(公財)経団連国際教育交流財団日本人大学院生奨学生留学報告

国際都市ジュネーヴでの二年間

榮 加菜子 (さかえ かなこ)
2010年度奨学生
京都大学大学院からジュネーヴ大学に留学

大学院の友人たちと(右端が筆者)

近年日本ではグローバル人材の育成が盛んに議論されるようになった。外国語 によるコミュニケーション能力に加えて、世界の様々な文化や価値観を尊重し、変化に対応する事ができる人のことをグローバル人材と言うのだとすれば、私はそのような人材となるためには大変恵まれた環境の中で留学生活の二年間を過ごす事ができたのだと思う。

多数の国際機関の本部が置かれているスイス、ジュネーヴには、国際都市と呼ばれるだけあって多くの外国人が住んでいる。私はジュネーヴ大学に付属する国際関係・開発学大学院(Graduate Institute of International and Development Studies) にて国際法を学んだ。本格的な授業が始まる前に行われた大学院のフランス語準備クラスで、私は早くも「グローバル」な環境を体験することとなる。クラスメイトの出身国はアメリカ、オーストラリア、メキシコ、コロンビア、ボリビア、カザフスタン、ルーマニア、スロヴァキア、ラトヴィア、トルコ、ドイツ、ナイジェリアそして日本人である私。秋学期が始まるとクラスメイトの国籍はさらに多様であることが判明した。この大学院は 100以上の国から教授陣、生徒が集まっている事が特徴の一つなのだ。休み時間になると(時には授業中でさえ)あちこちから様々な言語が聞こえてきては、一瞬で別の言語へと変わる。授業中の態度や余暇の過ごし方など様々な点が国や地域によって異なり、はじめは戸惑う事もあったが、徐々に違いを楽しめるようになった。

国際法とは国と国との間で取り決めた法律(条約など)や国家間の紛争の法的な解決(裁判など)を学ぶ学問である。そう考えると多様な価値観を知る事はこの学問にとっても不可欠なのかもしれない。その中でも私は人権に関する条約とそれを遵守する際に 生じうる問題点に焦点をあて、留学中は理論と実務両方の観点から研究を進めた。大学院では政治、開発、歴史学等の他学科の 講義にも参加できるため分野横断的な研究が可能であり、また国際機関で働く実務家の話を身近に聞く機会が多くあった事から、視野を多いに広げる事ができた。例えば健康権に関する授業はWHO(世界保健機関)の専門家によって行われたし、経済法の課外授業ではWTO(世界貿易機関)まで赴いた。そして何よりも夏期休暇中に西アフリカのガーナにて行った人権委員会でのインターンは、国際人権法の実効性を高めるためにはどうすれば良いのか、文化や慣習と人権保護の調整をどのようにはかることができるかといった議論を修士論文で深めるにあたり大変貴重な経験となった。

すべての学期終了後、私は式を目前にして再度ガーナに渡り、ユニセフにて子どもの権利に関わる部署でインターンをする機会をいただいた。今後も留学時代に培った知識、現場の視点、多様な文化を尊重する態度を大切にしながら、自分が世界にどのように貢献できるかキャリアを模索していきたい。最後に、このような素晴らしい留学生活を可能にしていただいた経団連国際教育交流財団の皆様に心より感謝を申し述べたい。

(2013年1月掲載)

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