経団連PRTR(環境汚染物質排出・移動登録)調査結果報告

関係資料編

1998年6月16日
(社)経済団体連合会


  1. 実施方法
    1. 実施地域
    2. 日本全国の事業所。

    3. 調査対象物質
      1. 法規制物質や慢性有害性物質等、企業のリスク管理活動に資すると考えられる174物質(別表3)を対象とした。
      2. 金属及びその化合物(化合物群)の場合は具体的に物質を明示した(別表4)
      3. ダイオキシンなど非意図的生成物は今回は対象としなかった。
      4. 混合物の場合は、対象物質を1%以上含有するものとした。

    4. 報告対象物質の年間取扱数量による裾きり
    5. 法規制物質及び有害性ランクA,Bについては、年間取扱数量が100kg以上、有害性ランクC,Dについては10t以上である場合、排出・移動量の調査対象とした。
      混合物の場合、対象物質の取扱量がこの数字以上であっても、1%以上含有されていないものは調査対象外とする。金属及びその化合物の場合は裾きりや排出量の報告の数値は、金属換算とする。化合物類の場合は、化合物類の取り扱い合計値で判断する。

    6. 対象事業所規模
    7. 基本的に従業員数100名以上の事業所を報告の対象とした。但し、業種によっては30名以上とした(別表5)

    8. 報告内容
      1. 報告者の氏名
      2. 事業所の名称及び住所
      3. 事業の種類
      4. 対象化学物質毎の年間取扱量
      5. 対象化学物質毎の環境媒体別(大気・水質・土壌)の年間排出量
      6. 対象化学物質毎の廃棄物としての年間移動量
      7. その他必要な事項

      報告は、事業所毎に作成する取扱量報告用紙と排出・移動量調査表により行なうこととした。なお、所定の報告様式をフロッピーディスク化したものを用意し、原則として電子媒体による報告を依頼した。

    9. 報告の単位
    10. 事業所毎に算出し、報告するものとした。
      なお、事業所とは、一体的な環境面の管理がなされている事業場、工場等を言う。従って、同一事業所内に存在する他社の施設であっても、自社に管理責任がある場合は合算して報告することとした。

    11. 排出量の届け出先
    12. 事業所からの排出量の届け出先は業界団体とし、業界団体毎に排出量を集計して、その結果を経団連に報告することとした。
      一事業所内で複数の事業を行なっている場合、届け出先は複数の業界団体に分割して報告することを原則とするが、事業所が任意に選定した1業界団体に合計値として報告してもよいこととした。
      なお、事業者は、調査結果の提出先を明らかにするために所属団体名記入表を提出することとした。

    13. 排出量・移動量の算定方法
    14. 排出量・移動量の算定にあたっては、別途作成する排出・移動量算定マニュアルを参考とし、可能な限り精度の高い数値で報告することとした。なお、業界の状況を考慮し、マニュアルは業界毎に別途作成してもよいこととした。

    15. 調査対象期間
    16. 原則として平成8年度を調査対象期間とした。

    17. 公表の方法
    18. 業界単位で集計し、その結果を経団連に報告する。
      経団連は、まず全国ベースの公表からスタートし、わかりやすい解説とトータルリスク評価が出来る専門家を養成する等の実績を積んだ上で、次に地域毎の公表を行なう等の方法を検討する。
      なお、調査対象174物質について、38団体いずれからも取扱量の報告がなかった場合、及び排出・移動量についての報告が一事業所からのみであった場合には、媒体別・対象物質別排出・移動量集計値一覧表(別表1)に載せていない。

  2. 調査実施について
    1. 調査の方法
      1. 取扱物質がPRTR対象物質であるかを調査する。
      2. 対象物質の取扱量を調査する。年間取扱数量が裾切り以上であればPRTR調査の対象となる。
      3. 取扱量報告用紙に、裾切りに関係なく全物質の取扱量を記入する。
      4. 基本的には、排出個所を特定し、濃度を測定することで排出量を実測する。実測が不可能な場合は、年間理論生産量、年間受入量と生産量、出荷量、在庫量の差を用いる物質収支で総排出量を把握し、大気、水域、土壌への排出量、廃棄物としての移動量に配分する。
      5. 排出・移動量は1年間の集計値とし、事業所毎・物質毎に所定の業界団体に、排出・移動量調査表を用いて報告する。

    2. 調査の流れ
      1. PRTR作業部会の開催
        97年7月より毎月1回程度
      2. 調査票(フロッピーディスク)・実施マニュアルにつき説明会の開催
        97年12月10日
      3. 調査依頼状の送付
        97年12月18日
      4. 報告提出期限
        98年3月31日

  3. 用語の定義
    1. 事業所
    2. 事業所とは、一体的な環境面の管理がなされている事業場、工場等を言う。但し、当該事業所の境界地の外に活性汚泥等の共同処理施設が有る場合は、処理施設を含んで当該事業所の敷地とみなす。

    3. 取扱量
    4. 取扱量とは、調査対象物質を製品又は中間製品として製造もしくは、製造された調査対象物質を原料、溶剤、冷媒、熱媒、混合や消費などの目的で使用する量のことを言う。
      製造において化学反応の過程で生成する中間体や副生成物も含む。
      (注:副生成物とは、化学物質を製造する工程で生成する物質で、製造を目的とする物質以外のものを言う。)

    5. 排出量
    6. 排出量とは、大気、水域、土壌等自然界へ当該事業所から対象物質を排出した量を言う。

    7. 移動(廃棄物)
    8. 移動とは、事業活動に伴って排出される産業廃棄物を、産業廃棄物処理業者に委託して場外に移動することで、純分換算して算出する。
      従って、製品に含有もしくは同伴されて場外に持ち出される場合を除く。移動量には、中間処理量、最終埋立処分量を含む。リサイクル量は含まない。

    9. リサイクル
    10. リサイクルとは、対象物質を含有する産業廃棄物が再生されることを目的として再生業者に委託し、場外に移動する場合をいう。従って、再生時の収率は考慮しない。移動量とは分けて報告する。

    11. 管理型埋立
    12. 対象物質を含有する産業廃棄物を、事業者が自ら社内の管理型埋め立て地に処分する場合をいう。移動量や土壌への排出とは分けて報告する。

  4. 排出源の分類
    1. 大気への排出
    2. 大気への排出とは事業所内排出源から大気へ排出されるものを言う。具体的には以下の場合が考えられる。

    3. 水域への排出
    4. 事業所内の排出源から、公共用水域、下水道に排出される場合を言う。

      報告時には、公共用水域への排出と下水道への排出に分けて報告する。

    5. 土壌への排出
    6. 地表および地中の容器・配管からの漏出により地下浸透する場合を言う。また事業者が自ら安定型埋立地に埋立処分する場合も対象とするが、遮断型埋立地に処分しているものは、算定する必要はない。但し、管理型埋立地に処分する場合は、備考に埋立量(管理型)として報告し、移動量や土壌への排出量には加えない。

    7. 廃棄物の移動
    8. 廃棄物として廃棄物処理業者に委託することで、場外に移動する場合を言う。具体的には以下の場合が考えられる。

  5. 調査対象物質の選定根拠
  6. 有害性の判断は、発ガン性、変異原性、吸入・経口慢性有害性、生殖有害性、生態有害性などを有害性の程度によってランク付けした。

    1. 発がん性
    2. 有害性
      ランク
      程度IARCEPAEUNTPACGIH日本産業
      衛生学会
      人発がん性ありA1
      人発がん性の疑いが強い
      複数機関で指定
      2A
      2B
      B1
      B2
      A22A
      人発がん性の疑いが強い
      1機関のみで指定

    3. 吸入有害性
    4. 有害性
      ランク
      WHO大気
      (mg/m3)
      IARC NOAEL
      (mg/m3)
      IARC LOAEL
      (mg/m3)
      0.0005以下0.1以下1以下
      0.0005〜0.0050.1〜11〜10
      0.005〜0.051〜1010〜100

    5. 経口慢性有害性
    6. 有害性
      ランク
      WHO水質
      (mg/l)
      EPA水質
      (mg/l)
      IARC NOAEL
      (mg/l)
      IARC LOAEL
      (mg/l)
      0.001以下0.001以下0.01以下0.1以下
      0.001〜0.010.001〜0.010.01〜0.10.1〜1

    7. 生殖有害性
    8. 有害性
      ランク
      EUのR60,R61
      人の受胎能力を害する
      人の受胎能力を害する強い恐れがある。

    9. 作業環境
    10. ACGIH又は、日本産業衛生学会で取り扱われている化学物質
      ただし、固体、粉塵、ミスト、急性有害性で対象となっているものは除く。
      有害性
      ランク
      TWA (mg/m3)上限値 (mg/m3)
      1以下10以下
      1〜1010〜100

    11. 変異原性
    12. 労働省の通達により、特に強い変異原性が認められている物質

    13. 生態有害性
    14. 有害性
      ランク
      魚のLC50(mg/l)ミジンコのEC50(mg/l)藻類のIC50(mg/l)
      0.1以下0.1以下0.1以下
      0.1〜10.1〜10.1〜1

  7. 報告状況
  8. 経団連の呼びかけに
    応じた業界団体数
    回答数回答率
    経団連会員292793.1%
    経団連非会員161168.8%
    合計453884.4%
    調査票発送数回答数回答率
    企業数2510158563.1%
    (参考:回答事業所数 1948)

    平均報告物質数  23物質/1業界団体

    《無回答の理由について》
    調査終了後、調査協力業界団体に対してアンケートを実施して、業界団体から調査票を送付したにもかかわらず回答の無かった企業につき、理由を聞いたところ、以下のような回答があった。
    • 調査対象物質を取扱っていない。
    • 事業所規模が調査対象外である。
    • MSDSの内容から、使用している製品の中に対象物質が含まれるのかどうかが判断出来ない。
    • 調査中で、回答期限までに間に合わなかった。

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