[経団連] [意見書] [ 目 次 ]

次期WTO交渉への期待と今後のわが国通商政策の課題

〔補論5〕

知的財産権保護の強化


企業活動のグローバル化に伴い、知的財産権のもつ潜在的価値はますます大きなものとなるとともに、その保護の必要性も従来にも増して高まってくる。
ウルグアイ・ラウンド交渉の結果、TRIPS協定が成立し、各国の知的財産権制度の調和に向け大きな前進が見られたことは評価できる。しかし、途上国におけるコピー商品の横行、一部の国の独特の特許制度などにより、わが国企業の知的財産権は不安定な状況におかれ、海外事業活動に支障をきたしている。そこで、次期交渉を通じ、途上国における知的財産権保護制度の整備、特許制度等の国際的な調和が実現するよう、わが国政府が積極的なイニシアティブを発揮すべきである。

  1. 途上国における知的財産権制度の整備
  2. TRIPS協定のもとで、途上国や後発開発途上国は一定の経過期間を経て、知的財産権制度を整備することとなっている。わが国政府は、各国が適切な制度を構築するよう、関連法制および執行体制の整備、国民への啓蒙・教育を積極的に働きかけるとともに、制度の構築や人材育成等に関し必要な協力を行なうべきである。途上国における知的財産権保護の強化は、先進国からの技術移転を促進するという点で、途上国側にも大きなメリットをもたらすものである。
    TRIPS協定第40条で、反競争的な権利濫用の防止を目的としたライセンス規制が認められているが、円滑な投資や技術移転を実現する観点から、途上国で制定されている技術導入法又はライセンス規制のためのガイドライン等がTRIPS協定と整合的になるよう是正を求めるべきである。

  3. 特許制度の国際的調和
  4. 特許は知的財産権の重要な柱の一つであり、透明で安定的な国際ルールが不可欠である。WTOはWIPOと協力しつつ特許制度の国際的調和に努めていく必要がある。

    1. 先願主義の国際ルール化
    2. 一部の国による先発明主義の採用は、特許制度を予見し難いものとしている。各国が平等なルールで特許出願の先後願を決することができるよう先願主義を国際ルール化すべきである。

    3. 早期公開制度の導入
    4. 一部の国で特許の早期公開制度を採用していないことから、意図せざる特許侵害が生じる可能性がある。これを未然に防ぐためにも、全ての国が早期公開制度を導入すべきである。

  5. その他
  6. 営業機密(trade secret)については、関連法制の整備が進んでいない国が多く、必要な法的保護を与えるようWTOで検討していくべきである。


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