月刊 Keidanren 2001年3月号 巻頭言

一人ひとりが主役の21世紀に

高原共同委員長 高原慶一朗
(たかはら けいいちろう)

経団連新産業・新事業委員会共同委員長
ユニ・チャーム社長

 私がイメージする21世紀の理想社会は、一人ひとりが全員主役であり、誰もがチャンスに恵まれ、やる気に溢れ、パワーみなぎる社会である。人々が夢を持ち、夢を育み、夢に挑戦し行動し続ける社会であり、万一、挑戦に失敗しても再挑戦の機会が与えられる社会だ。そして、勇気と汗と努力の結果として成功を勝ち得た人には、心からの賛辞が贈られる社会である。このような公平なチャンスのもとに、努力した人がその努力に応じて報いられることこそ、私は真の意味で公正な社会だと思っている。

 わが国では1970年代から1990年代の30年の間に3回のベンチャーブームがあった。多くの起業家が生まれ、現在も活躍されている経営者はおられるが、大半の起業家は組織と共に消え二度と立ち上がれなかった。一方米国では1980年代の個々の企業の大胆なリストラと柔軟な労働市場、税制改革と規制緩和、情報化(IT)投資とアウトソーシングなどが功を奏し、イノベーションの担い手として機動的でリスクを取り易いベンチャー企業を輩出した。そして米国は1990年代の長期経済成長メカニズムを構築した。

 新産業・新事業委員会では、わが国ベンチャーブームの反省と米国の成功、および理想の21世紀社会を土台に、起業家精神の涵養とニュービジネス・ベンチャー企業の創出を訴え続けている。

 近年、30年前に比べニュービジネス・ベンチャー企業の環境は大きく改善されてきた。例えば、起業家の育成とベンチャー企業の輩出・育成・成長の仕組みとして官民一体となって法制・税制を整えつつある。また起業家精神の重要性は多くの企業で認知され、MBO(マネジメントバイアウト)などを背景にコーポレートベンチャー(企業内・外起業)が増えている。

 標題に掲げた「一人ひとりが主役の21世紀」を実現するための当面の課題は、自らリスクを取って経営者を目指す人材の育成、柔軟な労働市場の構築、民間活力の発揮を妨げている諸規制の改革である。一方、こうした行政府による構造改革だけではなく、産業界にはグローバル化に対応した経営改革としてコーポレート・ガバナンスが求められている。さらに国民一人ひとりの意識改革も重要である。

 こうした認識のもと、今後も直面する課題に勇気を持ってチャレンジし、ソフトウエア、ハードウエア、ヒューマンウエアそれぞれの面からわが国の改革に寄与し、イメージする理想社会の実現に邁進する所存である。


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