[経団連] [意見書] [ 目次 ]

電子商取引の推進に関する提言

参考資料2:
電子商取引の財別・課題別マトリックス表


A.課税
B.関税
C.知的財産権
D.暗号
E.認証
F.データ保護
G.責任・義務
H.契約

凡例
◆:各種文献より
▼:ヒアリングより
■:実態調査より
A.課税
個別 1.情報財 ■課税・徴税の仕組みづくりが困難
  • オンライン取引が行なわれる情報財には課税、徴税が困難。
2.サービス財 ■非課税対象の商品・サービスの取扱い
  • 国際通信サービスは消費税等の非課税対象であり、これに新たな課税を課すべきでない。
3.金融商品財
4.物財 ■酒類販売の需給調整廃止の早期繰上げ
  • 現在、酒類販売業については、地域ごとに需給調整が行なわれている。また、通信販売については、入手困難な地酒等に販売品目が限定されている。そこで、酒類販売業の需給調整廃止の早期繰上げと通信販売における品目制限の廃止が求められる<酒税法>。
共通 ◆■公正な課税の枠組みの整備(課税地の特定、徴収方法等)
  • 課税範囲や所得の源泉地をどのようなルールで特定するか。
  • 間接税をどのような方法で徴収するか。
  • 二重課税・課税逃れをどのように回避するか。等
■課税に関する国際ルールの整備
  • 課税対象国・地域に関する国際ルールの整備(例:ソフトウェアライセンスを取得して海外のサーバーを使用した場合、課税はサーバーの所在地か、使用者の居住地か)。
  • 海外取引における消費税の取扱いに関するルールづくり(課税方法、支払手段、為替レート等)。
  • 国際取引における諸税の課税処理の仕組みづくり(所得税、消費税、源泉税等の課税を自動的に処理できる仕組みが必要)。
■課税そのものの弊害/問題
  • 「インターネット課税」は消費者の潜在的購買意欲を抑止するものであり、電子商取引の普及を阻害する。
  • 課税ルールの調整が複雑で管理コストが高くつく。
B.関税
個別 1.情報財 ■デジタル・コンテンツ提供の非関税化
  • ネットワーク上で取引されるデジタル・コンテンツを非関税とするWTOの暫定措置を維持し、WTOミレニアム・ラウンドにおいて、国際的な合意がなされることが必要である。
  • ダウンロードによる音楽、情報などのサービス提供はネットの特性の一つであり、ネット取引拡大の観点からは、関税の設定は消費者の購買意欲を抑制するため行なうべきでない。
◆■デジタル・コンテンツ提供と既存パッケージ商品との整合性
  • また、公平性を確保するため、同様のサービスがCDなどの媒体により取引される場合も関税の課税対象外とすべき。
2.サービス財 ■非課税対象の商品・サービスの取扱い
  • 国際通信サービスは、通信相手国と相互的に提供されるサービスであり、関税の対象ではない。今後も同様であるべきと考える。
3.金融商品財
4.物財
共通 ■関税に関する国際ルールの整備
  • 販売チャネルの違いにより課税の取扱いに差異が生じないよう、関税の仕組みについて、国際的な枠組みの中で協調的な検討を進める必要がある。
  • 電子商取引はボーダレスであるため、関税について
    • 無税とするのか、課税とするのか
    • 課税する場合、課税権は購入者国と販売者国のどちらにあるのか、
    などの検討が必要になる。
  • モノに対する課税につき、
    • 購入者負担か、販売者負担か
    • 契約のみがネットワーク上で行なわれ、有体物が移動する場合、課税されるのか、されないのか、
    等の問題に関する取扱いルールを整備する必要がある。
  • 国際取引の場合、各国ごとにFOB基準、CIF基準及び内陸諸掛りの課税対象基準が異なっており、特に電子商取引においては調整が複雑になる可能性がある。
■関税そのものに関する弊害/問題
  • 電子商取引に課税すると徴税コストが増大する。
  • 税収とコストとのバランスを調整する必要がある。等
C.知的財産権
個別 1.情報財 ◆インターネット(デジタルコンテンツ)販売への対応、著作権管理の仕組み整備

■音楽CDのオンライン・ディストリビューションにおける権利調整
  • 確実に課金のできる仕組みが必要。
  • 既存のパッケージ販売の流通では、新譜のヒット曲は品切れが生じたり(機会ロス)、一方で大量の在庫リスクを抱えると言う構造的問題がある。パッケージ販売とノンパッケージ販売を組み合わせることで、マーケットのパイは確実に拡大する。
2.サービス財 ■デジタルコンテンツのネットワーク送信に関するオンラインサービスプロバイダの責任の明確化
(米国では、著作権法が改正され、オンラインサービスプロバイダの責任が規定されている)

◆ドメイン名の登録ルール設定と商標問題の解決
3.金融商品財
4.物財
共通 ■知的財産権保護の枠組みの整備
  • デジタルコンテンツの権利者の明確化と権利保護管理の仕組みの整備
  • デジタルコンテンツの著作権料についての国内コンセンサス
  • ネットワーク上に送信された情報の「公知性」および「営業秘密性」の管理基準の明確化
◆■知的財産権の国際間調整
  • 各国間で知的財産権に対する規制・保護に相違があるため、グローバルなコンテンツ流通については不正への対応が課題
  • デジタルテキストコンテンツ等の権利化について、電子的な日付管理(タイムスタンプ、ディジタル署名)等を行なう場合、各国方式の相異による信頼格差の存在の許容と不正への対応が必要。
  • 日本の法律、商習慣と異なる対応を要求されることがあり、訴訟になった場合の損害、リスクが大きい。法制度面での側面援助が必要。
D.暗号
個別 1.情報財
2.サービス財 ■インターネット上でのSETカード決済ソフトの輸出規制対象からの除外
  • 暗号技術の輸出規制についての国際合意(ワッセナ-・アレンジメント)に基づく国内法令(外為法)により、SETソフトウェア(消費者向けワレット)を消費者に配布する方法が限定されている(現在は、会員に限定し、身元を確認の上CD-ROMの形態で配布)。
    SETの一層の普及・促進による安全な電子商取引の発展の為に、雑誌の付録やダウンロードなどによる簡便な方法でワレットを広く配布するため、ワレットの輸出貿易管理法令上の規制対象からの除外が必要。
3.金融商品財
4.物財
共通 <複数の暗号を利用する際の課題>
◆■暗号方式(安全性、利便性)の指標化
  • 標準/指標がないために投資が促進されず(普及が遅れるため)、高コストに留まる可能性がある。
    • 実務上、その暗号がどの程度安全であるかについては、やってみないと分からない面が残るため、社会的な評価が固まるまで推進は困難。
◆複数の暗号の互換化の推進。

◆安全性を考慮した上での「検証方法の標準化」。

<法的課題>
◆「法に基づく入手」に関する情報を保管する鍵管理機関の運用に対する注意が必要(監視等)。

◆企業などの組織が分割・合併・倒産などになった場合の、署名の証跡の管理方法が課題。

<暗号政策における課題>
◆輸出規制による暗号関連技術の発展の遅れ

◆各国の認証制度の整合性の確保
→ 国際的な認証機関の必要性

■暗号方式の国際的標準化/指標化
  • 海外と国内で暗号方式の基準が異なることは問題であり、国際的な標準化が必要。
  • 輸出規制によってグローバルな流通が阻害されるが、一方で、国防上は国単位で主権を持つことも重要。
上記2つの命題を解決すべき最適な解はどうなるか。国産暗号の普及をどうするかが課題。(現在は米国に押され気味)

<その他>
■暗号導入コスト高による弊害/問題
  • 一旦、企業側に導入しても、数年後には不充分となる可能性が高い。その更新のための投資コストを考えると、どこまで深入りするか判断が困難。
  • 暗号化のための設備投資が高く、業務上の安全を考えると専用線等の利用を考えざるをえない。このことが中小企業にとって、電子化の大きなハードルとなってしまう。
E.認証
個別 1.情報財
2.サービス財
3.金融商品財 ■電子署名の普及推進
  • 保険契約手続きに際しては、申込書・告知書等の顧客・保険会社間の契約のみならず、継続保険料の口座引落のため、銀行等との契約も必要。従って、当該手続きを電子取引として完結させるにはデジタル署名が不可欠であり、契約主体も上記のように保険会社にとどまらないことから、デジタル署名を一般化させることが肝要。
4.物財
共通 ■認証機関の多様化〜指標づくり
  • 悪意ある者のなりすましを防ぐリスクマネジメントにかかるコストと実際のリスクコストのバランスが重要。当面は色々な手段が開発されればよい。
  • 認証機関が複数存在するが、そのうちどの機関を選択すべきかの判断がつかない。信頼性を表す明確な指標が必要。
▼技術のみでなく、運用によるセキュリティ確保の環境整備・普及
(BBB Online等のセキュリティ格付け等)

▼■公的な認証サービスの提供
  • 認証サービスについては、公的な認証サービスと民間の認証サービスを、場合によって使い分けできることが望ましい。民間の認証サービスについての規制は、新規事業を促進する観点から最低限のものであるべきである。
  • 技術進歩への追随ができず過剰規制に陥りがちなので、政府は介入しないようにすべき。
■統一的な認証機関の設置(決済方法は多様化)
  • ユーザは複数の決済方法から目的に合う決済方法を選択できるように望んでいる。銀行・ローン会社・証券等を中心とした統一認証機関があるとECは飛躍的に発展すると考える。
■監視グループや補償規定などの社会システムの育成・強化
  • 米国に存在している「サイバー監視」グループの育成や、法的制裁などを推進すべき。
  • 電子署名標準の早急な策定と普及が求められる。その際、なりすまし等の不正に対する免責や補償規定(仕組み)がセットになっているべきである。
■セキュリティへの心理的不安の解消

■ 電子署名の普及推進
  • 電子署名が手書きの署名や押印と同等に通用するための基盤整備。
  • 政府が電子調達、納税等の面で率先して取り組むべき。
■電子署名の国際相互認証
  • 認証局が発行した認証書間の相互認証環境の整備。
F.データ保護
個別 1.情報財
2.サービス財 ▼プライバシー技術への理解不足
→ 心理的抵抗感からの利用拒絶(医療分野)。
3.金融商品財
4.物財
共通 ▼プライバシー保護に関する基礎知識の向上(啓蒙・教育)
  • 学校等におけるセキュリティ教育の充実
    (「なんとなく恐い」という心理的不安から利用を控えるケースが多い)
■プライバシー保護の法制化
  • 日本におけるプライバシー保護はガイドラインとPマークに拠っており、ある種自主規制に近い。プライバシーの侵害については刑法上の罰則が必要なのではないか。
  • プライバシー保護に関して言えば、各業界団体等におけるガイドラインが作成されているが、例えば業界団体に加入していないアウトサイダー的な企業への対応を求めることが困難である等の問題があるため、法制化等を考慮することも必要。
▼セキュリティポリシーの公表

▼公的機関によるオーディット(監査)の実施

◆■国際間調整
  • 各国の保護レベルが異なる状況において、国内はもちろん、海外での問題を国内で受け付けるような機関が必要。
  • 電子商取引における個人データ保護の確保
    電子商取引の進展に伴い、大量の情報が国境を越えて送受信されることとなり個人データ情報の保護が大きな問題となる。消費者が安心して電子商取引を行なえる環境整備が必要となる。そのためには
    1. 日・欧・米の個人情報保護に係わる基準の確立
    2. 国内における個人情報保護に関る統一基準の確立、
      および欧米との相互調整
    3. 基準の確立に関し過度な規制の排除
    4. 個人情報に関する認識の消費者への啓蒙・教育の徹底
    が必要。
G.責任・義務
個別 1.情報財
2.サービス財 ◆旅行業法等における各種表示・通知義務による業務効率の低化
−顧客への書面での約款通知義務
3.金融商品財 ▼紙面での署名/捺印義務による業務効率の低化
4.物財
共通 <消費者側の責任・義務>
◆■自己責任・義務の啓蒙
  • 契約とか責任と義務についての教育が行なわれているとは言い難い。米国では、家庭も含めて子供の時からこれらについて種々の場面で教育/訓練されており、日本でもこのような教育を進めるべき。
◆クレジット取引でのカード会員の管理義務(割賦販売法)
  • ・カード会員の責任と管理義務の喚起・啓蒙
    (←カード会員の商品等購入時の証票提示義務)
<販売業者側の責任・義務>
■情報開示の義務化と行政監視
  • 電子商取引上においては、消費者は提供者側の信用度を確認する手段として、提供者側の情報公開の義務化が必要。併せて行政機関による監督を行なうべき。
◆消費者への情報提供
  • 個人情報保護に関する販売業者への義務付けが必要
  • 消費者保護に関する販売業者への義務付けが必要
  • 消費者に対する商取引に関する各種情報提供の義務付け
◆クレジット取引における書面交付義務(割賦販売法)
  • 約款について電子データ化して暗号化等の安全措置を施した上で配信する方法を認める
  • 販売時の書面交付は、その商品等の特性により電子メール等の使用を認める
◆商取引におけるトラブル予防
  • 消費者保護とシステム安定
  • デジタル・コンテンツ取扱いに関するトラブルの予防措置
  • 返品・キャンセル時における消費者保護
<認証局に関する責任・義務>
◆認証制度における認証局の責任範囲の明確化

■ショップの認定・格付け〜賠償責任の明確化
  • 消費者が容易に判断できるよう「マーク付与制度」の実現が重要。また、「マーク付与制度」を信じた場合に被った損害について、責任分担のあり方について検討すべき。。
<プロバイダに関する責任・義務>
◆プロバイダのコンテンツ管理責任範囲の明確化

◆ログ保存義務付けの是非の検討。

■キャリア、プロバイダー等の責任負担の明確化
H.契約
個別 1.情報財
2.サービス財 ▼インターネット販売とリアル販売での手数料等の違い
−インターネット販売とリアル販売で仲介事業者が支払う使用料や受け取る手数料が異なる。

▼ 外国人向けレートで販売する海外のトラベルサイトとの競合。

▼ 「自己責任」の考え方の理解・普及
−旅行会社の倒産対策として、モール上の店舗保証金を増やすと優良企業も弱体化。

■交付書面の電子データ化の実現
  • 各種業法(割賦販売法等)に規定する書面交付義務により、現行では契約書面・約款・売上伝票・請求書等の書面による交付が義務付けられている。電子商取引の特性である即時性・双方向性・24時間対応の観点から、コスト削減や顧客の利便性向上等を可能とするため、各種書面の電子データ化が法的にも実現される必要がある。
3.金融商品財 ■領収証の電子データ化の実現
  • 領収証の電子化(責任開始証明の即時交付)
    保険契約において、第1回保険料収納後、領収証を交付する必要があるが、当該保険料収納は、保険契約成立(責任開始時期決定)の1要件であり、領収証はその収納の証明となる。従って、電子取引において保険契約手続き、銀行振込またはクレジットカード手続の後、速やかに領収証を交付できる仕組みを整備すべき。そこで、領収証のデジタル化の仕組みづくり、法的措置等が望まれる。
4.物財
共通 <現行法の適用>
◆ 契約成立要件/責任等取引ルールの明確化

◆ 準拠法/裁判管轄ルールの明確化(消費者と事業者のバランス)

■民法ルールの電子商取引への適用の是非の明確化
  • 契約成立時(意思表示の効力発生時期)、契約・意思表示の有効性(キー誤操作等の場合の錯誤の扱い等)、「なりすまし」等無権限者による契約による場合の取引相手の保護、データ伝送過程におけるエラー(データ化け等)への対応、等について現行民法ルールの適用の是非について明確化することが必要となる。
<新法の検討>
◆技術革新に対応しやすい法制の整備

■商取引ルールの整備
  • サイバー取引にはサイバー商法が必要。(発信主義/到達主義、クーリングオフ、ネットワーク断等の問題について)
    • ミニマムルールを作り、電子商取引の導入を促すと共に、将来の技術革新や仕組みの見直しに対応できるようにしておくことによって、徐々に整備する方向で良いのではないか。
<国際間の契約>
■国際的な交付書面の電子データ化の実現
  • 紙による契約書がない限り、契約が認められない国もあり、国際的に電子的な契約が認められる環境が必要。

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