第22回日本メキシコ経済協議会(98年11月)での議論を受けて、日本メキシコ経済委員会では、自動車、エレクトロニクス、部品、商社等からなる「日墨協定に関する懇談会」を発足させ、日墨間に自由貿易・投資保護協定(以下、協定)が締結された場合のわが国産業界に与える影響について検討した。
日本とメキシコとの間には、
貿易面では、メキシコの輸入関税の撤廃により、全般的に日本からの輸出品の競争力が高まるとともに、新製品導入のリードタイムの短縮等が期待される。特にエレクトロニクス完成品や、エレクトロニクス・自動車部品については関税撤廃のメリットが大きく、輸出拡大が見込まれる。
自動車分野で高級車等の輸出拡大の余地は大きいが、普通乗用車については米州内での生産体制が確立しているため、協定による日本からの輸出拡大効果は小さい。
この他、プラント設備、化学品、鉄鋼製品等の輸出拡大が見込まれる。
メキシコから日本への輸入については、食品などメキシコが比較優位を有する分野で拡大する可能性がある。
投資面では、自動車、エレクトロニクス分野の部品の関税の撤廃により、現地生産のコスト競争力が高まる。その結果、特にエレクトロニクス分野では、米国やアジアからの一層の生産の移転促進が期待される。他方で、日本からの部品輸入の増加にともない、現地部品事業が一定の見直しを迫られる可能性がある。
メキシコのインフラ等のプロジェクトへの参加の面では、日本からの資材調達の割合が大きいので、協定による関税の撤廃を通じ、米国企業と同じ土俵の上での競争が可能となる。
また協定による投資上のパフォーマンス要求の禁止、メキシコ政府のプロジェクトの国産化要求などが将来にわたって禁止されることも、メキシコで安定的なビジネス活動を行なう上で重要である。
協定は貿易・投資両面で、わが国産業界に大きなメリットをもたらすということができる。今後、両国の官民がさまざまな場で本件に関する検討を進め、協定が双方に利益をもたらす形で早期に締結されることが望ましい。
また、協定の効果をさらに高めるためには、現地部品産業の育成・強化、税制改革、インフラ整備、治安改善などの実現に向け実効ある施策がメキシコにおいてとられることが重要である。