[経団連] [意見書] [ 目 次 ]

次期WTO交渉への期待と今後のわが国通商政策の課題

〔補論8〕

その他の課題


  1. 政府調達制度の改善
  2. 政府調達協定に多くの途上国が参加するよう働きかけていく必要がある。
    また、途上国、先進国を問わず、各国の政府調達において、主要資機材の国内調達義務や、入札時の調達品価格への一定割合の加算といった差別的な規則によって不利な条件を課せられるケースが多い。このような各国政府による差別的取扱いを排し、入札面で内外無差別の取扱いを確保していくべきである。

  3. 原産地規則の調和化
  4. WTOとWCO(関税協力理事会)の連携のもとに行なわれている非特恵原産地規則の調和作業が、特定の通商目的のために恣意的に適用されることなく、全ての局面で普遍的かつ中立的に適用されるような、客観的で拘束力を持った原産地規則の実施につながることを要望する。また、統一原産地規則の内容は、実務面の負担が少なく容易に原産国を判定できるようなルールであることが望ましい。

  5. 地域貿易協定
  6. EU、NAFTA等の地域貿易協定において、現地調達率の引上げ、原産地規則の恣意的な運用、新規参加国の関税引上げなどにより、域外国に対する新たな障害が生じ、わが国企業の活動が阻害される例が見られる。このようなWTO協定の精神に合致しない保護主義的措置による問題を改善するためには、地域貿易協定に対する審査の実効性を高めていくことが重要であり、審査体制の抜本的見直しが必要である。

  7. 貿易手続きの円滑化
  8. わが国企業は海外事業活動を行なううえで、一部加盟国の煩雑で時間がかかる通関手続き、不確実な関税還付制度などの問題に直面している。関税手続き、税金の還付手続きといった諸手続きの簡素化と期間短縮ならびに透明性の向上について、WTOにおける貿易円滑化に関する作業の場で取り上げていくことを要望する。

  9. 貿易と競争政策
  10. 各国における反競争的行為の禁止は、貿易や投資の円滑な流れを確保していくうえで極めて重要である。しかし、競争法すら整備されていない途上国も多いなか、今後の検討は慎重に行なっていく必要がある。
    なお、自国の競争政策の過度な域外適用は認められるべきではない。
    貿易に関わる競争政策の検討と併せて、アンチ・ダンピング措置の濫用などの競争条件を歪める貿易措置についてもWTOにおいて活発な議論が行われることを希望する。

  11. 貿易と環境
  12. 環境対策やその目標は各国毎に異なっており、さらには、貿易が環境に与える影響、そのチェックの方法についても国際的なコンセンサスは得られていない。こうしたなかで、環境保護に関する種々の考え方を客観性のないままWTOに持ち込むことは望ましくない。また、生産プロセスに伴う越境汚染や地球規模の環境汚染が生じるといった貿易保護に係る懸念を理由として一方的貿易制限措置をとることは認められない。
    他方、国際的にコンセンサスを得た多国間環境協定(モントリオール議定書、バーゼル条約、ワシントン条約)に基づく貿易制限措置については、WTO上も認められることを明確に留保する必要がある。


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