の両輪として有効に機能するよう、この二つを結びつけて相乗効果を発揮させる仕組みを一層充実すべきである。民間投資、途上国の民間企業支援、NGOの活動等についてもODAを触媒として活用し、途上国の経済発展に生かす工夫がより試みられるべきである。さらに、テーマによっては、ODAの実施主体についても民間企業やNGOを活用し、効率化を図るべきである。特に、途上国への専門家の派遣において、企業人材の一層の活用〔例:実年協力隊構想(仮称)〕を図るべきである。

  1. 民間投融資の促進のための公的支援の拡大と政府の保証機能の強化

    わが国民間企業による投資、融資、技術協力など民間経済協力の果たすべき役割は大きいが、途上国の政治的・経済的なリスクを考えると、市場メカニズムに委ねているだけでは限界がある。

    貿易保険制度については、その財政基盤の強化を図るとともに、弾力的運用と運用の透明性の確保を図るべきである。また、中長期的には民営化等の抜本的改革も視野に入れた検討が行われるべきである。

    また、途上国や市場経済への移行国では民営化が進行中であり、BOTによるインフラ整備についてはODAの支援が得られない状況がある。インフラ分野でBOTへの民間資金の参加を強化するためには、海外経済協力基金や日本輸出入銀行のBOT案件に対する保証機能が充実されるべきである。

    公的債務削減国・繰延国に対しては、国際的な政治・経済環境に配慮し、わが国民間部門によるニューマネーが提供できるよう、財政当局は弾力的な対応を図るべきである。特に、政府による保証機能の強化という観点からも、十分個別ケースに対処し、公的債務削減国・繰延国に対する日本の貿易保険の取扱いを弾力化する必要がある。

  2. 官民合同の援助政策の策定とプログラムの形成

    途上国の全体的バランスのとれた国民経済発展をめざして、官民合同で援助政策、途上国の地域・分野別開発計画の検討を行うとともに、総合的地域開発プログラム等の提案を行っていくべきである。また、途上国との政策対話においても、企業、NGO、学界などの民間部門を加え、市民や企業の感覚を織り込んだプログラムの発掘・形成を目指し、政府と民間部門の実質的な協力推進とコミュニケーションの強化(情報の共有、共通の認識の保有)を図るべきである。その一環として、民間部門により日本独自の技術・経営ノウハウを含むプログラム形成を進めていくために、「プログラム形成ファンド」の設立など、民間主導でプログラムの提案、計画、遂行ができるような、いわゆる日本の“顔の見える”援助の推進が望まれる。

    開発途上国の外貨獲得型産業振興に向けたプロジェクトを推進している日本国際協力機構(JAIDO)は、官民連携の重要なモデルであり、海外からの期待も非常に高い。今後JAIDOは民間の経験、技術、経営ノウハウを途上国に移転する架け橋として、その財政面、機能面の拡大を図り、ODAにおける官と民の谷間を埋める役割を果たすべきである。

    また、日本のODA、OOF(その他政府資金の流れ)に関係する行政機関、海外経済協力基金、日本輸出入銀行、国際協力事業団の役員等幹部に民間の人材の登用を図るとともに、官民関係機関の間の人事交流を推進すべきである。

  3. 民間部門の人材の活用

    技術協力では国際協力事業団が中心的な役割を果してきているが、援助ニーズの増加と多様化により、その人員だけでは十分に対応できないでいる。特に産業技術、環境・公害問題、民営化等の問題については、むしろ民間企業に人材、技術、経験の蓄積があり、ODAにおける民間企業の人材の一層の活用を図るためのメカニズムを工夫すべきである。また、大学、研究機関、NGO等の知見、経験を生かす大胆な工夫も必要である。

    民間企業の人材を経済協力に活用するために、人材の派遣等のコストを適正化した上でODAで充当するとともに、省庁別の縦割りにより柔軟性を欠いている政府の専門家派遣制度の一本化が必要である。

    また、経団連では民間ベースの企業の専門家派遣制度(「実年協力隊構想(仮称)」)について検討を進めているが、ODAと連携するためのメカニズムの導入が大きな課題となっている。


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