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日本経団連総会における奥田会長挨拶

−日本経済団体連合会第4回定時総会−

2005年5月26日(木) 午後2時〜4時
於 経団連会館 14階 経団連ホール

  1. 会員の皆様には、ご多忙のなか、日本経済団体連合会の「第4回定時総会」にご出席いただき、誠にありがとうございます。
    また平素より、当会の活動に対し、ひとかたならぬご支援、ご協力を賜り、改めて厚く御礼を申し上げます。

  2. さて、わが国の景気は、昨年来、足踏みを続けている状況にございます。しかしながら今後、世界経済が再び拡大し、また、IT関連分野の在庫調整も進展することが見込まれることから、本年後半より回復力を取り戻すものと考えております。
    企業による攻めの経営戦略や小泉内閣による構造改革が実を結びつつあるなかで、わが国は、さらに内需を喚起することを通じて安定成長を目指し、海外の景気や為替、原油・天然資源の価格動向といった情勢変化に対応できる経済をつくりあげなければならないと思っております。

  3. 私ども経済人は、足もとの景気回復という短期的問題のみならず、地球環境問題や人口減少社会の到来などの中長期的な課題も踏まえ、変化を先取りして積極果敢に経営革新に取り組んでいくことが必要であります。
    日本経団連も、政策提言力と実行力をさらに高め、「民主導・民自律型の経済社会」の実現に向けて、改革の動きをリードするとともに、「新しい成長」を実現する「新しい戦略」を打ち出していくことが重要であります。
    わが国は、欧米へのキャッチアップをし、高度成長を実現いたしました。その結果、日本企業は世界のフロントランナーとなり、それぞれが未踏の地を切り拓いていかなければならない存在になっております。
    例えば、地球温暖化問題ひとつをとりましても、環境税や国の規制的な施策ではなく、「環境自主行動計画」や省エネ技術の革新など、企業の活力を最大限に活かしながら、自ら解決の道を見出していかなければなりません。
    また、国民にゆとりや心の豊かさをもたらす観点から、良質でゆとりのある住宅、安心・安全で美しい街づくりを推進することや、また、広域的な観光戦略を展開することなども、民主導により進めていくべきであります。そうした取り組みこそが、安定成長の実現に不可欠であると考えております。

  4. 国際的な面に目を転じますと、今日、BRICsや東南アジア諸国、さらには中東欧諸国の急速な台頭に伴いまして、経済のグローバル化はさらに加速し、また深みを増しております。わが国がこれらの国々との連携を強化していけるかどうかは、わが国の将来を決する重要なテーマであると私は考えております。
    日本経団連では、昨年度新設した「国の基本問題検討委員会」におきまして、安全保障や外交の分野にまで踏み込んだ検討を行い、報告書をとりまとめましたが、そのなかでは、わが国が目指すべき姿として、「国際社会から信頼・尊敬される国家」を掲げました。
    私は、わが国がそうした国家を目指して、タブーを恐れず真摯に改革に取り組み、世界からの信頼を得ることによって初めて、平和主義を基本とした「通商立国」が実現するものと考えております。私どもが考える以上に、世界では日本企業のプレゼンスが増大しております。このことに留意しつつ、グローバル競争に臨んでいく姿勢が必要であると存じます。
    日本にとって重要な日米関係につきましては、現在の比較的良好な関係に安住することなく、米国の経済、産業の動向を常に把握し、政府間、あるいは企業間の関係を強固にして、相互に情報を共有する必要があります。
    また、中国、韓国など東アジア諸国との関係につきましては、いろいろな問題を抱えつつも、それらを一つひとつ乗り越えて、友好関係を長期的に発展させるという大局を見失わないようにすることが肝要であります。投資協定や経済連携協定の締結に向けた話し合いを着実に進めるなど、経済面での結びつきをより緊密にすべきであると存じます。
    現在、「愛・地球博」が開催されておりますが、これをきっかけといたしまして、世界の国々と、文化面、市民レベルでの交流を深めていくことも重要なことではないかと考えております。

  5. 申し上げるまでもなく、企業は、国民に豊かなくらしをもたらす責務がございます。新たな付加価値の創造と雇用の維持・拡大に取り組むことが期待されております。しかしながら、高度成長を支えた「団塊の世代」が定年退職を目前に控え、超高齢社会が迫っていること、さらには少子化の進行に歯止めがかからなくなっていることなどの状況が生じており、それらへの対応を急ぐ必要がございます。
    高齢化への対応につきましては、社会保障制度の担い手である現役世代と高齢者がそれぞれ納得し、その双方から信頼される新しい仕組みをつくりあげることが重要であります。そのためには、これまで個々に制度の見直しが行われてまいりました、年金、医療、介護、雇用保険などの社会保障制度を一体的に改革することが求められるわけであります。
    その際、必要な歳入の確保は、国民すべてが負担をする消費税の拡充によって対応すべきであると存じます。当然、消費税の拡充を国民に求めるからには、国・地方を通じた行政改革の断行や、歳出の削減・合理化の徹底が大前提となります。
    少子化への対応につきましては、労働力確保や社会保障制度の維持といった観点から、早急に取り組むことが求められます。官民、さらには地域社会をあげて、考えられる、あらゆる対策を検討し、実施していくことが必要であります。日本経団連といたしましても、今年度、「少子化対策委員会」を新設し、考え方をとりまとめることにしております。

  6. 以上申し上げました課題の実現のために、日本経団連は総力をあげて取り組むとともに、政治への働きかけをより一層強めてまいります。このため政治と透明な関係を築きながら、政策評価に基づき会員の皆様が自主的に政治寄付を行う新しい仕組みをより一層、機能させてまいりたいと考えております。
    私どもが促進する政治寄付は、政策本位の政治を実現するためのものであり、企業の重要な社会貢献の一環でございます。昨年は、会員企業の皆様のご協力によりまして、政治寄付の減少傾向に歯止めをかけることができました。本年も、さらに積極的に政治寄付を実施していただきますよう宜しくお願いいたします。

  7. この機会に、企業倫理の徹底についてお願いをいたしたいと存じます。企業にとって社会の信頼を得ることは、企業活動の基本であります。しかしながら、この一年を振り返りましても、いくつもの企業不祥事や事故などが起きており、誠に遺憾であります。
    一連の企業不祥事や事故は、個々の企業の存立が危うくなるばかりか、経済界全体に対する社会の信頼を根底から覆しかねません。企業への不信が強まれば、無用な規制強化につながることも懸念されます。
    会員企業におかれましては、不祥事や事故などが自社でも起こりうる問題であると認識していただいた上で、改めて「企業行動憲章」をお読み願い、各社の指針としていただければ幸いであります。そして、経営トップのリーダーシップのもと、社内の行動を総点検するとともに、風通しの良い組織づくりを進めていただきたいと存じます。

  8. 冒頭、私はこれからの日本は、「世界から尊敬される国家」を目指すべきであると申し上げました。世界第二位の経済大国となりながら、国として、いまだに世界の範たる存在にはなっておりません。なぜそうした存在になれないのかを、私は自問自答しておりますが、かつてわが国には、武士道精神というものがございました。日本人の立ち居振る舞い、あるいは生き方、死生観に、それは色濃く反映されておりました。
    新しい国のかたちを模索するとき、そうした精神を基盤として、その上に新しい価値観を積み上げていくことが、いま求められているように思います。各界のリーダーには、そうした高い志をもって事に処することが求められるのではないでしょうか。

  9. 最後になりましたが、日本経団連が、ただ今申し上げてまいりましたような幅広いテーマに深く取り組むことができますのも、会員企業の皆様方のご理解とご協力の賜物でございます。あらためて御礼を申し上げるとともに、引き続きご支援をお願いいたしまして、私からのご挨拶とさせていただきます。
    ご清聴ありがとうございました。

以上

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