社団法人 経済団体連合会
経済調査委員会・経済分析研究会
わが国の経常収支黒字の対GDP比率は減少傾向にあるものの、1994年度においては2.6%と依然として高水準であり、これが構造的な円高圧力につながっている。
わが国の経常収支黒字の基本的要因には、景気低迷による循環的な要因と恒常的な貯蓄超過・投資不足という構造的要因に根ざすものがある。特に最近では、内需低迷による循環的な黒字が大きく、これを早急に是正しなければならない。他方、構造的な黒字は、短期的な解消は困難な面があるが、規制撤廃・緩和などを通じ民間投資を促進させながら縮小させていくべきである。
経常収支黒字削減計画は貿易摩擦問題への対応としてではなく、わが国経済が内外需バランスのとれた経済構造へ転換を図るための自主的な計画として策定すべきである。
黒字削減の方策として、一部に輸出自粛が有効との見方がある。しかし、輸出自粛は自由貿易の原則に反し、世界経済の縮小均衡につながる惧れがある。わが国はあくまで輸入拡大による拡大均衡を通じ黒字を削減すべきである。
経常収支黒字削減計画はあくまでマクロレベルでの計画であるべきで、ミクロレベルの輸出入目標は管理貿易につながり、適正な資源配分を歪める。ミクロレベルの輸出入目標は設定すべきではない。
対外不均衡は相互依存関係にある世界経済の中で生じているものであり、経常収支不均衡の是正はわが国一国の政策対応のみで達成できない。わが国として黒字削減に努める一方で、米国が引き続き双子の赤字の削減に向け努力するよう求めるなど国際的な政策協調を進めていく必要がある。
政府は、例えば、現在策定中の新しい経済計画の中で、内需拡大により経常収支黒字の対名目GDP比率を3ヵ年で1%台に縮小(注参照)させるとともに、3%成長を目指していくことを当面の自主的な努力目標として掲げ、これを実現する上で、政府がとるべき以下のような具体策を明示していく必要がある。
国際的に見て極めて重い企業の法人税負担及び地価税等の土地保有税負担が経済活性化を阻害している。
経済モデルにより、例えば、96年度より法人税の実効税率を現行の約5割から米国並みの約4割に軽減した場合の効果分析をしたところ、民間の設備投資を中心に内需が回復することにより、97年度時点における実質GDPは標準ケースに比べ0.4%増加(名目GDP0.4%増加)し、経常収支黒字の対名目GDP比率を0.15%押し下げるとの結果が出ている。
わが国の内需の低迷が対外不均衡の大きな要因となっている現状においては、個人消費の回復による輸入拡大及び貯蓄投資バランスの改善が望まれる。
経済モデルにより、例えば97年度においても2兆円の所得税特別減税が継続された場合の効果分析を行ったところ、個人消費を中心に内需が立ち直り、97年度時点の実質GDPは標準ケースに比べ0.2%増加(名目GDP0.2%増加)し、経常収支黒字の対名目GDP比率を0.06%押し下げるという結果が出ている。