月刊 Keidanren 2000年 4月号 巻頭言

民間参加型の開発支援を目指す

香西副議長 香西昭夫
(こうさい あきお)

経団連評議員会副議長
住友化学工業社長

世界経済のボーダレス化と市場主義化の流れの中で、開発途上国もそれらの影響を強く受けているが、今回のアジアの金融危機に際し、わが国は迅速に支援の手を差し伸べ、関係各国から高く評価された。私たちは、アジア危機によって、わが国がこの地域と深い相互依存関係にあることを改めて痛感させられた。

ところで、わが国の開発支援は、被援助国の「自助努力」を重視し、有償を主体に進めてきた。そのような開発戦略は東南アジアではおおむね成功したと言える。しかし、世界の他の地域では必ずしもそうではない。アフリカ諸国を始め多くの国では、援助資金が「呼び水」となって経済発展のポンプが始動することはなく、「離陸」が遅れている。

こうした中で、わが国の政府開発援助(ODA)のあり方が問われている。これに関し二つの課題を指摘したい。第一は、ウォルフェンソン世銀総裁が指摘したごとく、いろいろな援助機関とのコーディネーション、とりわけ、民間とのパートナーシップの強化がますます必要になっていることである。第二は、被援助国のさまざまなニーズにきめ細かく柔軟性をもって対応するため、現場重視型の支援システム作りが求められていることである。被援助国のニーズと制約条件を十分考慮した包括的な開発(保健・医療、教育等を含む)のマスター・プランの策定が重要になっている。

これらについて、高度産業社会への発展の各段階でさまざまなノウハウとスキルを蓄積したわが国の民間セクターが果たすことができる役割は大きい。NGOを含む民間が積極的に参加した開発支援を拡充することにより、「顔が見えない」と批判されてきたわが国のODAは、より実りあるものになろう。


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