わが国の鉱工業製品の関税率は極めて低く、とりわけ機械類はほぼゼロとなっている。他方、欧米ではこうした分野で関税が課せられているのみならず、米国のトラック、EUの一部の家電等では、特に高関税となっている。次期交渉を通じて、わが国産業の競争力の強いこうした分野での関税障壁が撤廃されていくことが重要である。
また、繊維分野でも、米国、EU等には高関税品目が多く残されているとともに、輸入量の割当制度がある(化成品、ウールを含む)。この輸入割当制度は、「繊維製品の国際貿易に関する取極(MFA)」に基づくものであり、2005年までに段階的に撤廃されることとなっているが、この期限の前倒しによる割当制度の早期撤廃と併せて、高関税の是正が実現していくことが望ましい。
途上国においては、依然として広範な高関税品目が残されており、わが国企業の競争力の高い輸送機器、電気機器、建設機械、鉄鋼、化学品などの輸出の障害となっている。こうした分野での高関税率の大幅な引下げが求められる。
また、関税の譲許率が低く、多くの品目で関税を自由に引き上げる余地を残している国も多い。こうした、突然の関税率引上げがわが国企業の輸出障害となっている例が多い。わが国企業の輸出事業の予見性を高めるために、譲許率の向上を求めていく必要がある。
但し、途上国における関税障壁の緩和・撤廃については、各国の経済情勢や発展段階を踏まえた一定の配慮が必要である。国によっては関税引下げの実施上十分な経過期間を付与すべきである。
各国が一定の算定式に基づいて関税を引き下げる方式(フォーミュラ・カット方式)、二桁の関税や、平均関税と照らして突出した高関税を引き下げる方式(ピーク・タリフ・カット方式)、主要国の関心分野について一律の関税撤廃もしくは一定率への引下げを行なう方式(ゼロゼロ・ハーモナイゼーション合意方式)などを活用することで、上記1.、2.で述べた高関税品目の関税撤廃・引下げを目指すべきである。
また、途上国の非譲許率について最低でも半減させるといった目標を設定すべきである。
併せて、工業品については、例えば5%以下の低関税率(いわゆるニューサンス・タリフ)について、一律ゼロとする方向で検討すべきである。