2000年からはじまる次期サービス自由化交渉は、1995年のサービス貿易に関する一般協定(GATS)の発効以降、全サービス分野を対象とする初めての本格的な自由化交渉となる。
日本経済におけるサービス産業の重要性が高まるなか、競争力を持つサービス産業は次第に海外事業展開を積極化しつつある。また、製造業も、販売拠点やアフター・セールスのサービス拠点の設置など海外でサービス事業に従事するケースは多い。しかし、サービス貿易の自由化は、モノの貿易の自由化に比べ大きく遅れており、海外でサービス事業活動を営む際、わが国企業は様々な障害に直面しているのが現状である。こうした障害を取り除いていくうえで、次期サービス交渉はわが国産業界にとって極めて重要である。同交渉を通じて各国における、
このため、わが国政府は、第1に、次期交渉において、各国がサービス分野の自由化約束を充実させるとともに、これを着実に遵守するよう求めていく必要がある。わが国産業界が特に重視しているのは、通信、流通、金融、建設、運輸の5分野における商業拠点設立の自由化である。
第2に、各国のサービス分野の法律、諸規制の透明性を確保するとともに、わが国の行政手続法的な考え方、たとえば審査開始義務や標準処理期間の明示などを途上国が取り入れるよう働きかけていく必要がある。
以上のように、次期サービス交渉では、各国の自由化の促進、サービスに係るルールの整備などを通じ、わが国企業の海外事業活動上の障害を除去していくことが重要である。経団連が最近行なったアンケート調査をもとに基本的考え方を整理すると以下の通りである。
分野横断的問題点
わが国企業が海外でサービス事業を展開するにあたって直面している障害は、概ね以下に大別される。
分野別問題点
各分野別の問題点は以下の通りである。
通信
97年2月に終結した基本電気通信交渉の結果、先進国及び途上国の双方において、同分野の自由化が進展したことを歓迎するが、途上国の外国資本出資比率については、一層の制限の緩和が望まれる。加えて、同交渉において、長期の移行期間を伴う段階的緩和を約束した国の実施の前倒しおよび未約束国による約束が望まれる。また、同交渉では取り上げられなかった付加価値通信サービスについても、一部途上国で参入障壁が存在しており、次期交渉を通じて自由化を進めることが大切である。
参照ペーパーの導入によって、競争促進的な規制の枠組みについて一定の約束がなされたことを評価する。今後は、参照ペーパーにおける「主要なサービス提供者」などの主要概念の定義のより一層の明確化が必要である。また、参照ペーパーに盛り込まれている「免許基準の公の利用可能性」に関連し、新規事業者による参入を制限しないためにも、
流通
主に途上国において、外国企業による輸入会社、販売会社、アフター・セールス・サービス会社等の設立の禁止や外国資本出資比率の制限といった規制が多く、大きな障害となっている。このような規制を次期交渉において改善することが望まれる。
また、外国企業による土地の取得規制についても改善が必要である。
金融
金融サービス交渉の成果として、全体として自由化が進みつつあることを歓迎する。
しかし、一部の国においては、依然として次のような事業上の障害が残されており、次期交渉で改善されることを希望する。
建設
建設サービスにおいて、わが国企業が海外展開を行なう上で直面する障害は、公共事業参入の制限、拠点設置に伴う制限、に大別される。
このうち、公共事業参入については、地元企業優先措置、資本額による制限(一定額以上の資本を持つ企業以外を予め排除)、自国資材の調達義務、特定の認証取得の義務付け等の問題がある。
拠点設置に伴う制限については、
運輸
海上、航空、(陸上)の各運輸サービスにおいて、さらなる自由化と運用の透明性向上が求められる。
海上運送については、UR交渉後の継続交渉とされていたが、96年6月に交渉が不成功に終わったため、事実上、GATSによる多角的規律の枠外に置かれている。次期交渉においては、先ず海運分野へのGATSルールの適用を確保することが重要である。また、一部の国における外国資本出資比率の制限や自国企業優遇政策がわが国企業の事業上の障害となっており、この改善が必要である。
航空運送のうち、GATSの対象となっているソフトライト、すなわち、航空機の修理及び保守、航空運送サービスの販売及びマーケティング、コンピュータ予約システムについて、各国の自由化が望まれる。
セーフガード、政府調達、補助金、アンチ・ダンピング等、モノの貿易の分野において確立されている貿易ルールが、サービスの貿易においては未整備である。
特に、一部の国々における政府調達に係わる法制度や運用は、わが国企業による事業活動の展開上、大きな障害となっている場合が多く、自由化に向けたルールの整備が望まれる。例えば、建設分野における外国企業の参入制限、主要資材の国内調達義務、運輸分野における自国企業によるサービスの利用義務などの廃止が重要である。
現在、各国の約束表が電子ベースで照会可能となっているのはUR交渉時の合意文書となった部分のみである。その後の交渉や国内法改正に伴う約束表の改訂を含め、常に最新の約束表が電子ベースでアクセス可能となるようにすべきである。