経団連第60回定時総会 総会決議

「21世紀に向け新たな発展の基盤を確立する」

1998年5月26日
(社)経済団体連合会


日本経済は、景気の低迷と国民の間に広がる将来への不安感、閉塞感から、極めて困難な状況にあるが、戦後50年余の間に培われた国力をもとに、われわれは変革、創造の気概をもって、この難局を乗り切らなければならない。
このためには、まず当面の景気回復に全力を傾けるとともに、将来のビジョンを示し、明るい展望を開くことが必要である。すなわち、経済のグローバル化と少子・高齢化時代に対応して、経済社会システムの抜本改革を速やかに進めるとともに、21世紀を見据えた経済社会インフラを整備することによって、信頼に足る基盤を築かなければならない。これにより、アジア経済の回復のみならず、世界経済の発展と安定に貢献できることになる。
われわれ経済界としても、市場原理と自己責任に基づく積極果敢な事業活動こそが、わが国経済の活力の源泉であるとの自負をもって企業経営に当たるとともに、21世紀の魅力ある日本の実現を目指して、下記の重要課題に取り組む。

  1. 経済活性化のために構造改革を実現する。
  2. 景気の本格的な回復のためには、内需主導の長期かつ持続的な経済活性化に向けた構造改革を実現することが基本である。特に、規制の撤廃・緩和により、高コスト構造を是正するとともに、直間比率の見直しを踏まえ、所得税の累進税率構造および法人実効税率を国際水準に合わせることによって、個人や企業の意欲と能力を引き出すことが重要である。経済界としても、こうした政策を活用し、新産業・新事業の創出と雇用の拡大に努める。
    また、当面の対策として、不良債権を早期に処理し、金融システム改革を迅速に進めて金融機能の回復を図るとともに、土地の流動化・有効活用と住宅建設を促進することが急務である。

  3. 21世紀に向けた経済社会基盤の充実を図る。
  4. 経済のグローバル化、高度情報化、少子・高齢化に対応して、ハード、ソフト両面にわたるインフラを充実させなければならない。特に、情報通信、物流、環境、社会福祉、住宅に関連した社会資本を、重点的かつ効率的に整備する必要がある。経済界としても民間の経営資源を活用するPFIに主体的に参加する。
    また、わが国は技術立国として研究開発力の維持・向上と、世界に通用する創造的な人材育成のため、政府の科学技術政策を見直し、新たな時代に相応しい教育改革を推進するとともに、企業においても個人の創造性を促す仕組みを構築する。さらに、生活の基盤となる社会保障制度も透明かつ持続可能なものへと改革するなど、活力があり、安心して暮らせる社会を形成しなければならない。

  5. 官民の役割分担を見直し、小さな政府の実現を急ぐ。
  6. 市場原理に基づく民間活力の発揮こそがわが国発展の基盤である。規制緩和によって自由な企業活動を保障し、行政改革により、公的部門への競争原理の導入・民間企業の参入、官業の民営化などを推進するとともに、速やかに中央省庁を再編し、広域行政を進めることにより、国・地方を通じて小さな政府を実現すべきである。また、このシンボルとなり、かつ人心一新の契機ともなる首都機能移転を早期に実現し、併せて個性ある地域の発展と東京の再整備を図らなければならない。

  7. 循環型社会の構築と地球環境の保全に努める。
  8. 環境問題の解決のためには、産業界、政府、国民、地域、NGOなどが一体となった取り組みが不可欠である。われわれとしても、経団連地球環境憲章および環境アピールにもとづく環境自主行動計画に沿って、省エネルギー・省資源型の循環型社会の構築と地球環境保全に努める。また、生態系保護の観点から自然保護活動の充実を図る。

  9. 世界経済の発展に貢献する。
  10. わが国は、自由貿易体制の維持・強化、各国との貿易・投資の拡大を通じて世界経済の発展に貢献しなければならない。特に困難に直面しているアジア経済の回復に向けて経済を活性化し、輸入の拡大に努めるとともに、人材育成や裾野産業の育成に協力していくことが重要である。また、通貨の安定のために決済通貨および外貨準備としての円の国際化を図る。そのためにも、短期金融市場の整備など、わが国の市場を海外に開かれたものに改革していかなければならない。
    われわれとしても民間外交を活発に展開し、各国との相互理解の一層の促進を図るとともに、WTO、OECD、APEC、世銀など国際的機関に民間の意見が反映されるように努める。

  11. 内外におけるわが国企業への信頼の回復に努める。
  12. 経済社会システムの改革を進める上で、社会的存在としての企業の責任は極めて重大である。われわれは、企業倫理とコーポレート・ガバナンスの重要性を深く認識して、経営の効率性、透明性を高めるとともに、企業行動憲章を遵守して、内外の信頼回復に努めなければならない。

以 上

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