[経団連] [意見書] [ 目 次 ]

次期WTO交渉への期待と今後のわが国通商政策の課題

〔補論6〕

国際的な投資ルールの整備


  1. 国際的投資ルールの重要性
  2. 企業が対外直接投資を進めていく上で、途上国を中心に様々な障害に直面しており、投資の保護を強化し自由化を促すような国際的な投資ルールが必要となっている。こうしたなか、ウルグアイ・ラウンド交渉の結果、TRIM(貿易関連投資措置協定)が成立したが、同協定は、ローカル・コンテンツ要求、輸出入均衡要求、外貨使用規制、国内販売要求の禁止という極めて限定的な内容にとどまっている。
    また、投資を保護する法的枠組みとして、欧米諸国は、通常数十カ国との間で投資保護協定を締結しているが、わが国の場合、投資協定の締結相手は5カ国にとどまっている。
    以上の背景のなかで、わが国産業界としては、今後WTOの場において、国際的な投資ルールが構築されることを強く希望する。こうした協定は、国際的な投資交流の促進につながることから、海外からの投資受け入れ促進を希望している発展途上国にとっても大きな利益をもたらすことになる。
    さらに、WTOの投資ルールと併行して、二国間協定への取組みを進めることが必要である。

  3. WTOの投資協定に盛り込むべき内容
  4. 対外投資においてわが国企業が抱える主な問題は、(1)外資規制、(2)パフォーマンス要求、(3)経営幹部等の国籍の制約、(4)投資関連制度の不透明性、不安定性、等である。投資に関する協定の中で、こうした問題を解決していくことが重要である。

    1. 外国資本の参入規制および出資比率の制限については、安全保障関連分野等に関する例外条項を設けたうえで原則として禁止するとともに、各国固有の撤廃困難な規制については留保リストに記載することで、制度の透明性を高めていく必要がある。

    2. 技術移転要求、外貨送金規制、輸出義務、現地人雇用義務といったパフォーマンス要求については、全て禁止すべきである。

    3. 経営幹部等の国籍の制約の関連では、役員の自国民登用義務の撤廃、投資に必要な人材(経営幹部、技術者等)への就労許可・滞在ビザ発行制限の禁止が重要である。

    4. 透明性の関連では、投資関連法制および許認可申請手続きの明確化を義務付ける必要がある。同時に、投資に関連する重要な法制、たとえば破産処理、債権保全等に関する法律について、途上国が整備を促進するための技術協力を行なっていく必要がある。

  5. 二国間協定の重要性
    1. 投資に係る多国間の国際ルールは極めて重要であるが、WTOは様々な経済発展段階の国を包含することから、こうした協定の合意には長期間を要することが見込まれる。さらに、既存の投資協定の内容を超え、経営者・技術者の移動の自由など新たな分野を含む、いわゆるハイレベルの投資ルールの合意には至らないおそれもある。
      そこで、WTOの投資ルールの整備と併行して、アジア、中南米諸国等との間で、OECDで検討されてきた多国間投資協定(MAI)をベースに、合意できるところからハイレベルの投資保護協定を締結していく必要がある。

    2. 多くの企業は外国とのビジネスにおいて、税制上のトラブルを経験している。こうした問題の解決に当たっては、租税条約が重要な役割を果たしている。わが国は、既に44カ国との間に租税条約を締結しているが、その相手国は先進国、アジアに集中しており、中南米、中東、アフリカ諸国はほとんどカバーされていない。租税条約の相手国を更に広げるとともに、技術進歩に見合わなくなった既存の条約を適宜見直していく必要がある。例えば、

      1. ソフトウェアの取引は源泉税の対象としない、
      2. 利子に関する源泉税を相互に放棄する、
      といった見直しも検討されるべきである。

    3. 年金通算協定も企業による社会保険料の二重払いをなくしていく上で重要である。特に、わが国にとって経済関係の緊密な米国との間に速やかに協定が締結される必要がある。


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