(公財)経団連国際教育交流財団日本人大学院生奨学生留学報告

米国ロースクールへの留学

奥村 舞 (おくむら まい)
2010年度奨学生
神戸大学大学院からバージニア大学に留学

友人達とワシントンD.C.へ遊びに
行った際、リンカーン記念館の前で

私は、2010年の8月から約1年間、アメリカのバージニア州にあるバージニア大学ロースクール修士課程(LL.M.コース)に留学した。振り返ってみても、ロースクールへの留学は、非常に得たものが多かった。

研究面では、国際海洋法裁判所が2011年に出した初めての勧告的意見を分析・検討して、同勧告的意見の意義について論文を書いた。海底資源探査活動に携わる個人・団体を保証する国の責任・義務についてというのが命題であったが、私は特に、海底資源探査活動の現状と本勧告的意見に至った経緯としての国際海底機構での議論を整理した上で、裁判所が探査活動への発展途上国の参加を国際法の枠組みでどう解釈するかに焦点をあてた。論文の指導をして下さった教授は国際海洋法の第一人者でいらしたので、その教授の授業やセミナーへの参加を通して、海洋法分野における最新の動向を伺い知ることもできた。

授業の面では、専門である国際公法の授業を中心としながらも、英米法を現地で直接学べるよい機会だと捉え、アメリカ法の授業も積極的に履修した。特に履修して良かったのは憲法の授業で、各時代の裁判所の判事達の眼を通して当時のアメリカを二分する議論について詳しく学べ、判例の変遷を読むにつれアメリカの法制度や価値観が徐々に形成されてきた様子がよく理解できた。

また、噂には聞いていたアメリカのロースクールのタフさを、身をもって体験した。授業で求められる予習量が膨大であったため、前期は授業についていくのに苦労した。後期は、その反省を踏まえてより効率的な勉強の仕方を身に付け、授業中のディスカッションにも参加する余裕ができた。ロースクールで使った勉強の仕方は、現在にも活きている。

私はもともと法実務の現場で働くことを希望していたが、留学を通して、国際法を使いこなすためにも、業務のスピード感と効率性、法実務のセンスとスキルを磨ける民間企業の立場で実務経験を積みたいと強く思うようになった。ロースクールの学生の多くが実務家を目指して勉強し、留学生の同級生も皆母国で実務家としての経験が豊富な人達だったことも刺激となった。そこで、帰国後は、大学院に在籍しながら民間企業に就職した。

現在は、環境施策を取りこんだ社会インフラの設計・施工・管理を行う会社で法務部員として日々、切磋琢磨している。海外案件に対応するニーズが著しく増えている中で、私のロースクール留学の経験が買われたのは言うまでもないが、実際に、海外法務の担当として、留学で身につけた英米法の考え方やリサーチ能力、人脈が大いに役立っている。今後は、企業法務を幅広く経験しつつ、高度な交渉能力をもつ国際法実務家になりたい。

最後に、このような貴重な留学の機会を与えて下さった経団連国際教育交流財団に心より感謝の意を表したい。

(2013年1月掲載)

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