[経団連] [意見書] [ 目 次 ]

次期WTO交渉への期待と今後のわが国通商政策の課題

〔補論4〕

電子商取引の取扱いの明確化


  1. 基本的考え
  2. 国際的な電子商取引の健全な発展には、各国間の協力体制の強化や諸制度の調和が不可欠である。基本的には民間主導でこれを推進し、自主規制などを通じ国際的枠組みを構築することが望ましく、こうした方向で目下、民間ベースでの議論が進んでいることを歓迎する。同時に、これを補完するものとして、WTO、OECD、WIPOなど様々な国際機関で電子商取引の枠組み作りも重要である。なかでも、WTOは紛争処理制度を持ち、加盟国による合意の実施を確保出来るため、各機関での検討の成果をWTOが積極的に取り込んでいくことが、電子商取引の健全な発展にとって重要である。
    こうした意味から、WTOでは単なる関税の問題にとどまらず、電子商取引の国際的な枠組みの整備に向けた議論を進めるべきである。

  3. 個別問題
    1. 情報財をめぐる関税問題
    2. 情報財のインターネット取引きには現在無関税措置がとられているが、電子商取引発展の観点から、非関税措置は継続されるべきである。

    3. 電子商取引の分類をめぐる問題
    4. WTOではモノの貿易についてはGATTの規律が、サービス貿易についてはGATSの規律が適用される。GATTは最恵国待遇、内国民待遇、数量制限の禁止等を規定しているのに対し、GATSではこれらの原則の例外や留保が可能である。
      電子商取引については、全ての電子商取引を一括してモノかサービスかに分類するのではなく、個々の取引きを従来形態の取引きに照らし合わせ、当該取引きがモノの取引きかサービス取引きか、更にサービス取引きであればどのようなサービス取引きに分類されるかを判断すべきである。
      例えば、音楽を電子媒体を通じて取引きする場合は、こうした取引きは電子媒体を通さない場合は、CDの売買で行なわれることから、モノの取引きとしてGATTの規律を適用すべきである。他方、電子商取引によるチケット販売サービスなどはサービス取引きとすべきであろう。
      こうした基本的考え方で分類の明確化を行なったうえで、あとは、それぞれGATT及びGATSの枠組み内で関税交渉や自由化交渉を進めるべきである。また、こうして分類しきれない取引きについてのみ新たなルールを検討していくべきである。

    5. 電子商取引に係る枠組みの整備
    6. 電子商取引の枠組みについては、WTOが以下のように他の国際機関の検討の成果を取り込み、加盟国に遵守を義務付けることにより、紛争解決手段をもつ国際的な枠組みの確立を図るべきである。

      知的財産権:
      WIPOにおいて著作権や商標権についての作業が進められているが、この成果を出来る限りWTOのTRIPSに取り込むことによって加盟国に遵守を義務付けるべきである。
      プライバシー保護:
      OECDでの成果をもとにプライバシー保護についての枠組みをWTOで整備していくべきである。

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