[ 日本経団連の概要 | 業務・財務等に関する資料 ]

2002年度事業計画

(社)日本経済団体連合会

I.序 文

わが国経済は長期にわたり停滞し、国民の間にも将来に対する閉塞感が蔓延している。この難局を打開するために、官民は構造改革を果敢に進め、人間尊重の精神のもと、自己責任原則が貫徹される、真に民主導の経済社会システムを構築し、新たな成長の礎を築かなければならない。
そのため、国際競争力強化に向けた経営の実現と企業の社会からの信頼回復、新たな事業・雇用機会の創造と地域活性化、社会労働分野における改革の推進、さらには地球環境問題の解決に積極的に取り組む。加えて、それらの諸課題の実現に向け、商法・税制の国際整合化、雇用のセーフティネットの充実などを強力に働きかけるとともに、簡素で効率的な政府の実現と国民生活の質的向上に一層注力していく。

同時に、経済のグローバル化が進む中において、戦略的な対外経済政策の推進を図るべく、WTO新ラウンド交渉に経済界の意見が十分反映されるよう、政府との連携を深めていく。また、諸外国との対話を促進すべく民間経済外交を展開していくと同時に、OECD等の国際機関との政策対話やILO活動への積極的参画を進める。

さらに、提言する政策の実現に向け、政治とのコミュニケーションの促進に取り組むとともに、地方・業種団体との協力を進め、また広報活動・情報提供活動の積極的展開に努めていく。

II.事業計画の概要

【政策全般】

(1)基本方針等の策定〔総合政策委員会〕
総会決議の取りまとめをはじめ、当会の基本的な活動方針を検討・策定する。
また、具体的な活動のベースとなる、わが国経済社会のビジョンを作成するとともに、その実現のための行動計画を策定する。

【経済・法制関係】

(1)適切なマクロ経済政策運営の実現〔経済政策委員会〕
経済情勢の的確な把握に努めるとともに、適切な財政・金融政策運営のあり方について検討を進める。特に、デフレ状況からの脱却に向けて、必要な施策を検討する。また、構造改革の諸課題について検討を深める。さらに、官庁統計については報告者負担の軽減を図る。

(2)税制抜本改革の推進〔税制委員会〕
構造改革の重要な柱の一つとして税制の抜本改革を推進する。特に、住宅投資、個人消費の喚起や都市再生等に関する税制改革に早急に取り組む。また、法人課税や資産課税の抜本的軽減を働きかける。さらに、中長期的な税制のあり方について検討を深める。

(3)財政構造改革の推進〔財政制度委員会〕
公共事業、社会保障、地方財政など歳出面における合理化・効率化策とともに、社会保障負担なども含めた歳入面の抜本改革のあり方について検討を進める。

(4)持続可能な社会保障制度の再構築〔社会保障委員会〕
医療保険、公的年金、企業年金、介護保険など諸制度の改革に取り組む。特に、老人保健拠出金の廃止など、医療保険改革を政府・与党に求める。また、厚生年金基金の代行返上の早期化が可能となるよう働きかける。さらに、特別法人税の撤廃などをはじめとする年金税制の抜本見直しを求める。

(5)金融システムの構造改革の推進〔金融制度委員会〕
金融仲介機能の再生を図るとともに、幅広い投資家層に支えられた公正・透明かつ効率的な直接金融市場の強化・拡充を促進する。
このため、(1)不良債権処理の促進、(2)事後監視社会に相応しい検査・監視・監督体制の実現、(3)決済制度の整備、(4)簡素かつ直接金融誘導型の金融証券税制の確立、(5)金融サービスの各分野に係る法制・ルールの横断的整備等の課題について、必要な施策を取りまとめ、実現を図る。

(6)経済法制のさらなる整備〔経済法規委員会〕
商法の抜本改正における積み残しの課題に早急に着手するよう求めていくとともに、会社法制の整備が経済実態に即して機動的に行われるよう、立法体制の強化・充実を働きかける。
また、財務会計基準機構の活動に協力するとともに、国際会計基準審議会における検討に積極的に貢献する。
さらに、政府の司法制度改革推進本部に協力するとともに、倒産法、担保・執行法制の見直しなど経済法制の整備に、経済界の要望を反映させる。

【行革・産業・国土関係】

(1)行政改革・規制改革の推進〔行政改革推進委員会〕
特殊法人等の改革、政府の行政改革に対する取組みを注視し、改革促進に向けた働きかけを行う。
また、具体的な規制改革要望等を取りまとめ、よりスピード感のある集中的な規制改革への取組みを求めるとともに、内閣府総合規制改革会議を支援する。
さらに、政府及び関係団体などと連携しつつ、思い切った市町村合併の推進を図る。

(2)新たな成長基盤の確立、産業空洞化の回避〔産業問題委員会〕
経済の根幹である産業の国際競争力強化、高付加価値体質への転換、第3次産業を含めた生産性の向上につながる具体策を提示し、その実現を働きかける。

(3)新産業・新事業の創出〔新産業・新事業委員会〕
新事業への果敢な挑戦を促し、それらが正当に評価される環境整備を働きかける。また、ベンチャー企業経営者と会員企業経営者とが情報を交換する場を設定するとともに、「新産業フォーラム」を開催する。

(4)世界最先端のIT国家の実現〔情報通信委員会〕
世界最先端のIT国家の実現に向けて、競争促進的な法制度の構築、規制改革の推進など、情報通信法制を改革する。また、電子政府・電子自治体の実現及び公共分野におけるITの活用、電子商取引の推進、著作権などの権利処理を迅速・簡易に行える環境整備など、情報化の推進に取り組む。

(5)都市再生の実現と土地政策の推進〔国土・都市政策委員会〕
都市再生が実効あるものとなるよう、税制などについて具体的な提言を行うとともに、各地方自治体で具体化されているPFI事業について検証する。

(6)良好な居住環境の整備〔住宅政策委員会〕
住宅金融公庫の廃止に伴う新たな住宅取得方策など、成熟化社会における住宅政策のあり方について、総合的な観点から検討を行い、提言を取りまとめる。

(7)物流効率化の推進、社会資本の効率的・重点的整備〔輸送委員会〕
物流効率化に向けた検討を深める。また、道路4公団民営化をめぐり検討を行う。さらに、首都圏をはじめとする大都市圏の拠点空港の整備について検討を深める。

(8)流通分野の規制改革、農政改革の推進〔流通委員会、農政問題委員会〕
流通業における多様な業態の発展に関する基盤整備の方策を検討するとともに、流通分野における規制改革要望を取りまとめる。
また、農業政策について、有識者からのヒアリングや現地視察などを通じ、産業界の考え方を提言として取りまとめる。

【技術・環境・エネルギー関係】

(1)競争力を有する科学・技術基盤の整備と産業技術力の強化〔産業技術委員会、海洋開発推進委員会ほか〕
総合科学技術会議における科学技術政策の司令塔としての機能発揮、大学改革を含む産学官連携の推進を中心とする科学技術システムの改革を図るとともに、戦略的な知的財産政策を推進する。
また、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、ITなど、重点分野の技術開発政策について、横断的・融合的な検討を行う。

(2)地球温暖化問題への対応と廃棄物問題への取組み〔環境安全委員会〕
温暖化対策に係る環境自主行動計画の着実な実施を促すと同時に、自主行動計画の透明性・信頼性の向上を図る。また、京都議定書の批准、関連国内法の整備に関し、産業界の意向の反映に努める。
廃棄物問題に関し、環境自主行動計画のフォローアップを通じ、産業界の自主的取組みを推進するとともに、新資源産業センター構想の実現を働きかける。

(3)エネルギー問題の解決〔資源・エネルギー対策委員会、ITER日本誘致推進会議〕
エネルギーの安定供給の確保、地球温暖化問題への対応、経済合理性の追求の一体的実現に向け、総合的な観点からエネルギー政策のあり方を検討する。
また、安全の確保を大前提に、原子力の着実な利用促進に取り組む。さらに、国際熱核融合実験炉(ITER)のわが国への誘致に協力する。

(4)宇宙開発利用の促進〔宇宙開発利用推進会議〕
国としての総合的な宇宙政策の策定、宇宙開発利用に係る国際競争力強化に向けた施策や主要プロジェクトの実施を働きかける。

(5)防衛生産・技術基盤の維持強化〔防衛生産委員会〕
「中期防衛力整備計画」の着実な実施や「防衛計画の大綱」の見直しに向けて、関係方面に働きかけを行う。また、日米防衛装備・技術協力を推進するとともに、わが国防衛産業についての調査、研究を行う。

(6)自然保護プロジェクトの推進〔自然保護協議会〕
アジア太平洋地域を主とする開発途上地域ならびにわが国の自然保護保全地域において、内外のNGOが行う自然保護プロジェクトを支援する。

(7)むつ小川原開発の推進〔むつ小川原開発推進委員会〕
国や地方公共団体による各種プロジェクトの立地、とりわけ国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致や循環資源活用プロジェクトなどの推進を図る。

【社会関係】

(1) 広報・出版活動の積極的展開〔広報委員会ほか〕
政策提言や活動の背景・内容を、各種媒体を通じて広く訴え、理解と支持を得るとともに、会員企業・団体関係者に情報を提供し、経済界における合意形成を図る。また、経済界が取り組むべき重要課題の広報戦略や広報体制について、総合的見地から検討するとともに、効果的な広報活動を実施する。

(2)政治とのコミュニケーションの促進〔政治・企業委員会、企業人政治フォーラム〕
政治のリーダーシップの確立、政策・政党本位の政治の実現に向けて、経済界と政治の関係について検討を進める。また、企業人と政治家とのコミュニケーションを促進するため、企業人政治フォーラムの機能強化を図るとともに、各層において直接対話の機会を数多く設ける。

(3)企業に対する信頼性のさらなる向上〔企業行動委員会〕
「企業行動憲章」の周知徹底及び不祥事防止のための体制づくりを呼びかけるとともに、関係機関、専門家と協力して、セミナー・フォーラムを開催する。

(4)企業の社会貢献活動の推進、NPO等との連携・協働の支援〔社会貢献推進委員会、1%(ワンパーセント)クラブ〕
コーポレート・ブランドや社会的責任ある企業行動の視点から、企業財団との連携を含めた、21世紀にふさわしい社会貢献活動推進体制のあり方について検討する。
また、社会の課題解決に向けた企業とNPOの連携・協働を支援する。

(5)教育改革の推進〔教育問題委員会〕
グローバル化時代にふさわしい人材育成に向けて、多様な人材がその能力と個性を最大限に発揮し、自らの目標を達成できるような複眼的・複線的教育システムの実現を図る。政府や教育界など関係方面に対して、実効ある教育改革を働きかけるとともに、学校・地域との交流の促進を図る。さらに、企業内教育をはじめとする企業人育成について、その方向性や具体策を検討する。

【労働関係】

(1)企業経営者が採るべき指針の策定〔労働問題研究委員会〕
春季労使交渉に臨む経営側の基本的な考え方、あるいはその時代に経営者が考えるべき課題や経営者のあり方などについて、全国の企業経営者の指針とすべく、総合的に検討し、報告書を取りまとめる。

(2)雇用のセーフティネットの整備〔雇用委員会〕
雇用のセーフティネットについて、政策に経営側の意見を反映させるとともに、雇用情勢の悪化に伴う雇用保険財政の逼迫に鑑み、雇用保険制度全般の見直しなどを進める。

(3)多様性の人材マネジメントの構築〔人事労務管理委員会〕
多様な雇用の組み合わせから、新たな活力を引き出す「多様性の人材マネジメント」の構築に向け、様々な課題の解決に取り組むとともに、企業の福利厚生施策の抜本改革のあり方を検討する。

(4)健全な労使関係の発展〔労使関係委員会〕
時代に即した職務、職能、成果・貢献度反映型システム構築のための理論・手法を検討する。また、健全な労使関係の発展に向け、労使関係や人事・賃金制度のあり方に関する検討を行う。

(5)労働法規のさらなる整備〔労働法規委員会〕
労働政策審議会の審議ならびに労働関連の司法制度改革に対応し、検討を行う。また、企業組織再編に伴う労働関係についても、政府の検討状況を注視する。

(6)地域振興の推進〔地域活性化委員会〕
地域振興に向け、地域特性に立脚した多様な施策の構築を図るべく、検討を進める。また、関係方面との連携強化を通じ、実効性の高い地域産業振興策の推進を図る。

(7)中小企業の競争力、経営基盤の強化〔中小企業委員会〕
中小企業の競争力、経営基盤の強化に向け、「自立する中小企業」の形成のための支援策、雇用創出のための施策、地域経済の担い手としての中小企業のあり方などを検討する。

(8)国民生活のさらなる向上〔国民生活委員会〕
国民生活の向上と企業との関係について、国際比較などにより、明らかにするとともに、企業の競争力の向上と国民・勤労者の多様な生き方・働き方が両立できる方策、適正賃金決定などについて検討する。

(9)国際労働・社会分野に関する議論への参画〔国際労働委員会、NICC協議会〕
ILOを中心とする国際労働・社会分野に関する議論に参画するとともに、IOEやCAPEなどを通じて、経営者団体間の交流に努める。
また、NICCを通じ、途上国における経営リーダーの育成、労使関係の安定、経営者団体の育成に協力する。

【国際関係】

(1)自由貿易体制の推進・強化〔貿易投資委員会〕
WTO新ラウンド交渉の本格化に向け、わが国経済界としての重要関心分野について具体的な提言・要望事項を取りまとめる。
また、WTOを補完すべく、韓国、台湾、アセアン、メキシコなどとの自由貿易協定締結交渉の推進を働きかける。

(2)ODA改革と途上国への経済協力の推進〔国際協力委員会〕
「ODA改革に関する提言」の考え方が今後のODAの改革に活かされるよう注視するとともに、必要に応じ、さらなる提言を行う。

(3)BIAC活動への積極的参加〔OECD諮問委員会〕
各種会合への代表者の派遣、意見の提出などを通じてBIAC(OECD民間経済界諮問機関)の活動に積極的に参画し、わが国経済界の意見がOECD内の政策論議に反映されるよう努める。

(4)北 米〔アメリカ委員会、カナダ委員会〕
日米間の民間対話の強化に努めるとともに、米国の政治経済動向をテーマに随時会合を開催する。また、ニューエコノミーをもたらした基本構造について調査するとともに、日米自由貿易協定を念頭に、両国市場統合のあり方を検討する。
第25回日本カナダ経済人会議を5月に開催し、日加経済関係の拡大・多様化策などについて意見交換を行う。

(5)欧 州〔ヨーロッパ地域委員会〕
中東欧諸国へミッションを派遣する。また、第7回アジア欧州ビジネスフォーラム(9月)にわが国経済界の代表として参加する。さらに、EUビジネスマン日本研修計画の実施に協力する。

(6)アジア・大洋州〔アジア大洋州地域委員会ほか〕
4月の東南アジア・ミッションのフォローアップを行うとともに、ASEAN諸国との「包括的経済連携協定」の具体化について、必要に応じて産業界の意見を取りまとめる。また、ABAC(APECビジネス諮問委員会)日本支援協議会を通じてわが国経済界としてAPECの活動に効果的に取り組む。
二国間関係では、東亜経済人会議(12月)、ベトナム、香港、韓国(秋)との合同会議を開催する。また、中国の製造業の発展が、わが国経済やアジアの国際分業体制に与える影響を検討するとともに、環境植林環境プロジェクトなどを通じて、中国との関係を強化する。

(7)中南米〔中南米地域委員会ほか〕
中南米諸国との経済交流を促進するとともに、同地域での自由貿易協定及び米州自由貿易地域(FTAA)の交渉状況の現状と展望について情報交換を積極的に行う。
二国間関係では、メキシコ、ブラジルとの合同会議の開催に向けた準備を進める。

(8)中東・アフリカ〔中東・北アフリカ地域委員会、サブサハラ地域委員会ほか〕
中東諸国との経済交流の拡大に努める。中でも中東和平プロセスの動向を注視しつつ、イスラエルとの経済関係を一層強化する。
二国間関係では、トルコ、アルジェリア、南アフリカとの合同会議の開催に向けた準備を進める。また、イランとの経済関係強化の可能性を探るとともに、アルジェリアへの経済ミッションの派遣を検討する。

(9)ロシア・NIS〔日本ロシア(NIS)経済委員会〕
第6回日本ロシア合同会議を開催し、日ロ経済交流の活性化に努める。また、貿易促進のためのファイナンス・スキームの構築に努める。さらに、日ロ協力プロジェクトの実現や、シベリア・ランドブリッジの活性化に向けた諸方策を検討する。第3回日ロ科学技術フォーラムの開催に向けた準備を進める。

III.総会・役員会等

(1)総 会<1回>
〔事業計画・報告、収支予算・決算、役員、決議などの重要事項を決定する〕

(2)理事会<11回>
〔運営上特に重要な基本的事項を審議・決定する〕

(3)常任理事会<5回>
〔理事会の委任を受けて運営上の重要事項を審議する〕

(4)会長・副会長会議<11回>
〔運営上特に重要な基本的事項を審議する〕

(5)評議員会<1回>
〔会長の諮問に答えるとともに、会長に対して意見を述べる〕

(6)評議員懇談会<2回>
〔重要政策課題に対して意見を述べる〕

(7)評議員会議長・副議長会議<4回>
〔評議員会の委任を受けて運営上の重要事項に関し、会長の諮問に答えるとともに、会長に対して意見を述べる〕

(8)地方団体長会<2回>
〔会長の諮問に答えるとともに、会長に対して意見を述べる〕

(9)監事会<1回>
〔財産状況及び業務執行状況を監査する〕

(10)財務委員会<1回>
〔会費の分担などの事項を審議する〕

(11)顧問・推薦会員懇談会<4回>
〔当会の活動に対して助言する〕

(12)新入会員代表者との懇談会<3回>
〔新入会員に対し、当会の主要な活動を紹介するとともに、当会への要望ならびに期待を聴取する〕

(13)夏季フォーラム(仮称)<1回>
〔会長・副会長、評議員会議長・副議長、委員長が内外の重要問題を集中討議する〕

(14)事業委員会<1回>
〔経団連会館などの運営に関する事項を審議する〕
以 上

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