[ 経団連 ] [ 意見書 ]
経団連第61回定時総会 総会決議

「産業競争力の強化と経済の活性化のために」

1999年5月25日
(社)経済団体連合会

昨秋以来、政府が講じた金融安定化策、緊急経済対策、低金利政策等の需要喚起型の景気対策の効果により、わが国経済は最悪期を脱し、景気は下げどまりつつある。今後とも、政府は切れ目のない景気対策の執行に努める必要があるが、われわれ経済界としても、企業活力を発揮し供給構造を改革することで、景気の本格回復を達成し、21世紀に向けて日本経済を活性化していかなければならない。
供給構造を改革し、産業の競争力を強化するためには、企業は自立、自助、自己責任を原則に、自らの行動、慣行、制度を思い切って改革していく必要がある。また、企業は国民の信頼を高めるため、企業倫理を遵守し、コーポレート・ガバナンスを強化しなくてはならない。一方、政府には、改革実現のため企業法制・税制の改正など一層の環境整備が求められる。
少子・高齢化が急速に進行する中で、構造改革により産業の競争力を強化し、経済を活性化することは、わが国にとって国際的責務でもある。

  1. 産業の競争力を強化する。
  2. 金融機関は不良債権を早期に処理するとともに、効率的で使いやすい金融市場を構築する。産業は過剰設備・過剰債務を解消し、供給構造を改革する。
    政府は企業法制・税制の改正、高コスト構造の是正、規制の撤廃・緩和、雇用のセーフティ・ネットの充実などの環境整備を行なうとともに、企業は活力を発揮して、既存産業の活性化、新事業・新産業の創出、雇用機会の確保に取り組む。
    また21世紀を担うリーディング・インダストリーの国家戦略策定、産官学の人的交流の促進や知的財産政策の積極的展開など技術開発推進の方策、創造的な人材育成のための教育改革に向けて官民が協力する。
    産業の競争力強化のためには、為替の安定化が強く望まれる。さらに、決済システムの整備や金融・資本市場の整備等を踏まえて、官民で円の国際化を推進する。

  3. 構造改革を推進し、将来への不安を払拭する。
  4. 少子・高齢化が急速に進行する中で、国民の将来不安を払拭し、経済を活性化するには、官民が協力して年金・医療・介護等の社会保障制度を持続可能なものに改革しなければならない。その際、国民負担率の増大を抑制しながら、給付と負担のあり方や直間比率を見直す。また、小さく効率的な政府の実現への努力を継続するとともに、行政改革を一層すすめる契機としての首都機能移転を早期に実現し、今後は地方の行財政改革をさらに推進する。事後チェック型社会の実現のため、法曹人口の増大や裁判の迅速化などの司法制度の改革も求められる。

  5. 未来につながる社会基盤を整備する。
  6. 国民が安心して暮らせる豊かな国づくりをすすめるため、国・地方は住宅、情報通信、物流、社会福祉、環境などの社会基盤を重点的に整備する。その際、民間の経営資源を活用するPFIを積極的に利用する。民間活力を利用して全国の都市を再生するため、住宅・都市開発にかかる規制緩和、税制改正、土地の流動化・有効活用をすすめる。

  7. 自主的な取り組みを中心に据えた地球環境の保全に努める。
  8. 経済界としては、経団連地球環境憲章および環境アピールに基づく環境自主行動計画の着実な実施により、地球温暖化防止対策、廃棄物問題、化学物質の管理等に主体的に取り組んでいく。また、生態系保護の観点から、企業の自然保護活動を一層充実させる。

  9. 貿易、投資の拡大に向けて産業界の取り組みを強化する。
  10. 経済界としては、各国政府、産業界との対話を強化し、双方向の貿易、投資の促進に努めるとともに、WTOの次期自由化交渉はじめ多国間、二国間交渉に、わが国産業界の意見が反映されるよう努める。特に、アジア経済の再生に向けては、わが国企業の対アジア投資を継続するとともに、人材育成、裾野産業の育成等に協力する。

以  上

日本語のホームページへ