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企業人政治フォーラム速報 No.68

PDFファイル版はこちら 2000年 3月31日発行

規制緩和について
─ 原田昇左右 衆議院議員
( 2月17日政経懇談会)

政府では、「規制緩和推進3か年計画」の再改定を予定しているが、2月17日の政経懇談会では自民党行政改革推進本部の規制改革委員長の原田昇左右衆議院議員を招き、構造改革・規制改革に関連する諸課題や今後の方向性等について話を聞いた。

【日本経済が目指すべき方向】

私は、自民党の規制改革委員長(行政改革推進本部)として、規制改革の「旗振り役」を務めている。政府においても、オリックスの宮内氏らが熱心に規制改革の問題に取り組んでおられ、「規制緩和推進3か年計画」の改定についても、3月までにある程度の結論を出すという方向でやっていただいている。自民党の規制改革委員会では、常に政府の委員会と連絡を取り、特に重要な事項の中で各省の抵抗が強いものについては、各省の担当者を呼んで「尻を叩く」という、いわば「ブルドーザー」的な役目を果たしている。
私は、構造改革というものが非常に重要であると認識している。現在のやり方のように、需要を追加すれば、多少は景気も回復するであろうが、その後には膨大な借金が残る。また、これを止めてしまうと景気がしぼんでしまうようなことでは話にならない。マスコミなどでは「今後は右肩上がりの成長はあり得ない」とペシミスティックに書き立てていたが、こういった考え方こそが経済活動の活性化を妨げている最大の元凶であるように思う。
政府の見解では、平成12年度については1%の経済成長は確実であるということになっているが、ここ1年半ほどの期間に、GNPの1割を上回る額の赤字国債を発行して、景気対策を実施してきたのであるから、国民の側では「1%程度の経済成長は当然である」という「白けた」ムードしか見られない。さらに、将来の老後の生活に対する不安が背景にあるために、個人消費が回復せずに、設備投資も沈滞したままである。少子高齢化が進展する中で、年金に対する懸念も流布されている。これに対して、政治の側では、現在、年金法の改正を打出しているが、介護保険と年金によって、国民に老後の生活保障に対する安心感を与えることが何よりも重要である。
そこで今、日本経済にとって一番大切なのは、いかに経済を回復の軌道に乗せ、一方で、累積する財政赤字をいかに解消していくのかという「道筋」を明らかにすることである。また、国民に対しては「未来は明るくなる」という確信を与えることが重要である。そのためには、国や地方が膨大な負債を確実に返済し、民間経済が活力を生み出すように配慮しなくてはならない。
実際、私は日本経済の将来は極めて明るいと考えている。これからの世界は、従来のように、単純に軍事力で覇権を狙うような世界ではなく、文化や、あるいは経済、技術力といったものを通じて、世界の中で自らの考え方を伝えていく、「ソフト・パワー」の時代になるだろう。そもそも、日本は武力によって問題を解決することを放棄しており、そういった意味で、「ソフト・パワー」の時代の到来は日本にとって都合の良いことではないかと思う。今後、この「ソフト・パワー」を発揮するためには、国民がそれぞれしっかりとした人格、能力を備えて、人間的な魅力を持つことによって、世界の人々から尊敬を受けることが大切であると考える。

【「IT革命」と日本経済】

近年のアメリカ経済を見ていると、新しい「IT革命」の「波」に乗って高い成長率を維持している。一方で、日本経済は、90年代の「IT革命」に乗り遅れた。しかし、最近になってようやく日本国内においても「火がつき」始めて、パソコンの販売台数が1000万台に達するようになった。今後は、「IT革命」の成果を取り入れられるような仕組みを整備することが肝要である。
「デジタル革命」、「ネットワーク革命」の二つは「IT革命」の中核を成すものである。これらは経済・社会システムに対して、根本的な変革を迫るものであり、新しい需要を生み出すパワーを備えてる。確かに、90年代に、日本はアメリカに対して若干の遅れを取ったことは事実であるが、今やアメリカに追いつこうとする試みが始まっている。その中でも、携帯電話の普及は非常に急速で、固定電話に迫り、それを超す勢いである。特に、昨年、NTTドコモがボタン一つでインターネットに接続できる「iモード」を開発し、大変な需要が殺到している。現状では、パソコンを購入する際の最大の目的はインターネットに接続することであるから、パソコンの主な機能が携帯電話でカバーできるということになり、これは大変なことである。
このように日本の携帯電話の性能は非常に良いが、その規格は日本国内においてしか通用しない。EUやアメリカの方式が世界各地で採用され始めており、中国などでの今後の膨大な需要を考えると、早期に世界標準規格を確立して、日本の優れた技術を国際市場に出していくことが重要である。そこで、自民党規制改革委員会からも郵政省に働きかけて、ようやくIMT-2000 (International Mobile Telecommunication - 2000) という規格が完成した。今後、2010年までの10年間のIMT-2000関連の累積市場規模は、設備投資を含めて約42兆円にのぼると予想されており、雇用についても、57万人程度の雇用を生み出すものと期待されている。これはあくまで国内需要のみであるので、国際的な展開を考えると、さらに大きな需要が見込まれることになる。なお、IMT-2000については、今夏までに事業者を決定し、2001年からのサービス開始を予定している。
また、携帯電話以外の分野で日本が優位に立っている分野としては情報家電の分野が挙げられる。従来から、日本は家電を得意としていることもあって、家電製品のデジタル化においても、十分に世界をリードしていけるのではないかと思う。その他、カーナビゲーションに関しても、日本のシステムは事実上の世界標準規格になっているし、ITS (高度道路交通システム) やETC (自動料金収受システム) 等の新技術も、事実上、日本発の世界標準規格である。今後は、日本国内だけで満足することなく、世界市場を狙って「デファクト・スタンダード」、世界標準規格を確立していかなくてはならない。
このように、技術的に大きな変化が起きると、それらを供給するツールだけを見ても非常に大きな経済効果が予想され、さらには取引の形態等、社会的な変化をももたらすことになるかもしれない。このような技術的な変化が徐々に現実のものとなり、社会を変革していくということになると、大変なエネルギーが生まれると考えられる。これこそが、今後の「IT革命」の原動力となるのではないだろうか。

【構造改革の方向性】

今後、我々はこのような世界的な技術革新の流れを念頭において、構造改革というものを考えなくてはならない。そのためには、民間の活力をフルに発揮する必要がある。それでは、国は一体何をすればよいのかということになると、行政の簡素化、政府そのものを電子化するという「電子政府」の実現、あるいは市場機能をフルに発揮するために大幅な規制改革を実施するといったことが重要になってくるのではないだろうか。
そこで、自民党では昨年7月に、「医療福祉」、「情報通信」、「環境」、「教育・科学技術」、「金融」、「PFI事業の推進」、「エネルギー」、「バイオテクノロジー」等の重要分野における規制改革に向けた具体的措置を「雇用創出・産業競争力強化のための規制改革」として取りまとめた。
現状、それぞれの分野ではさまざまな規制が残っているが、ともかく、我々はしっかりと構造改革に取り組まなくてはならないのだ。そのためには、先程申し上げた通り、民間活力を大いに発揮していただく必要がある。私は、これこそが日本経済を再生する道である、と確信している。


[原田昇左右 衆議院議員プロフィール]
はらだ・しょうぞう
1923年静岡県生まれ。東京大学工学部を卒業後、農林省入省、その後運輸省に転じた。1976年に衆議院議員初当選以来、当選8回。1989年、第一次海部内閣では建設大臣を務めた。現在、自民党行政改革推進本部の規制改革委員長。

経団連、「規制改革に関する重点要望」を発表

経団連では、「規制緩和推進3か年計画」の再改定に向けて、「規制改革に関する重点要望」を取りまとめ、2月8日に発表した。内容の詳細についてはインターネット上、経団連ホームページにて公開中。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2000/003.html


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