[経団連] [意見書]

大胆な規制改革の断行を求める

1999年10月19日
(社)経済団体連合会

  1. 21世紀に向け民主導・民自律型の経済社会を
  2. わが国経済が戦後最大の危機に直面し、企業を初めとする経済社会が厳しい改革を迫られる中、国民は雇用情勢の悪化、年金不安など将来への不安を強めている。
    21世紀を迎えるにあたって、これらの課題を克服し、豊かで活力のある経済社会を引き続き維持していくためには、その構造を明治以来の官主導・官依存型から民主導・民自律型に転換し、個々人が安心して個性や創意工夫を発揮できるようにすることが不可欠である。そのためには、硬直化し既得権益を擁護するための体制と化した従来の規制の枠組みは大胆に改革し、消費者利益や環境保護との調和を図りつつ、自己責任原則と市場原理に基づく自由で公正・透明な新たな規制制度を築き上げなければならない。
    なお、その際重要なのは実現までのスピードである。既得権益を失うことに対しては様々な政治的圧力が予想されるが、情報を開示することによって国民の理解を得つつ進めることが肝要である。

  3. 規制緩和から規制改革へ
  4. 本年4月にOECDから出された規制改革対日審査報告書においても指摘されたとおり、狭義の規制に留まらず、競争政策、消費者政策、情報公開、雇用政策などの諸政策も総合した、国際整合化の視点に立った規制制度改革が重要性を増している。たとえば、わが国の街並みが色や高さなど雑然としていることはつとに指摘されるところであるし、インフラ整備の遅れの原因の一つに土地収用がなかなか実施できないことが挙げられている。また、セキュリティーに関連した制度の不備、金融や雇用分野等におけるセーフティーネットの整備の遅れ等も指摘されている。規制の撤廃・緩和の一方で、21世紀にふさわしい新たなルールの確立が必要である。政府は、本年4月、規制の緩和、撤廃にとどまらず事後チェック型行政への転換に伴う新たなルールの創設や、競争政策の展開などを重視する規制改革を推進するため、規制緩和委員会を規制改革委員会と改称したが、その成果に期待したい。
    一方、規制に安住し、自己革新努力を怠った企業が、国内外の市場の信任を得られず、市場からの退場を余儀なくされている。企業も、グローバルな視点に立って自助・自立・自己責任の貫徹を自らに厳しく課し、行政への依存体質から決別するとともに、企業倫理を確立し、消費者や国民から信頼される企業を目指す必要がある。

  5. 規制改革推進の視点と課題
  6. 1990年代前半からのこれまでの数々の取り組みにより、規制緩和は経済分野を中心にかなり進展し、それに伴って新たな産業や雇用が創出されるとともに、消費者の利便も大幅に向上した。しかし、依然残された課題も多く、今改めて、下記の視点に立った大胆な規制改革が求められている。

    1. 経済活性化のための規制改革
    2. 我が国の喫緊の課題である経済の活性化のためには、様々な事業分野に存在する規制、特に自由な事業活動を阻害する参入・設備・価格等に関する規制を全面的に撤廃・緩和し、市場原理に基づき、企業・個人が自由に市場に参入し創意工夫を発揮しうる基盤を整備することが最も重要である。
      需給調整の観点から行なわれている参入規制については、繰り返し「撤廃の方向で見直す」と閣議決定されてきたにも拘わらず、未だに酒類の製造・販売(卸・小売)業、製造たばこの小売販売業、タクシーをはじめとする運輸業、通関業等に残されている。また、トラックの営業区域規制、銀行の店舗設置の認可制、あるいは保険商品の認可制等、自由な事業活動を阻害する規制も残されており、これらについては原則として早期に廃止すべきである。
      同時に、公共施設の設置・運営や検査・検定等、これまで民間企業の参入が規制されてきた分野についても、小さな政府の実現、当該分野の活性化、そして競争を通じたサービスの向上とコスト低減のため、民間参入を促進すべきである。

    3. 産業競争力強化、高コスト構造是正のための規制改革
    4. わが国産業の競争力を強化し、経済の活性化に資するとともに、安価で良質の製品・サービスの提供を可能とするためには、産業の活動の制約やコスト・アップ要因となっている規制を見直していかねばならない。小麦・砂糖の価格支持等の原料調達にかかわる規制やエネルギー関連の規制、車両諸元をはじめとする物流に係わる各種規制、住宅・駐車場付置義務や水道事業等の土地・住宅に係わる規制等の整理・合理化を早期に図るべきである。また、わが国企業が、世界市場において欧米等の強大企業に伍して競争していくため、現行の競争政策の見直しも必要である。

    5. 経済社会環境の変化に対応した規制改革
    6. 雇用形態の多様化・流動化、少子高齢化の急速な進展、リサイクル社会の実現への要求、情報化の進展等、経済社会環境の変化等に対応し、これまでの国民や企業の行動様式や活動範囲を前提とした各種規制も見直しが迫られている。例えば、労働移動の円滑化を妨げている雇用・労働関係の規制、福祉・医療の効率化を妨げている規制、リデュース・リユース・リサイクルの視点が十分に反映されていない廃棄物関係の規制、今後の進展が期待されるいわゆるインターネット取引等の電子技術の活用を阻害している各種業法等における規制などは、時代の要請の変化に対応して柔軟に見直し、制度の改革を進めていくことが必要である。
      なお、地方自治体による許認可等の手続や運用が現在の狭い行政区域の下で区々のままでは、企業や国民に無用な負担をかけることになるので、国がガイドラインを示す必要がある。

  7. 具体的な規制改革要望
    1. 経済の活性化に役立つ規制改革
    2. 産業競争力の強化、高コスト構造の是正に役立つ規制改革
    3. 経済社会環境の変化に対応した規制改革
    4. (雇用の拡大・労働移動の円滑化) (年金・医療・福祉分野の改革) (教育改革) (リサイクル社会の実現) (情報化社会の構築)

    5. その他
以 上

大賀副会長・行政改革推進委員長 記者会見の記録
「大胆な規制改革の断行を求める」の発表


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