[経団連] [意見書]

「規制の設定又は改廃に係る意見照会手続(仮称)案」に対する意見

1998年12月7日
(社)経済団体連合会

規制緩和推進3か年計画において“当面、行政上の措置としてのパブリックコメント手続について年度内に結論を得る”とされていることを受けて、現在、総務庁が年度内の閣議決定に向けて「規制の設定又は改廃に係る意見照会手続(仮称)案」を公表し、広く意見を求めている。
経団連では、去る10月20日、規制緩和要望「経済再生に向け規制緩和の推進と透明な行政運営体制の確立を求める」を政府及び関係方面に建議し、規制緩和推進体制の強化とともに、パブリック・コメント制度の導入をはじめとする透明な行政運営体制の確立を要望したところであり、総務庁の案は規制の設定と改廃に限定されてはいるが、透明な行政運営体制の確立に向けた政府の統一的な取り組みとして評価する。
その上で、手続案の具体的な内容について、下記の点を要望する。

なお、3か年計画においても行政上の措置は「当面」とされている通り、遅くとも2001年1月1日の中央省庁の新体制移行までには、法制化すべきである。

  1. 基本的考え方(総務庁案「前文」)
  2. 意見照会手続の定義として「意思決定過程において広く国民等に対し案等を公表し、それに対して提出された意見・情報を考慮して意思決定を行う」とされているが、公表時期が最終段階では出された意見が十分に反映されない惧れがある。したがって、できるだけ、最終案のかなり前の段階で中間的な案を公表し意見を求めることとすべきであり、前文にその旨を明記すべきである。

  3. 対象について(総務庁案 一)
    1. 「迅速性・緊急性を要するもの、軽微なもの等については本手続によらないことができる」とされており、具体的な案件が本手続きの対象であるかどうかの判断は、それぞれ担当の行政機関に任せられ、また行政機関がその判断の説明責任を負うことになっているが、不要と判断する理由の公表を義務付けるなど、「説明責任」の具体的な内容を規定すべきである。

    2. 「考え方」において「懇談会等行政運営上の会合は行政機関ではないので、その意見は本手続の対象ではない」とされているが、それら会合であっても、その報告書等は行政運営や行政立法に少なからぬ影響を与えることが多い。したがって、懇談会等行政運営上の会合についても、報告書等を取りまとめる場合には、本手続の対象とすべきである。

  4. 公表時期について(総務庁案 二の(一))
  5. 「最終的な意思決定を行う前に、その案等を公表する」とされているが、上記1.でも指摘したとおり、「最終的な意思決定を行う前」だけでなく、できるだけ、中間的な段階でも案を公表して意見を聴くこととすべきである。

  6. 公表資料について(総務庁案 二の(二))
  7. 「案等の本体に加えて、可能な限り次に掲げた資料を公表する」として、「(1)当該案等を作成した趣旨・背景、(2)当該案等に関連する資料、(3)当該案等の位置付け」が挙げられているが、これらは「原則として必ず公表する」こととすべきである。
    また、(2)の「関連する資料」には、コスト・ベネフィット分析をはじめとする規制の事前評価結果を含めることを義務づけるべきである。

  8. 公表方法について(総務庁案 二の(三))
    1. 本手続については周知徹底が極めて重要であり、案に掲げられた公表方法に加えて、当該問題に関心を持っていると思われる団体等には個別に通知すべきである。

    2. 国民の利便のため、個別の行政機関による公表だけでなく、総務庁のホームページに全省庁分の一覧を掲載することが望まれる。

  9. 意見・情報の募集期間について(総務庁案 二の(四))
  10. 意見・情報の募集期間については「1か月程度を一つの目安」とするとされているが、広く内外からコメントを求めるには1か月では不十分な場合が多いものと思われる。国民、事業者等はなるべく早く意見等を提出することが望まれるが、募集期間は基本的には「最低1か月」とすべきである。

  11. 意見・情報の処理について(総務庁案 二の(六))
    1. 「提出された意見・情報を考慮して意思決定を行うとともに、これに対する当該行政機関の考え方を取りまとめ、提出された意見・情報と併せて公表する」とされているが、提出された意見・情報にどのように対応したかをその理由も付して公表することとすべきである。

    2. 責任ある意見・情報が寄せられるよう、意見・情報を提出した個人・法人の氏名・名称等を公表する必要がある。

    3. 意見・情報の処理に際し、国民の権利義務あるいは国民生活に重大な影響を及ぼす案件については、本手続によって意見・情報を募集し、それに対する行政機関の考えを公表した後、再度、意見・情報を提出する機会を設けることが望ましい。

  12. 意思決定過程の特例について(総務庁案 三の(一))
    1. 意思決定過程の特例として「意思表示を行う機関以外の国の行政機関等が本手続に準じた手続を経て意思決定を行い、それを受けて、それと実質的に同じ内容の意思表示を行う場合」が挙げられており、さらに事例として「審議会等の答申を受けて、政令を定める場合や、各省大臣が省令、告示等を定める場合」が挙げられているが、「審議会等」の範囲を具体的に定める必要がある。また、「審議会等」がその答申の取り纏めに当たって意見照会手続などにより広く意見を募集したことが意思決定過程の特例の条件であることを明確にするため、事例の表現は「審議会等が本手続に準じた手続を経て取りまとめた答申等を受けて」とすべきである。

    2. 意思決定過程の特例に該当する場合においても、国民が、意見を提出する機会を出来るだけ広く確保するため、行政機関は可能な限り意見募集に努めることとすべきである。

  13. 実施状況の公表について(総務庁案 三の(三))
  14. 「各省庁は実施状況を当分の間総務庁に報告し、総務庁はそれを取りまとめ公表する」とされているが、あらかじめ標準的な報告様式を定めるとともに、とりまとめたものは白書のような形で公表することを望む。

  15. その他
    1. 総務庁案の「考え方」の部分は、本体に取り込むべきである。

    2. 本手続が形式化すればかえって行政の無駄が生じることになる。本手続の本来の趣旨を徹底することによって、公務員の意識改革を図り、有効かつ効率的な運用を実現すべきである。

以  上

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